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任意後見契約

今日はお休みだったのですが、用事があって伯母の所まで行ってきました。車だと一日で往復するのは難しいので、新幹線で行ってきました。ちょうど上手に台風とタイミングがずれたらしく、新幹線も電車も止まってなくて良かったです。

少し前から伯母が保険の勧誘を受けていて、そのために私のサインと印鑑が必要だという事態にまでなっていたので、直接保険の人と話をしてきました。

首都圏に住んでいるかたはご存じ無いかもなのですが、伯母の住んでいるような地方では、保険の人が家まで勧誘に来ます。電話もかけてきます。人口が少ないので営業の人はノルマ達成のために積極的に動いているのです。

伯母は癌になっているし以前から保険に入っているので、今更保険に入ることはないのですが、伯母がそう言ったら、私(さゆ)に保険をかけて伯母が掛け金を支払うというシステムにしたらどうか、と・・・私(さゆ)のためにもなるし、伯母さんにとっては税金対策になるからと・・・

要綱を見せてもらったら、異常に高額な掛け金を払うようなシステムになっていて、どのくらいかというと、あまり細かく書くとどこの保険会社のどういう保険なのかバレそうなのでぼかしますが、もう私がそれ以上他の保険に入れないほど上限に達する金額で、伯母さんにとっては長期間まとまったお金を受け取れないシステムだし、戻り金も少ないという・・・伯母さんは持病を持っているので入院とか手術が必要になったときのためのまとまったお金が無いと困るのに・・・

明らかに、営業の人がノルマ達成のためにムリヤリ組んだ内容で、伯母も私も損するものでした。

それも、家に勧誘に来たときは、押しが強く大柄な男性二人でやってきて、もう保険には入ってるから・・・と言う伯母に「姪のお嬢さん(さゆ)にかけてあげれば良いじゃないですか。彼女がすごく助かりますよ」と伯母を言いくるめ、サインをさせハンコを押させ、私にもサインを・・・と電話をかけてきたのです。(私がサインと印鑑を押さないと契約が成立しないので)

勿論、丁重にお断りしました。

伯母の家は目を付けられてるようです。以前から、詐欺まがいなインターネット工事の勧誘とか絵を売りつけようとする会社とかアパートとかマンションとか建てませんか?みたいな勧誘が来てて・・・子供がおらずお金を沢山持っていて1人暮らしだから地元のそういう系の企業に顧客(カモ)ネットワークとして広まっていて狙われてるんでしょう。おっとりした人で、ずっと昔に騙されたことがある人なので、そういう業者からは良いカモだと思われているんだと思います。不動産会社からマンションを建てないかという勧誘が掛かってくることも多く、これに関しては次の記事で不動産系の内容を書こうと思っているので、そこで詳しく記述させてください・・・

別に彼らに関して怒りを感じているわけではありません。彼らも仕事でやっているのだし、脅しなどを使った強引な手口でもないし、営業の仕事にはノルマがあるだろうから、彼らも彼らでこうやって稼がなくては生きていけないんだと思います。営業して、客が納得して契約して、ということであれば正当な商売です。私も親がいなくて貧乏で大変で生きるために必死に働いてきた時期があるから、営業の人の大変な気持ちはよくわかります。むしろ頑張ってください・・・という気持ちでして・・・男性なら尚更家族がいれば養っていくために大変だろうし・・・(私みたいな未熟者の小娘に応援されるほうがイラつくかもしれません・・・申し訳ございません!!)

ただ、伯母とは任意後見契約を結んでおくことにしました。これは、伯母が病気などで正しい判断がつかないような状態に陥ったときに、私が伯母の代理として財産を管理するという取り決めを今のうちから結んでおくという契約です。伯母が詐欺等に騙されないようにという処置です。まだ今日は細かい契約内容を打ち合わせただけなのですが、次の連休にでも伯母と公正証書を作成するつもりです。

そういうわけでバタバタしたので、まだ漫画が描けてないのです・・・大変申し訳ございません!!。・゚゚・(゚´Д`゚)・゚゚・。!!

源さん

私「車内の温度はどうですか?」

舗装されていないぼこぼこ道を、のんびり愛車で走っているのです。一目ぼれしてしまいちょっと無理して買った車です。走行性能からして私にはもったいないスペックの車で、オニキスのように静かに光を反射する、ラグジュアリーな外見を持ちつつも強大なパワーを持つ、重厚で物々しい巨大なオフロード車です。ええ、惚れ込んでいるのでベタ褒めです!!

源「ん」

私(ん、ってどういう意味だろ?悪くないって意味かな?)

その助手席に座っているのは、御年62歳になられるご近所の職人さん、通称、源(げん)さんです。伯母さんのお友達なのです。

私「暑かったり寒かったりしたら言ってくださいね」

今、私は源さんを乗せて車屋さんに向かっているのです。修理に出されているという源さんの軽トラを取りに行くためです。その車屋さんへの道のりを、助手席に座った源さんに教えてもらいながら走っているのです。

それにしても、結構走ったというのに景色が変わった気がしません。林に囲まれたワインディングの山道だし、同じような木ばかり生えているからです。ここは地元の人が使う近道なのです。大通りに出るより少しだけ短い距離で到着できるそうです。私は詳しく知らない道だけど、きっと源さんにとっては、よく知っている慣れた道なのでしょう。

源「だあっ!?」

突然源さんが叫びました。

私「どうしました?」

源「来すぎた」

ポツリと源さんが呟きました。

源「そこにでけぇ石が見えるだろ?あれが見えると来すぎだんで。わりいがUターンしてくれや」

巨大な私の愛車は、足場に気を付けながらそろそろとバックし、長い足を伸ばして方向転換したのでした。

そのまま、しばらく源さんのナビゲーションに従って走ると、やがて家が沢山見えてきました。これで景色が変わりばえしたね。

源「ん!?」

私「どうしました?」

また道を行き過ぎちゃったのかな。私は速度を落として、路肩に車を止めました。対向車がいなくなったらUターンしよう。

源「犬がいる」

言われて見ると、たしかに犬がいます。民家の庭につながれています。賢そうな犬です。

私「かわいいですね。日本犬でしょうか。・・・道は、合ってますか?」

源「ん」



私(Uターンした分の時間が掛かったから、普通に一般道を来ても同じくらいの到着時間になったんじゃないかなあ・・・)

近道した意味があったのかな。でも、無事に車屋さんに到着することができました。安心して車を止めると、源さんは助手席から飛び降りて地面に着地しました。普通はレバーに捕まりながらソロソロとおりるのですが、源さん健脚ですね!!

私も車から降りて、源さんに続いて建物の中に入りました。どうやら、建物は車屋さんの事務所のようです。中で書類を整理していたらしい男性が、こちらを見て立ち上がりました。

車屋さん「源さん、待ってたよ。随分かわいい子と来たじゃない」

源「ん」

私「いやんもう、かわいいだなんて、お上手な」

リップサービスありがとうございまーーーす!!お世辞でも嬉しいの!!だって今日はいつもよりお洒落してるからね!!

そうなんです。自分の愛車を運転するときには、服から髪まできちんとお洒落をしてメイクもして乗ることにしているのです。愛車を運転するときは、愛車とデートしているつもりだからです。

車屋さん「こっちに止めてあるから。ついでにオイル交換しておいたよ」

源「おう。いくらだ」

車屋さん「タダさあ、いつも御贔屓にしてくれるから」

源「わりいな」

二人についていくと、数台の車が止められている中に、軽トラが一台ありました。あれが源さんの車だね。その白い軽トラは、車屋さんが洗車してくれたのか、やけにピカピカ綺麗に見えます。源さんはぽんぽんと軽トラの顔を撫でました。

私「良かったですね。では、私はここで失礼致します」

車屋さん「気を付けてね。源さん、お孫さんが帰るって」

おっと、孫じゃないんですよ。運転席でエンジンを回していた源さんは、窓を開けて私のほうに向けて手を上げました。

源「ん!!」



伯母さんの家に向かう車内で、私はDに話しかけました。

私「源さんって、面白い人だね」

ん、が口癖なんだろうなあ。一日に何度言うんだろう。

私「伯母さんと源さんって、どういう話するんだろ・・・」

ほわんとした伯母さんと、『ん』でほとんどの会話を済ませようとする源さんが、普通に会話をしている場面が想像できないなあ。ちゃんと会話が成立するんだろうか。



カラスがカアカアと鳴きながら山のほうに飛んでいく夕方、伯母さんの家のインターフォンを誰かが押しました。

伯母さん「はぁい」

源「今日は乗せてもらって悪かったんて、ちいっとばかしだが貰ってくれや」

聞き覚えのある声が聞こえてきます。源さんの声です。

伯母さん「すみません、ありがとうございます」

源「いやあ、ほんのちいっとだんで」

伯母さん「とんでもないです、開けて良いですか?まあ、かわいい!!」

会話がきちんと成立しています。私が相手だと『ん』がほとんどなのに、伯母さんが相手だと饒舌です。きっと親しい人にはこういう感じなんだね。私は玄関に向かいました。

伯母さん「さゆちゃん、源さんがケーキくれたわよ」

箱を上からのぞくと、かわいいショートケーキが二つ入っています。

私「ありがとうございます!!」

源「ん」



私「伯母さんから聞いたんだけどね、あのケーキ屋さん、街のほうにあるんだって。わざわざ買いに行ってくれたんだねえ」

直った軽トラで買いに行ってくれたのかな。ケーキを冷蔵庫にしまった私は、Dに話しかけてみました。

D「そうだね」

すらっとした指先が、私の唇に触ってきました。ゆっくりと唇を撫でています。

私「あの・・・D、そういうことされると私、やらしくなっちゃうから・・・」

D「いいよ」

私の唇の上下の隙間に、指を割り込ませようとしているようです。どうやらDは、私の口を開けさせたいようです。多分、舌を絡ませるキスをするつもりなのです。伯母さんの家でやらしいことなんて恥ずかしくて出来ないのに、Dに触られると気持ち良さで口を開けてしまいそうです。

D「我慢はおよし。抵抗せずに、僕に任せるといいよ」

もう我慢できなくなってきたよー・・・!!うう・・・!!

avarice

中世ヨーロッパの観念によれば、強欲の罪は縊死と相場が決まっていたらしい。ルネサンスの先駆者であるダンテ・アリギエリの神曲によれば、強欲の罪によって他人の財産を脅かしたものは地獄の第7圏に落とされるとか。私の首にも紐が掛けられているのだろうか。

なーんて、そんなの知ったこっちゃないっつうの。おとなしく命令に従ったところで、ヤハウェやイエスが食べ物や住処や薬を恵んでくれるわけじゃあるまいし。だから人が自らの力で手に入れなくちゃ生きていけないわけだよ。そのためにビジネスは絶対に必要で、それは同時に競争、戦い、心理戦、金の奪い合いでもあるわけだよね。じゃあ仕事を真面目に頑張る人ほど真っ先に地獄行きなのか。

でもビジネスは優しいよ、人を助けてくれるよ。だって食べ物や住処や薬や、金で買えるものなら何でも人に与えて命を繋いでくれるんだもん。人に十字架を課すだけの神が、絶対私達に与えてくれないものを。

私「だから私は地獄上等だよ」

Dに向かってドヤ顔で話していた私は、次の瞬間には、情けなく溜息をついて椅子に座りました。

私「・・・って言えたらカッコ良かったんだけどね~、とほほ・・・まだそこまでの覚悟を決める勇気がありません・・・宗教は信じてないけど、人間ビジネスだけじゃないし、人情とか友情とか愛情とか色々大切なものがあるし・・・これじゃ守銭奴にもなりきれず、善人にもなれない、ただ良い人ぶっているだけ・・・まったく私は一体どうしたいのかね・・・」

D「もう、そのことについて考えるのはおよし」

私の足元に座っているDが、私を見上げて言いました。

D「君が守銭奴でも善人でも良い人ぶっていても、僕は君が好きだよ。何も問題無いよ」

いつもの笑みを浮かべたDが、椅子から下ろしている私の足に頬をすり寄せました。Dのさらさらの髪がひざをくすぐります。

私「・・・ありがと」

さらさらの髪を撫でると、Dは嬉しそうに口元の笑みを深くしました。

D「それに、そんなことで悩むより、するべきことがあるよ」

ふわっとDの唇が私のももに触れました。

D「僕に構っておくれ」

ちゅ、と肌を吸ってから、Dは私の前にひざまずいたまま、私のももを舐め上げました。やわらかくて温かい、Dの舌の感触は久々です。

私「あ」

D「ここに来てから、さゆは一度もこういうことをしてくれないよ」

だ、だって・・・!!伯母さんがいる家なのに、一階には伯母さんがいるのに、この部屋でやらしいことするなんて、そんなの恥ずかしくて出来ないよー・・・!!

私「は、恥ずかしいから、アパートに帰ってからじゃ駄目?」

D「そうかい?」

あっさりとDは、私のももから口を離しました。

D「さゆが嫌なら、無理にはしないよ」

私「・・・・・・」

そう言われると余計、Dにベタベタしたくなっちゃうよ。でも明日は伯母さんと出かけるから、ブログを書いてタルパブログめぐりをしたら、すぐに眠ったほうがいいよね。やらしいことなら、アパートに帰ってから沢山できるし・・・うう、恥ずかし・・・

強欲の罪

伯母におやすみを告げてから、私にあてがわれた部屋に帰ってくるなり、Dは嬉しそうに口を開きました。

D「良かったね。これで彼女は君に遺産を残す決心を決めたよ。約束を守る彼女が公言したからには、もう決定事項だよ」

なんだか得意げです。きっと、Dの言葉によって、私が伯母の遺産を手にすることになったからです。あのときDの言葉を聞いて動揺した私は、それを否定しようして、逆にDの思惑通りに動いてしまったのです。

D「君の『お父さん』から遺留分を請求されたら現金で渡せばいいよ。そうなれば、この家はさゆのものだね。さゆの欲しがっていた綺麗なお城だよ」

私はDを無視して布団にもぐり込みました。

D「さゆ、ご褒美をおくれ。キスがいいよ」

横になった私の上にかがみ込むようにして、Dがすぐ傍に座りました。私はDに背を向けて、目を閉じました。

D「・・・さゆ?」

それまで嬉しそうだったDの声が、戸惑いの色を帯びました。私は沈黙して目を閉じたまま、Dのほうを振り向きませんでした。さゆ?さゆ?と呼びかけるDの声を無視して、何も言わずに眠ってしまいました。運転の疲れもあってか、すぐに眠れました。



朝になって目を覚ますと、部屋中が薔薇で埋まっていました。

D「よく眠れたかい?」

私が布団の上に体を起こすと、Dは透き通った色付きガラスのような美しい薔薇を差し出してきました。静謐の楽園の、幻の薔薇です。(詳細は過去記事「青い薔薇」参照)

D「さゆの好きな薔薇だよ」

私がその薔薇を受け取らないでいると、Dは自分の両手の上で、空中に沢山の薔薇を咲かせました。

D「足りなかったかい?もっとあげるよ」

綺麗に咲いた沢山の薔薇を、Dが私のほうに差し出してくれました。こういうとき、いつもなら私は両手を差し出して受け取ろうとします。そうすると空中に咲いた沢山の薔薇は、不思議なことにふわふわと私の周囲を取り囲み、しばらく傍でゆっくりと漂ってくれるのです。
でも、今日の私は手を差し出しませんでした。幻の薔薇は、ぽとぽとと全部床に落ちてしまいました。

Dはいつもの笑みを口元に浮かべたまま、床に落ちてしまった薔薇を見つめました。しかしすぐに顔を上げて、私に向かって微笑んでみせました。

私の良心が痛みました。Dがかわいそうです。

私「ごめんなさい・・・」

ぱっと表情を明るくしたDが、にーっと嬉しそうに口元を上げました。

D「さゆが謝る必要なんて何も無いよ」

椅子に腰かけている私の前に座り込んだDは、椅子から下がっている私の足首に、そっと口づけを落としました。

D「どうやら僕は、何か失態を演じてしまったようだね。昨日の件かい?」

そう尋ねてくるあたり、何故私が沈黙していたかをDはわかっていないようです。Dが人間の精神を持っていないから、かもしれません。

私「Dの失態ではないけど・・・私は、伯母さんを大切にしたいし、金に目がくらんで人情を失うようなことはしたくないの」

Dは、私のひざに口づけました。

私「だから、昨日のDの口ぶりが、私が一番大事に思っているものはお金みたいな、そういう風に聞こえて・・・私、自分が昔貧乏で苦しんだ経験があって、お金を稼ぐことに必死だったときがあるから、お金への強欲さは確かにあるの。でも、その強欲な願望を一番に優先したくはないの。もっと大切なものがあると思うんだ」

Dは、私の好きなものや私が望んでいることをよく知っています。そして私のために、純粋にそれを手に入れようとしてくれるのです。純粋なDが、私の欲にまみれた願い事を見付けて、ただ私を喜ばせようと思って、その願い事を叶えようと行動してくれるとき、私は自分の欲深さをそこに見出して、自分が嫌いになるのです。それはDのせいじゃなくて、私にコンプレックスがあるからなんだよね。

私「Dに対して怒るべきじゃなかったし、ましてや無視なんて酷いことすべきじゃなかったよ。本当にごめんなさい」

Dは、じっと私の顔を見ながら話を聞いていました。

私「考えてみれば、私が相続放棄すれば済む話なんだから、昨日伯母さんにあんな変な話をする必要も無かったんだ。伯母さんまで私のコンプレックスに巻き込んじゃって・・・」

D「いや、僕の責任だよ。さゆが喜ぶかと思ったけど、失敗だったね」

私「ううん。Dは私のために、純粋な親切心でやってくれたってわかってるよ」

・・・本当は昨日、ちょっとDを疑ったんだ。Dは私を怖がらせて、私の精神を脅かそうとしているんじゃないか・・・なんて。Dが私を傷付けるはずないのにね。

私「昨日のことはDの親切心で、Dなりの愛情表現だったのに、拒否してごめんね」

D「謝る必要など無いよ。親切心や愛情とは、受け入れなくてはならないものではないからこそ親切心であり愛情なのさ。拒否するのも君の自由だよ。でも・・・そうだね、今回の件が僕からの愛情表現であったように、いや、そうは言っても見当違いな愛情表現で申し訳無かったけど・・・同じように『伯母さん』が君に遺産をプレゼントしたいと思う気持ちも、彼女からの純粋な愛情表現だろうと思うよ」

そっと私の頭を撫でながら、Dは言葉を続けました。

D「もちろん拒否してもいいのだけど、君にとって嫌なことじゃないなら、お礼を言って受け取るほうが彼女も喜ぶと思うよ」

私、自分の中の金への執着を消そうとするあまり、他者からの愛情表現や親切心まで拒否するという、寂しいことをやりかけてたのかな。

私「そうだね。伯母さんは昔、私がベッドを受け取ったとき、すごく喜んでたっけ・・・」

D「君にプレゼントすることが、彼女は嬉しかったんだよ」

私「そっか・・・」

ちょっと油断すると、私は傲慢で独善的な考え方に陥りがちで、その自分の考えに他人まで巻き込んでしまう。昨日は自分が安心したいがためにあんなことを言ってしまって、伯母さんビックリしちゃっただろうな。そして今日はDに酷いことしちゃった。

私「ねえ、Dに何かプレゼントさせてくれる?」

Dはいつもの笑みを浮かべたまま沈黙して、かわいく首をかしげました。それ、ごまかそうとしてるんだよね?最近わかってきたからね。
Dは何もプレゼントさせてくれないのです。(詳細は過去記事「パワーストーン」参照)

D「僕の望みは君の幸せだよ。他には何もいらないよ」

私「私も伯母さんにみたいに、Dにプレゼントすることが嬉しいんだけどな」

D「僕のために何かを買うより、君のためにお買い」

あ、あれ?なんかD、さっきと言ってることが違うんじゃない?

私「あ、あのさ・・・もしかしてD、いつか私の前から消える気でいるんじゃないの?消えた後も私がプレゼントしたものが残っていたら、それを見た私がDを思い出して悲しむんじゃないかと思って、それでプレゼントさせてくれないとか・・・」

そうなんじゃないかな、とずっと思っているのです。きっとDは約束通り、私が死ぬときまで傍にいてくれるのだと思います。でも、時が来たらDの姿を、私には見えなくしてしまうんじゃないかなって。たとえば、私を結婚させるためにとか。今までのDの言動からして、私はそう推測しているのです。
Dは先程の、首をかしげた姿勢のまま沈黙しています。私はDをじっと見つめました。Dもかわいく首をかしげたまま動きません。しかし私も動きません。

D「・・・わかったよ。君に要求させてもらうよ」

Dのほうが折れてくれました。

私「ほんと!?やった!!欲しいものが決まったら言ってね!!」

とたんにテンションが上がって喜ぶ私に、Dはくすくすと笑いました。

D「高いよ?」

・・・え!?た、高いの!?どのくらい!?都内の一等地に高級マンション建てて欲しいなんて言われたらどうしよう。お金足りないぞ!!
いやいやDが私に要求するものなんて、高いと言ってもささやかな値段だよ。きっとお花一本ねだるのすら、300円のお花は高すぎるだろうか・・・とか悩んじゃうに違いない。だってDだもんね。

でも、本当は高いものでもいいんだ。Dが本気で欲しがったら絶対買っちゃうよ。そんなこと、Dはしないんだけどさ。

着替えは持ったし、薬も持ったし、お気に入りのシャンプーやコンディショナーその他バスオイルに化粧水に乳液に香水にコスメにエトセトラ、パソコン、仕事道具、日焼け止めも忘れずに、あと・・・

車に詰め込んだ沢山の荷物を指差しながら、忘れ物が無いかチェックしているのです。車での旅で楽だと思うことは、荷物を沢山持ち運べるっていうことだよね。これが新幹線や飛行機だと巨大なスーツケースをゴロゴロ転がしながらふぅふぅ言わなきゃいけないもん。

私「よーし、出発進行―!!」

シートベルトをした私は、ハイテンションに右腕でグーを作り、オー!!って感じのポーズをとりました。

D「出発だね」

助手席に座っているDは、いつも通りの笑みを浮かべたまま、冷静にうなずきました。

私「いっくよー!!」

D「気を付けて運転するんだよ」

ハイテンションな私とは逆に、Dはとっても冷静に返してきました。



せっかくの長距離ドライブだというのに、今日の天気は生憎の雨です。

私「高速道路、日曜日なのにすいてるね。やっぱり雨だからかな」

いつもなら大和トンネルのあたりから渋滞が始まるはずなのに、今日は割と車が通っています。雨なので全体的に70~90km程度の低速ですが、滞ることなく走れています。

私「この調子なら5~6時間くらいで到着できそうだね」

どうやら予想よりも早く到着できそうです。

私「それにしても、視界が良くないよね」

ワイパーを最速にしていても、フロントガラスに叩きつけてくる雨と、前走車の巻き上げた水しぶきで視界が良くありません。私の車は車高があるからまだマシだけど、低いスポーツカーなんかだと走りにくいだろうなあ。そういう車には、親切にしたり譲ったりしてあげなきゃね。

D「デフロスターを付けたほうがいいよ」

私「うん」

今日は外が寒いから、あまり高い温度に設定しないほうがいいだろうなあ。逆に窓が曇っちゃうもんね。



私「わ~、寒いなあ」

昼食を摂るために、足柄SAで休むことにしました。カレーパンで有名なSAです。でも今日はカレーパンではなくレストランに入るのです。下りの足柄SAにはちょっとお洒落なレストランがあるので、一度入ってみたかったのです。

入口には大きな暖炉や古びた本などのディスプレイ、照明は鹿の角のシャンデリア、料理は木製のキッチンワゴンで運ばれてくるのです。

D「おいしいかい?」

私(うーむ・・・)

食事を終えて店を出ると、息が白くなっていました。なんだか雨脚も強まってきたように感じます。待機しても小降りになりそうな様子はありません。そうとなれば、もう早目に出たほうがいいよね。私は車に戻って先を急ぐことにしました。

私「霧が出てきた・・・」

周囲の車が次々にライトを付け始めました。白くボンヤリとした霧の中で、明るいライトと赤いテールランプが無数に浮かび上がります。

D「気をお付け」

私「うん。ありがとう」

車間距離をとって、なるべく大きな車の後ろに付かないようにします。見通しをよくするためと、雨の巻き上げを被らないためです。

私「さっき足柄SAで、道路に融雪剤を撒いてあるので注意してくださいって放送されていたの」

昔、融雪剤が撒かれた雪道の高速道路を走ったとき、フロントガラスが白く汚れて、すごく見えにくくなって焦ったことがあるから、融雪剤って聞くとビクッとしちゃうよ。さすがに今日は雨が降っているせいで白くはならないけど、車のサビの原因にもなるし・・・

私「ちなみに去年の話ね。御殿場から箱根あたりに掛けて、融雪剤で大変なことになったんだ。あの辺りは雪が降るからね。その日の足柄SAは、道のはしに積まれた雪が人の背より高かったんだよ。Dはまだいなかった頃の話だから、その様子を見てないよね。その日の私の記憶を読んでみると面白いよ」

D「まだ、さゆに僕が見えていなかった頃の話だね。でも、僕はずっと君の傍にいたよ」

私「ええっ!?」

D「さゆ、運転に集中したほうがいいよ」

私「ちょっとその話、あとで詳しく聞かせてね!!」

富士に差し掛かる辺りでは、霧も消えて見晴らしが良くなっていました。

私「ようやく霧が消えてきたけど、同時に夕方になって暗くなりはじめてきたね」

どうやらライトはこのままつけっ放しになりそうです。やがて日が落ちて夜が来ました。霧も無い、普通の雨の夜の高速道路です。車の数も減って随分走りやすくなりました。あとはもう淡々と走り続ければ良いのです。



伯母の家に着く頃には、すっかり暗くなっていました。駐車場に車を止め、傘をさしてトコトコ歩いていくと、懐かしい洋風の門が私を出迎えてくれました。インターフォンを押します。

私「こんばんは、さゆです」

伯母「あ~ら、いらっしゃい」

聞きなれた伯母の声がして、やがて玄関から伯母が姿を現しました。伯母は門のところまで来てくれて、内側から門を開けてくれました。

伯母「待ってたのよ。長旅で疲れたでしょう。さあ、上がって」

私「ありがとうございます」

伯母にうながされるままに、私は玄関に向かって庭のレンガ道を歩き出しました。春には美しい花を咲かせてくれる綺麗な庭も、この季節には沈黙しています。ツタの絡まるガーデンアーチの下をくぐったとき、私の後ろのほうで、門が静かにしめられる音がしました。

伯母「ここ数日間は暖かかったんだけど、今日は雨が降って冷えるわねえ」

私「はい」

通された部屋は、以前私が下宿していたときに使わせて頂いていた部屋でした。ステンドグラスの出窓、猫足のデスク、アンティークのチェスト、ガラス細工のルームランプ、ロココ風のブックシェルフ、花瓶の飾られたコモコンソール・・・そして、布団。

・・・ふとん。布団です。この部屋の家具の取り合わせの中で、布団だけがひどく浮いています。一見ギャグかと思う光景ですが、これは心温まるエピソードの賜物です。この部屋にベッドが無いのは、ここに置かれていたベッドは私が東京に働きに出たときに伯母が下さったからなのです。今、私のアパートに置かれているベッドがそれなのです。

伯母「この部屋を自室として使ってね。慣れている部屋のほうがいいでしょ?」

私「ありがとうございます」

伯母「どうぞ休んでて。お茶、入れてくるわね」

ドアの向こうに伯母が消えると、私はDに話しかけました。

私「どう?綺麗なお家でしょ?」

D「そうだね」

Dはいつも通りの表情でうなずきました。



お風呂を上がって、貸してもらっている部屋で髪を乾かして、さあブログを書こうかなと思ったときに、Dが話しかけてきました。

D「さゆは、この家が好きなんだね」

私「うん、好きだよ」

D「この家が欲しいかい?」

私「え?」

たしかに綺麗な家で、いつかこういうお家を建ててみたいと思ったこともあるけど・・・

D「『伯母さん』が亡くなれば、さゆのものになるかもしれないね」

私「D!!」

私は顔色を変えました。Dはいつも通りの表情で平然としています。

D「『伯母さん』はいつ亡くなるんだろうね。その前に、沢山親切にしておくんだよ」

私「やめなさい!!」

D「どうしたんだい?さゆ」

Dはいつも通りの表情で、少し首をかしげました。

私「縁起でも無いこと言わないで。どうしちゃったの?いつもそんな酷いこと言わないでしょ?」

かぐや姫を失った帝の気持ち、私よりDのほうがわかってたじゃない。帝は不老不死の薬を飲まなかったし、売ってお金に換えることもしなかったけど、それは帝にとって姫は自分の命よりお金より大切な人だったからなんでしょ?大切な人の命はお金なんかに換えられないんだって、Dが言ってたのに。(詳細は過去記事「かぐや姫」参照)

D「僕は、さゆさえ幸せなら良いからね。さゆの幸せを一番に考えた結果だよ」

私「だったら尚更、伯母さんが亡くなっちゃったら私は幸せじゃないよ」

D「本当かい?『伯母さん』の遺産が手に入るよ」

私「本当に決まってるでしょ!!遺産なんていらないよ!!」

なんでDはこんなこと言うんだろう・・・Dのことだから何か考えがあるの?

私「だいたい、姪である私は相続人としては代襲相続人に当たるの。伯母さんは配偶者も子もいないけど、自分の両親と、弟である私の父は生きてるでしょ?だから私は相続を受ける権利が無いのよ。伯母さんが書いた遺言書でも無い限りね」

D「何故、そんなことを知っているんだい?」

Dは、私にふわっと近づくと、甘い声で囁きました。

D「気になって、調べたからだろう?」

そうだけど・・・でも、違う!!どんな風になるんだろうと思って調べてみただけで、遺産を狙っているわけじゃないし、ましてや伯母さんの死を願っているわけじゃないよ!!

D「さゆ、『伯母さん』に優しくするんだよ。彼女だって、嫌い合っている弟に遺産を渡すくらいなら君に渡したいさ。君は彼女からの遺産を受け取れるし、彼女は君から優しく尽くしてもらえる。どちらも幸せだろう?これは正しいギブアンドテイクのビジネスさ」

違う、違うよ!今日ずっと雨の中で車をとばして伯母さんに会いにきたのは、そんなことのためじゃないよ。この連休をもらうために、仕事を何度も家に持ち帰ったのも、休み返上で働いたのも、そんなことのためじゃないよ!!私はただ、伯母さんが心配だったし、久々に会いたくて・・・

D「どうしたんだい?震えているね」

甘い甘い声で、Dが私の耳に口を寄せました。耳元に熱い吐息がかかりました。

D「寒いのかい。僕が」

その言葉を聞き終える前に、私は部屋を飛び出しました。



私「伯母さん!!」

急いで駆け込んだ部屋は、応接室です。彼女がこの部屋を好んでいて、ここにいることが多いからです。
中は無人でした。暗闇の中で、壁に取り付けられたハンティングトロフィーの鹿がこちらをじっと見つめています。
私は応接室を出て、彼女の自室に向かいました。今度は冷静にノックをしました。

伯母「はい、どうぞ」

ほわんとした優しい声が帰ってきました。

私「失礼します!!伯母さん、お願いがあるんです!!」

伯母「なあに?」

このほわんとした人にどう言えばいいんだろう。

私「私に、絶対に遺産を渡さないと約束してください。変に思われるかもしれませんが、理由があるのです。私は、自分が遺産目当てであなたに親切にしているのではないかと思うと怖いのです。どうか私を助けると思って約束してください」

伯母は、ぽかんとしました。だいぶ長い間、ぽかんとしていました。

伯母「どう考えても、遺産目当ての人はそんなこと言わないわよ」

・・・でも私、もし伯母さんから遺産をもらえたら楽だなあって思ったことあるし。

伯母「どうしたの?何か会社で不安になることでもあったの?」

私「いえ、仕事には何も問題ありません。会社も不動産も非常に順調です」

伯母「ここに座って、落ち着いて聞いてね」

私がソファに座ると、伯母は向かいに座りました。

伯母「結論から言うと、あなたに遺産を渡すつもりなの。親と弟には遺留分だけでね」

私「駄目です!!お願いです、私には渡さないでください」

伯母「遺産目当てでも良いのよ、私はさゆちゃんがかわいいんだから。でも、あなたが遺産目当てじゃないってことは、あなたより私のほうがよくわかってるみたいね」

伯母が頭を撫でてくれました。懐かしい、久々の優しい感触です。うつむいたとき、誰かが後ろから私の肩を抱きました。Dです。温かい腕が私の肩を包み、甘い吐息が耳にかかり、唇が耳に触れて、甘い甘い声が囁きました。

D「・・・ほら、うまくいったよ」

ゾッと血の気が失せました。
プロフィール

laceformyshroud

Author:laceformyshroud
名前:さゆ
20代の女です。
初めて作るブログなので、不備がありましたら申し訳ございません。
このブログはリンクフリーです。ご自由にリンクなさってください。
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