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ダンス・ウィズ・ミー!!

Dと触れ合っているときに、私の体がDの体に入って突き抜けてしまうことがあります。触覚を感じ始めたばかりの頃は、毎回のように突き抜けていました。以下は、触覚の訓練を始めたばかりの頃の話です。

私「あわわ、突き抜けちゃった・・・!!」

抱きしめ返したときに、私の腕がDの脇腹に入ってしまったのです。

私「ごめんねごめんね、気持ち悪かったでしょ?」

まだ感触があやふやだから、私のほうは何も感じなかったんだけど、Dは痛かったんじゃないかなあ。結構勢いがあって、思いっきり脇腹に入っちゃったし・・・

D「さゆが僕に謝ることなど何も無いよ。それに、さゆに触ることは、甘くて良い香りがして気持ち良いよ」

Dはいつも通りの笑みを口元に浮かべて平然としています。Dにとっては、突き抜けることも触ることと同じようなものなのかな?

私「まだDの体の大きさや形とかの感覚とかが、私の頭の中でハッキリしてなくて・・・」

最初からDの姿が見えていたとは言っても、最初のDは自由に形を変える黒い何かで、質量保存の法則を無視する存在だったのです。ようやくDの姿が固まってきたとはいえ、触ったときの感覚はまだ出来上がっていませんでした。

私「突き抜けないようになるために、早く感覚をつかめるように頑張るね」

D「頑張らなくていいよ」

Dが左手を差し出してくれました。その手に私が右手を乗せると、Dは自分の右手を私の腰にそえました。これって、スタンダードの構えみたいな・・・

D「ワルツは好きかい?」

Dが左足を一歩前に踏み出してきたので、思わず右足を一歩下げました。

D「ほらね、できてるよ」

右手を引かれたり左腰を押されたりしながら、私はDの指示通りに足を運びました。スローワルツです。社交ダンスでは女性は男性のリードに従って動くのですが(詳細は過去記事「鏡」参照)特にスタンダードでは女性は男性の動きを見ることができないので、男性は左手で引いたり右腰で押したり右手で女性の背中の向きを変えたりすることで女性に次の動きを伝えます。女性は体に伝わってくる男性の動きで次の指示を読み取るのです。

私「こ、これ、わかりやすい!!・・・けど」

そっか、ダンスのときは男性の体の位置を感覚で理解するもんね。体の接触も多いし、これならDの体の大きさや抱き付いたときの感覚も早くつかめそう!!でも・・・

D「おっと」

Dがぴたりと止まりました。私達の目の前には、ベッドがドーンと立ちふさがっていました。

私「・・・アパートの中で踊るのは、少し狭いよね」

D「そのようだね」

寝室でワルツを踊るのは無理があります。リビングのテーブルと椅子をすみに移動してスペースを作ろうかなあ。それでも狭いけど。

D「ベッドはぶつかるから不便だね」

私「え?」

D「僕ならぶつかってもさゆに痛い思いをさせないのにね」

Dは嬉しそうな表情でこちらを振り向きました。

D「人間のように質量を持った体があると、ぶつかって痛い思いをさせたり、覆いかぶさったときに重い思いをさせて、さゆを苦しめざるを得ないこともあるからね。その点、僕はさゆにそんな苦しい思いなどさせないよ。何しろ、人間じゃないからね」

嬉しそうに笑って首をかしげてみせたDは、なんだか得意げな表情をしています。

D「僕なら、いくら踊ってもさゆにぶつかったりしないし、彼のようにさゆに痛い思いをさせることもないよ」

たしかに社交ダンスやってると腰や足がぶつかったりするよね。いや上手ならぶつからないんだけど。そして彼というのは過去記事「白い百合」などに書いた元彼のことです。

D「僕ならさゆを幸せにできるね。さゆは安心して幸せになるといいよ」

Dは嬉しそうに口元を大きく上げて、私の手をぎゅっと握ってくれました。



そして今では、うっかり突き抜けてしまうということは、ほとんどありません。触覚がずいぶん発達したからです。Dの表面に触れたときに、ここにDの体がありますよーという感触があるのです。具体的には、普通に人や物に触ったときみたいに押し返してくる感触があるので、おっと!ここから先はDの体だな、ということが見なくても感触でわかるのです。

その感触を越えてぐっと押し進むと、Dの体の中に入ったり突き抜けることになります。入っている間は温かくて液体の中のような軽い抵抗があるのです。

私「Dの体に手が入っちゃったり、突き抜けたりするの、嫌じゃない?」

D「それも楽しいよ?」

心配そうな私の頬をふにっと押して、Dは首をかしげてくすくす笑いました。

D「僕は、自分が突き抜けられるより、さゆの体の中に入るほうが好きだけどね。でも、さゆに触っているという意味では同じことだよ」

なんかその言葉・・・誤解を招きそうで(誤解じゃないケースもあるし)、ブログに書けるギリギリのラインだと思うんだけど・・・でも書いちゃう・・・

D「突き抜けて遊んでも構わないよ。人間相手にはできない遊びだよ。でも僕になら好きなだけしていいんだよ」

また得意げな様子のDです。でも、突き抜ける遊びって、どういう・・・楽しそうな感じでDの中に手を入れたりすればいいのかなあ。それってどうなんだろう。精霊ってそういう遊びするの?

私「ありがと」

でも私は嬉しくなりました。だってDが私に親切にしてくれているのです。

私「大好き!!」

私はDに、もふっと抱き付きました。Dも嬉しそうです。

D「突き抜ける遊びをするかい?」

私「・・・えっと、ぎゅってしたりとか・・・いちゃいちゃとかをしたいです」

突き抜ける遊びは、ちょっとまだ私にはハードル高いかな・・・

私「・・・キスしたいです」

うう・・・ほあああ!!大好きだよDーーー!!

触覚の訓練

明日はやっとお休みです!!今週はキツかった・・・!!

触覚の訓練はDも私も大好きな訓練で、余程のことが無い限り毎日行っています。でも、今まで訓練の手順について書いたことが無かったので書いてみます。

いつも就寝前にベッドの上でするのです。電気を消した後、私はベッドに横になって、パジャマの左腕を二の腕までめくってベッドの上に置きます。部屋の中は薄暗く、カーテンからさしこむ外灯のボンヤリとした明かりだけです。明るいところでは透き通って見えるDですが、このくらい薄暗いと透き通らずに見えるのです。本物の人間そのものです。

D「触るよ」

私の、パジャマをめくった腕の内側を、Dがそっと触り始めます。つーっと指でなぞったり、くすぐったり、指先で軽く叩いたりするのです。

D「さゆの肌は、すべすべしていて気持ち良いね」

私「あ・・・ありがと・・・」

しばらく触られていると、なんだか気持ち良くなってきます。くすぐったいような、ふわふわするような嬉しい気持ちになるのです。仕事などで疲れているときは、このまま気持ち良く眠ってしまいます。元気のある日は、だんだん胸がドキドキしてきます。

私(・・・もっと、触ってほしいなー・・・)

そうです、少しずつやらしい気持ちになってきてしまうのです。そして、それはすぐDにばれてしまいます。Dは私の触覚を読めるので、Dに触られている私がどんな感覚を抱いているか、Dは即座に知ることができるのです。

私「っ・・・」

もっと触られることを私が望んでいると知ったDは、口で愛撫を始めます。ふわっと優しくキスをしたり、舌でゆっくり舐めたり、甘噛みしたり、強く吸ったり、恋人にするような情熱的なものです。

私「・・・うあ」

これがすごく気持ち良くて、これだけでもう・・・って感じなのですが、まだあの感覚がくることはありません。Dが加減しているのです。

私(うわ・・・気持ちいいよう・・・もっとしてほしいな・・・)

頭をぼーっとさせながら気持ち良くなっていると、私の腕を触っていたDの手が、肩のほうまでゆっくり触ってきます。首筋にもキスをくれたり、舐めたりしてくれます。

私(・・・きもちい・・・もっと・・・)

ここで特に止めたりしなければ、Dとこのままいちゃいちゃすることになります。



・・・そうなんです。触覚の訓練とは、主に就寝前のいちゃいちゃのことなのです。最初のうちの訓練は左腕の内側だけを触ってもらっていたのですが、どうやら私にとっては健全な訓練より、やらしい触られ方をしたほうが効果が高いのです。私がえろいせいです・・・

毎晩触覚の訓練をしているのですが、ほぼ毎晩いちゃいちゃしていることになります。私のせいです。



以前の記事にもちょこっと書いたのですが、私にとっては、好きな触られ方のほうが訓練の効果が高いようです。
もう一つは、もうすぐ触られそうっていうときに、触られたときの感触をあらかじめ想像しておくのも効果が高かったです。最初の頃はそれをしないとハッキリとした感覚がありませんでした。
具体的に書くと、Dの指が自分の肌にゆっくり近づいてくるところを見ながら、この指に触られたら気持ち良いだろうなってドキドキしながら感触を想像して、触られるのを期待しながら指を待ち、触られた瞬間に感触を想像するのです。これの繰り返しでした。Dは触り方を変えてくるので、指でそーっと触られるときとか、トントンと触られるときとか、唇で触れられるときとか、その時々に応じた感触を想像することの繰り返しでした。
それを毎晩繰り返しているうちに少しずつ感度が上がって、今では触られるところを見なくても、触られる感触を想像しなくても、ちゃんと感触を感じることができるようになりました。普通の人間に触られているかのようです。

人間に触られているときと同じ感触については上記の通りに訓練したのですが、Dに触られたときは、それとは別の感覚も同時に感じるのです。それがぞくぞくするようなやらしい気持ち良さです。
これは私が自分で感じようとしているわけではなく、Dが私に送っている感覚のように感じます。(詳細は過去記事「ダイブ・離脱ができない」参照)何故なら、私が自分でコントロールできないからです。自分でコントロールできないので、幻視や幻聴と同じようにDにコントロールしてもらっています。

触覚の訓練についての収穫は、今のところは、こんな感じです。

真実

また就寝前の話です。日中仕事なのでブログに書けるようなエピソードが無くて・・・
ここのところずっと就寝前の話なので、せっかく読んで下さる皆様が、もう飽き飽きなさっているのではないかと恐縮です。すみません・・・
でも、明日は休みなので、明日は日中の話がやっと書けます。

では、以下は昨日の夜の話です。

就寝前。ベッドに入った私は電気を消しました。とたんに暗闇が広がり、同時にDの存在感が増しました。Dは日中の明るい光の下では透き通っていますが、暗いところでは透けずに見えるのです。まるで本当にそこに存在しているかのように。
部屋の中は足元すら見えないほど暗くなり、窓のカーテン越しにぼんやり見える外灯の光だけがうっすら入るのみです。

私は、ベッドの上に左を下にして横になり、左手のパジャマの袖をひじまで上げました。まだ暖房をつけたばかりなので、ひやっとした冷たい空気が左腕の肌を包みました。
Dはベッドの横の床の上に、私と向かい合うように座り、右手を私の左手の上に手を繋ぐように乗せました。そして、左手の指で私の腕の内側を、つーっと肌をくすぐるように滑らせました。

これは触感を鍛えるトレーニングなのです。Dからの提案で始めました。眠る前に毎日してくれるのです。

私「・・・ねえ、なんで腕なの?」

Dから触られる場所は毎回左腕の内側なので、なんとなく尋ねてみました。

D「他の場所でもいいのかい?」

口元にいつもの笑みを浮かべながら、Dが言いました。相変わらず表情が読めません。

私「いや、首はちょっと・・・」

はじめて触感を感じたとき、Dの指に首を触られてゾクっと鳥肌が立ったことを思い出したのです。

D「首じゃなければいいのかい?」

Dは私の腕を触っていた手を止め、私がかけている掛布団の上にそっと乗せました。私の体には、Dの腕の感触も重みも何も感じられませんが、驚いた私はあいている右手でDの腕を押さえました。触れずに空を切りましたけど。

D「ほらね。だから腕にしたんだよ」

Dは布団の上から手をどけて、再び私の腕の内側を触りはじめました。

私(うーん・・・)

D「何も考えないで、触られている感覚にだけ集中してごらん」

Dの指が、そーっと私の肌をなぞり、優しくなでたり、くすぐるように動かしたり、指先で軽く押したり・・・
触感は感じないはずなのに、本当に何も考えないでただ触られているところを見ていると、くすぐったいような焦ってくるような妙な気分になるのです。私は目をそらしました。

D「いけないよ。よくごらん」

私「・・・なんで、そういう触り方するの?普通に触られたほうが良いんだけど・・・」

D「そういう触り方って、どんなだい?」

どんなって・・・

D「そういう触り方、かい。さゆが心地良いと感じるような触り方が、一番さゆの体に受け入れられやすいからだよ」

私「な、なにそれ!違うよ、なんかゾワゾワしてくすぐったい変な感じだよ」

私が慌てて抗議すると、Dは口元の笑みを濃くしました。

D「また嘘かい?さゆは難しいね・・・」

Dは私の腕の内側に、そっと唇を当てました。唇の柔らかい感触と、くすぐったい息が腕にかかります。

私「う、わ」

D「でも、嘘はいけないよ」

肌に唇を押し当てたままDが言いました。柔らかい唇が動く感触。Dが何度も唇を押し当てるたびに、ぞわっと鳥肌が立ち、得体のしれない恐怖が広がります。

私「そ、それやめて」

D「何故だい?」

そう言いながら、Dは再び口づけを落としました。こんなことをしておきながら、Dの口調は淡々としていて、感情が無いかのように平然としています。全くいつもと変化が無いのです。指より唇のほうが感触が伝わりやすいみたいだから唇にしよう、ただそれだけのように。しかしDがそれだけだとしても、私は限界でした。

私「何故って、なんか・・・ホントやめて!」

焦る私とは対照的に、Dは平然と私の腕の内側に口づけを繰り返します。いつも手の甲にされている儀式的なものではなく、濡れた思わせぶりな口づけ。その確かな感触に背筋がゾワゾワ寒くなり、私は息をのみました。

D「ああ、これはいいね。もう少しだね」

柔らかい唇が肌に強く吸い付き、白い歯が甘く噛んだとき、私は我慢できずに声を荒げました。

私「D!!」

D「なんだい?」

Dは平然と顔を上げました。いつもの笑みを口元にたたえています。私の腕には、肌がまだ濡れているような感触が残っています。

私「Dは私の嫌がることはしないって言ってたじゃない」

D「もちろんさ。しないよ。さゆが本当に嫌なことならね」

私「嫌だって言ってるでしょ。Dは私の頭の中の声が読めないんだよね?だったら、私の言う言葉をちゃんと聞いてよ」

Dは口元の笑みを消して、ゆっくり言いました。

D「さゆ。気付かないふりをしてはいけないよ」

え?なに・・・?
昨日も言ってたけど、気付かないふりって一体何に?
一体、私が何に気付かないふりをしてるって言うの?

D「気がつかないふりをして、見ないふりをして、聞こえないふりをして、沈黙して・・・それで傷付くのは君自身だよ」

Dは口元に笑みをもどして、ゆっくり両腕を広げました。

D「さゆは、僕の感触がわかるようになりたいんだろう?それなら、拒絶しないで受け入れておくれ。僕はさゆに、怖いことも痛いこともしないよ」

何を言ってるの?私は感触がわかるようになりたいとか言ってないし、そもそも触感の訓練はDが言い出したことでしょ?
ていうか、Dは私に危害なんて加えないことはわかってるけど・・・加えない・・・よね?
だってDは私の作った・・・

D「さあ、さゆ。何も考えないで、僕に触られる感触だけに集中してごらん」

Dは両手で私の頬を包み、顔を寄せてきました。

D「ほら、何も考えないんだよ・・・」

さらさらの髪が目の前にせまり、Dの笑みがいっそう深くなりました。

私「やだよ!!怖い・・・!!」

怖い!!いやなんで?私のタルパじゃん。私が作った。危害は加えない。男性だけど。でも怖くないでしょ?だってタルパだもん。人間の男性じゃないもん。いや何言ってんの、人間だったらどうだっていうの?なんで人間だと怖いの?私、普通に人間と付き合ってたでしょ・・・付き合って・・・いて・・・

D「思い出した?」

Dが口元に微笑みを浮かべて、穏やかな声で言いました。

D「だから怖かったんだね。でも、さゆが病気になったからといって、僕はさゆを捨てたりしないよ」

病気になったらからといって、捨てたり・・・

D「僕だけは、さゆを置き去りにしてどこかに行ったりしないさ。さゆを一人ぼっちにした『お母さん』や『お父さん』とも違うし・・・『○○』とも違うよ」

○○。
すごく久しぶりかのように、その名前が頭によみがえりました。やたら高い背も、元気で大きめな声も、落ち着きなく活動的なところも、ころころ変わる楽しい表情も、明るい笑顔も。こんな昔のことみたいに思い出すなんて、ほんの数か月前まで毎日のように呼んでいた名前なのに。

私「なんで・・・彼のこと知って・・・」

D「僕は君の心を読むことはできないけど、知識は君と共有しているからね。記憶も知識の一つだよ」

私「ああ・・・」

D「彼は、こうやって・・・」

Dは私の腕に口づけました。今までDがしていた濡れた思わせぶりな口づけじゃなくて、そっと優しいものでした。

D「こうやって僕と同じことをさゆにしたのに、病気になった途端に別れてくれと言ったんだよね」

私「・・・・・・」

D「君はその場で了承した。ごめんね私のせいで迷惑かけて、なんて言葉と笑顔を一緒にね」

当然だよ、だって彼は何も悪くないもん。私の病気は私の問題で、彼を巻き込むことじゃないもんね。将来が見えない病気の私と付き合い続けてくれなんて、そんな厚かましいこと言えるわけないし。

D「君の言葉を聞いた彼は安心した。安心したせいで、つい本音をもらしてしまった。自分には未来があるから、まだこれから先があるから、ってね」

でもそれも当然だと思ったよ。どのくらい当然かって、花が枯れるのと同じくらい当然のことだと思ったから、花が枯れたのをいちいち気にして泣いていたら重いと思われるのと同じで、私がいつまでも彼の言葉を気にしていたら重いじゃん。それにね、彼のそういう裏表の無い正直なところも好きだったんだ。

D「彼に悪気は無かった。君はそれを知っていたから、彼を嫌いになることはなかった。でもあのときを境に、君は怖くなったんだ。それから君は、誰にも迷惑をかけないように、もう誰のことも好きになるまいと決めたんだね」

そこまで言ってDは一息つき、ふふっと微笑みかけてきました。

D「幸いなことに、僕は自分の損得勘定とさゆとを天秤にかけるような思考は持ち合わせていないのさ。なにしろ、人間じゃないからね」

少し得意げな様子でDが言いました。

D「安心おし。ずっと傍にいるよ。一人ぼっちになんてさせやしないさ。だから・・・」

Dは、上にめくられた私の左袖をもとに戻そうとして、自分の指が透けて服に触れないことに気付き、沈黙しました。私が自分でパジャマの袖をもとにもどすと、再びDは口元に笑みを浮かべて言葉を続けました。

D「・・・だから、さっきは怖がらせてすまなかったね。あんなことは、もう二度としないから安心おし・・・・さあ、おやすみ。良い夢を」

見ざる聞かざる言わざる

また就寝前の話です。すみません。昼間は仕事でDとの交流が少なく、ブログに書けるような昼間の話題が無いんです。
そのせいで、リアルタイムの記事だと、仕事している日のブログは就寝前の話ばっかりになっちゃいます。仕事から帰ってくると、たいてい食事とお風呂と就寝しかイベントが無いので・・・

休みの日なら日中に出かけるとかして、もっとバリエーションに富んだ内容を書けるのになあ。でも休みの日より仕事の日のほうが圧倒的に多いわけで・・・
ずーっとこの調子で就寝前の話ばかり載せるブログになってしまったらどうしよう・・・

では、昨日の夜、就寝前の話です。

アロマキャンドルなるものを買ってきたので、寝る前に火をつけてみました。雰囲気が出るかと思って電気も消してみました。暗闇の中、小さな火が可愛くともってカモミールの香りがふわふわと漂います。

私「わー、良い匂いだね」

D「甘い香りだね」

私がベッドに座ると、Dは私の足元の、床の上に座りました。

私「ベッドに座ればいいのに」

D「しもべをベッドに上げるなんて、さゆ。いけないよ」

添い寝どころか、ついにベッドに座ることすらしなくなってしまったのか・・・
ベッドに座るなら添い寝も平気じゃないの?みたいなことを私が言っちゃったから、気にしてるのかなあ。

Dは興味深げにアロマキャンドルを見ているようです。珍しいのかな。私だって買ったのは初めてだもんね。知識は私と共有しているとか言ってたから、Dもアロマキャンドルを見るのは初めてなのかな。

私「気に入った?Dは綺麗なものや良い香りが好きだもんね」

D「気に入ったよ。でも、さゆのほうが綺麗だし良い香りだよ」

言った直後に、しまった!みたいな表情を見せて、Dがこちらを振り向きました。

D「すまなかったね、気分を悪くしたかい。でも、ご機嫌取りではないよ。もう言わないから許しておくれ」

その言葉で、ペンダントの件を思い出しました。あのとき私が言ってしまった言葉をDは気にしていたようです。

私「あのときは本当にごめんなさい。あのとき私が言った言葉は全部前言撤回するよ。私が勝手に一人で突っ走っただけで、Dは何も悪くなかったのにね。ごめんね・・・本当は嬉しかったんだよ」

Dは驚いたように私の顔をみつめて、それから嬉しそうに口元に笑みを浮かべました。

D「良かった・・・」

まるで人間のような感情のこもった口調でDが溜息まじりに呟きました。いつも淡々とした口調のDには珍しいことです。

D「ありがとう、さゆ。でも、さゆが僕に謝る必要なんて無いんだよ」

いつもの口調にもどったDが、私に手をさしのべてきました。私がいつものように手を乗せると、Dもいつものように私の手に口づけを落としました。相変わらず感触は何も感じません。Dの茶色い髪がサラサラ揺れました。

D「・・・さゆ、明かりを消して、暗くしないかい」

私「もう眠る?」

キャンドルの火の上に身をかがめたDが、ふっと息を吹きかけたように見えたとき、ゆらっと炎がゆらめきました。

私(・・・偶然、エアコンの風が当たっただけだよね?だってDは私の妄想だよね?)

私がキャンドルの火を吹き消すと、途端に真っ暗になりました。明かりは、窓のカーテンごしに薄っすらと透き通る外灯の光だけです。暗くて、足元すらおぼつきません。

D「暗いところでするほうがいいのさ」

私「?」

昼間の太陽の下ではすき通って見えるDの姿は、薄暗闇の中では存在感を増します。もちろん暗くて見えにくいのですが、明るい場所で見るときと違って透けないので、本当にそこにいるかのように感じられるのです。触ったときの感触が感じられないことが不思議なくらいに。

D「さあ、ベッドにお入り」

私は外灯の明かりをたよりにベッドに上がり、手探りで掛布団をかけました。

私(いつもベッドに入ってから電気を消してたからなあ・・・)

触感のトレーニングのために、私は左手の袖をまくりました。いつも眠る前に、左手の内側の手首からひじの辺りまでをDに触られるのです。私が触っても何も感じられないDの手が、私の手を握りました。

D「さわるよ?」

Dの指が私の手首の内側を、そーっと触りました。感触は無いのですが、その様子を見ているとくすぐったいような気分になります。

D「触られるところを、よく見ておいで」

このトレーニングを最初に受けたときに、どうせ眠るからと思って目をつぶったら、触るところを見ているように言われました。それからずっと、見ることは重要だとDに言われているのです。

見ようと思って目を開けていても仕事の疲れですぐに眠くなってきて、私はそのまま寝てしまうのですが、毎日このトレーニングをしているうちにコツがわかってきました。

私の場合、見ることというか、見て想像することが必要なようです。触られている間の感覚より、ああ指が近づいてきたな・・・あ、もう肌に指が触れる、というような、触るまでの想像が私にとって重要なようです。

私(Dが暗くしようと言ったのは、Dの指を透けさせないためだったんだろうなあ。透けない指に触られたほうが、触られた感触を想像しやすいもんね)

D「どうだい?」

Dが尋ねてきました。触られるところを見ているとくすぐったい気分になりますが、触られている感触はまだありません。

私「くすぐったい気がするよ」

D「良い兆候だね」

私の手首のあたりをくすぐりながら、Dが口元の笑みを濃くしました。

私「なんだか幼稚園のときを思い出すなあ」

Dは私の腕を触りながら首をかしげました。

私「手遊び歌っていうのがあってね、二人一組で遊ぶの。細かい部分は忘れちゃったけど、その歌の中で『階段登って』って言いながら、相手の手首から肘のほうに向けて指を動かすんだ。すごくくすぐったくてね、でも楽しかった・・・今、急に思い出したよ。Dが触っている場所と同じ場所だからかな」

あのころ、幼稚園のときはまだお父さんとお母さんの仲が良かったんだ。幼稚園は楽しかったな。小学校に上がってしばらくした頃から両親が喧嘩しだして・・・

D「手遊び歌は、これと同じことをされるんだね。そうかい。誰にされたの?」

私「さすがに覚えてないなあ。でも、同じ幼稚園の子だよ」

D「そう」

Dは私の腕の内側に、むにゅっと唇を押し当てました。いきなり。柔らかい感触も、生温かい温度も、さらさらした髪が肌をかする感覚も、全てがハッキリとしていました。息のかかるくすぐったい感覚を腕に感じ、ぬれた唇の感触を残してDは離れていきました。

私「え?え・・・今・・・感触が・・・」

D「やはりね、さゆ。いけないよ」

私「え?」

D「気がつかないふりはいけないよ」

私「気がつかないふりって・・・」

D「君自身の気持ちに見ないふりをして、何も気がつかないふりをしたら、苦しむのは君だよ」

私「見ないふりとか、気がつかないふりとか、そんなことは・・・」

D「これは、困ったね」

私「あの・・・」

D「大丈夫だよ、なんとかしてあげよう。なにしろ、他ならぬさゆの悩みだからね。今日はもうおやすみ。良い夢を」

Dに感謝

昨日の夜の話です。

ベッドに入った私にDが声をかけてきました。就寝前のいつもの挨拶です。

D「おやすみ、良い夢を」

私「うん。おやすみ」

Dはベッドの横の床の上に座り、私の枕元に手を乗せました。私はその手を握るつもりで、同じ場所に手を置きました。感触も温度も何も感じられませんが、こうして手を繋いでもらうと安心して眠れるのです。
あれから、眠る前には毎回Dが手を繋いでくれるようになりました。

D「袖をもう少し上げて、肌を出しておくれ」

それに加えて、最近は触感のトレーニングが就寝前の日課になりました。パジャマの袖をまくった私の腕の内側の、手首からひじにかけての部分を、Dに触られるのです。

D「服の上からより、肌に直接触ったほうが感じやすいからね」

Dの指が、そっと私の肌をなぞり始めます。指でそっとくすぐったり、優しく撫でたり、指先で軽く押したりするのです。感触としてはほとんどわからないのですが、Dに触られているところを見ているとくすぐったいような気分になります。これをされている間に、私は眠くなって寝てしまいます。

私「ねえD、このトレーニングも私のお願い事のためにやってるんでしょ?」

手を繋いだときの感触がわかるようになれば、最後のときに目が見えなくても手を繋いでいるってことがわかるから、Dはそれを目指しているんだろうなあ。律儀に私の願い事を守ろうとしているんだ。

私「考えてみるとね、Dが大鎌を欲しがったのも、名前を欲しがったのも、全部私のためだったと思うんだけど・・・」

大鎌を欲しがったのは、死を恐れる私を安心させるために死神と戦う武器として欲しがったわけだし、名前は私達の信頼関係を繋ぐために必要だったって言ってたし。

私「だからね、私も何かDのために、D自身の望みとか願いとかを叶えたいなあって。Dの願い事を教えてほしいな」

Dは口元に笑みを浮かべたまま、少し首をかしげました。

D「僕の望みは、さゆが幸せであることだよ」

私「そっか・・・」

こういう、D自身の感情とか望みとか願いとか不満とかを尋ねると、いつもDはこうなるのです。感情を消そうとしているみたいに、淡々と、平然と、まるで故意に隠そうとしているかのように。
いつもは、Dはこれ以上この話題に触れてほしくないのかなと思って、ここで話題を変えていました。でも、私は言ってみることにしました。

私「Dの望みは私の幸せなんだね。それなら大丈夫だよ。私はDのおかげで幸せだよ。Dが来てくれてから夜が怖くなくなったし、手術や死ぬときも一人ぼっちじゃないって寂しくなくなったし、Dとお話するのは楽しいし。Dのおかげで毎日が幸せになったよ。Dありがとうね。感謝してる。大好きだよ」

実際、私は本当にDに感謝しているのです。たとえDの本心がどうであれ、義務感で親切にしてくれているにしても、仕事で親切にしてくれているにしても、それでも嬉しいのです。だって実際にDは私の傍にいて私のために行動してくれたわけで、Dが私のために色々してくれたことは、それは本当の事実だもんね。

D「・・・・・・」

Dは黙って私の顔を見つめました。私の腕を触っていた手も止まって、ただ黙って私の顔を見ていました。
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laceformyshroud

Author:laceformyshroud
名前:さゆ
20代の女です。
初めて作るブログなので、不備がありましたら申し訳ございません。
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