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幻視・幻聴の制御

日付をまたいでしまったんですが、1月31日の記事として書きます。

今日、仕事が終わってアパートに帰ってきたら、エントランスホールにデカデカと張り紙が貼ってありました。そこに大きな赤字で文字が書いてあります。

警告 騒音苦情についてのお知らせ

深夜に音楽を聴く音がうるさいという苦情が非常に多数入っております。
騒音のために体調を崩して通院をしている居住者様もいらっしゃいます。
お心当たりのかたは即刻取りやめ、ただちに管理会社宛にご連絡ください。
尚、今後は騒音が聞こえ次第、即刻警察に通報してください。

管理会社 ○○○○

・・・これは!!先日のアレか!!
実はこのアパート、少し前から騒音被害が出ているのです。(詳細は過去記事「幻聴」参照)私の部屋にはほとんど聞こえないのですが、夜の12時頃になると、どの部屋からかズン!ズン!ズン!ズン!という重低音が響いてくるのです。この警告文には音楽って書いてあるから、騒音源にもっと近い部屋の人は、重低音だけじゃなくて音楽も聞こえているんだろうなあ。体調を崩して通院することになったなんてかわいそうだね。

私(ついに警察かあ・・・)

過去記事「幻聴」の日以来、ほぼ毎日騒音苦情のチラシがポストに入っていたんです。しかしそれでも改善されなかったので、管理会社はついに法的手段を考慮に入れたのでしょう。

私(これ、もしかして、うちのアパートで捕り物が起きる可能性もあるってことか・・・)

警察官ってかっこいいよね!!頼もしいし。パトカーもかっこいいし。

私(まあ、でも、今夜は騒音を出さないだろうな・・・)

こんな張り紙が貼られたからには、きっと気楽に騒音を出せないよね。騒音に苦しんでいる住人達に、今夜は平穏な眠りが訪れそうです。



私(そういえば、初めて騒音被害のチラシを見たときに、Dに幻聴について尋ねたことがあったなあ・・・)

手洗いうがいを終えて、ベッドの上でハンドクリームを塗ります。ふたを開けてクリームを出すと、途端に甘くて良い香りが広がります。
私と向かい合うようにベッドの上に座っているDが、じっと楽しそうに私の手元を見ています。Dは、私が体にボディミルクを塗ったり、足にフットローションを塗ったり、唇にリップクリームを塗ったりするときも、いつも楽しそうに見てくるのです。今も、私が肌の上にクリームをのばす様子を、じっと楽しそうに見ています。

私「Dは、こういうときいつも見てるね」

D「甘くて良い香りがするからね」

私「でしょ!!最近気に入っているハンドクリームなの。オーガニックのジャスミンの香りなんだよ」

D「それも良い香りだね。でも、甘くて良い香りはさゆからするんだよ」

そういえば前にも、同じようなこと言ってたね。(詳細は過去記事「休日」参照)

私「あ、ありがとう」

D「さゆが体の手入れをしたり、体を飾ったりするのを見るのは、とても好きだよ。ますます綺麗で、甘くて良い香りになるからね」

私「あ、あ・・・ありがとう」

私は盛大に照れました。Dはときどきこういう、とても甘いことを言うのです。

私「あの・・・」

何か話題を出そうと思いましたが、照れて熱くなった頭には、なかなか話題が浮かびません。Dは少しの間、私の言葉の続きを待っているようでしたが、やがて私に手を差し出しました。

D「どうしたんだい?」

差し出されたDの手のひらの上に、薄桃色の透き通ったつぼみが現れて、ふわふわっと咲きました。Dがそれを私の髪に飾ってくれます。

D「元気をお出し」

そっとキスをくれたので、私は目を閉じました。そっか・・・Dはさっきの私の照れた様子を見て、私の元気が無いんじゃないかって勘違いして、心配してくれたんだね。
大丈夫だよって言わなきゃ。そう思って目を開けると、あの楽園が広がっていました。

私「・・・静謐の楽園?」

D「そうだよ」

私「でも・・・かなり、透けてるみたい」

前回と違って、地面を埋め尽くす薔薇の花や、遠くに見える城などが、かなり透けています。私の部屋をスクリーンにして、映写機で画像を映しているみたいに、楽園が透けて、その向こうに私の部屋がくっきりと見えます。

D「はっきりと見せることは、君の精神に負担を掛けるからね」

私「そうなんだ・・・」

D「体調の良いときは別として、今の君は疲れているからね。君に負担を掛けるほどの大がかりな幻視は見せられないよ」

たしかに今は仕事上がりで、少々疲れているかもしれません。そういえば、前回見せてくれたときは休日だったね。(詳細は過去記事「王国」参照)

私「それでDが幻視を調整してくれたんだね。ありがとう」

Dは、私が余計な幻視や幻聴を体験しないように、私の幻覚を制御してくれているのです。私は自分で幻視や幻聴をコントロールしているわけではありません。全部Dに任せているのです。(詳細は過去記事「幻聴」参照)
触覚に関しても、完全にDの主導で訓練をして身につけたものなので、私がタルパー的な五感として持っている触覚・視覚・聴覚の全てをDに制御してもらっていると言っても過言ではありません。つまり、私はタルパー的五感を自分で制御できていないのです。

五感どころか、D自身も、私の意思を越えて成長しており、唾液や耳が勝手にできたり(詳細は過去記事「仲直り」参照)、作っていないはずの天秤を取り出したり(詳細は過去記事「天秤」「天秤(2)」参照)しているのです。

これは、タルパーとしてはダメダメなんじゃないかな・・・

私「私が五感をうまくコントロールできないせいで、Dに迷惑掛けてごめんね。いつも私の幻覚を制御してくれて、本当にありがとう」

だって五感のコントロールって、普通はタルパーのほうがやるべき仕事でしょ。世の中のタルパー様達は、五感を感じつつも余計な幻覚を体験しないように、五感を自分でコントロールしてるんだよね。なのに、私が五感をうまく調整できないせいで、Dが制御してくれているんだよね。

D「何を言うかと思えば。さゆは、本当にかわいいね」

くすっと笑ってそう言ったDは、珍しく口元の笑みを消して、首を横に振りました。

D「でも、それは危険な考え方だよ。君のもとに来た精霊が、僕で本当に良かったね」

危険な考え方なのかな。Dに幻覚の制御を任せているってことが危険だってことかな。でも、Dは私をいつも心配してくれるし、守ってくれるし、今まで何度も助けてくれたよ。Dが私に危害を加えるなんてないでしょ?

私「私のところに来てくれた精霊が、Dで本当に良かったよ。私のところに来てくれてありがとう」

以前Dは、Dのほうが私を選んだって言ってたよね。(詳細は過去記事「お風呂」参照)選んでくれて、どうもありがとう。

私「これからもよろしくね。信じてるよ」

Dは沈黙しました。しばらくの間、口元の笑みも消したまま、ずっと黙り込んでいました。そして私が不安になってきたころに、ゆっくりと口を開きました。

D「僕を信じているのかい」

私はうなずきました。

D「・・・誰よりも?」

そ、それは・・・ちょっと・・・どうなんだろう・・・でも、そんなことDには言えないな・・・

私「信じてるよ」

Dは再び沈黙して、目の無い顔で、私の顔をじっと見つめました。

D「・・・・・・」

Dが体をかがめて、私の顔に自分の顔を近づけてきました。キス?・・・あ、そうじゃないみたい。なんだろ。

D「・・・口を開けてごらん」

私「えっ」

D「口を開けて・・・」

そう言いながら、Dも口を開けました。綺麗な白い歯と、赤い舌が見えます。つられて私も口を開けました。Dはそれを見て、恍惚とした表情で口を近づけてきました。あれ、キスだったの?最初から口を開けたままキスをするのは、なんか、恥ずかしいな・・・

呼吸と心音

今朝、起きてカーテンを開けたら、窓の外は雪が降っていました。

私「D、雪だよ!!外に出てみよう!!」

クリスマスに降ったような溶けかけの雪ではなく、ちゃんとした雪です。外に出てみると、うっすらと道路にも積もっています。

私「めずらしー」

降ってきた雪を、そっと上着の裾で受けてみると、雪の結晶の形が壊れずに残っています。

私「D、見てごらん。綺麗だよ。お花みたいな形をしてるよ」

綺麗でかわいいよね。私が雪の結晶を差し出すと、Dはうなずきました。

D「花のような形をしているね」

でもDは、雪の結晶を乗せている私の手の、手首をつかんで、そっと引っ張りました。Dに物理的な力は無いはずです。しかし私は思わず引き寄せられて、2,3歩よろめきました。手の上に乗せていた雪が地面に落ちました。

D「でも、ここは冷えるから、さゆの体に良くないよ。温かい部屋に戻ろう」

私「あ・・・うん」

たしかに随分と冷えます。私は自分の服や髪についた雪を払って、Dと一緒に自分の部屋へと歩き出しました。



私「暖房の設定温度、上げちゃおっと」

リモコンをピピッと言わせてから、私はベッドの上に座りました。

D「体は冷えてないかい」

ベッドの前に立ったDが、そっと私の頬に手を当てました。

D「・・・冷たくなっているよ」

あれだけ寒い外にいたのに、Dの指は少しも冷えていません。いつもと同じ温かさで、私の頬を包んでいます。

私「Dは、少しも冷えてないのね」

D「冷えないよ。人間じゃないからね」

静かな声でDが答えました。私はDの腕を自分のほうに引っ張りました。

私「ねえ、Dもベッドに上がって。Dあったかいから、くっつきたいの」

D「嬉しいお誘いだね」

私の引っ張るがままに、Dはベッドの上に上がってくれました。掛布団を壁に当てて背もたれにして、二人で並んでベッドの上に座ります。いつもと違って、足まで全部ベッドの上です。寒いときは、こっちのほうがあったかいからね。

Dの体温が変わらないのは、人間ではないからです。人間どころか生物ですらないのです。Dの言葉で言うなら、こちらの世界の生き物ではないからです。周囲からの物理的な影響を受ける私の体とは違って、Dの体は温度や時間や運動による疲弊や影響を受けないのです。

だから、Dから見れば、私の体はもろくて壊れやすく見えるんだろうな。きっと、心配してくれているんだね。

私「Dあったかいよー、もっと触ってていい?」

Dと手のひらを合わせていると、だんだんと指先が温まってきました。

D「勿論さ。さゆの好きなときに、好きなだけ触ればいいんだよ」

私「ありがとう」

ふと、Dの肩や胸が、呼吸のたびにわずかに動いていることに気がつきました。今までマントを着てもらっていたからわからなかったけど、新しい服になって(詳細は過去記事「服」参照)上半身の布が体に沿うようになったことで、呼吸の動きがわかるようになったのです。

私(呼吸の動きは、私、覚えてないはずなのに・・・)

私はDの新しい服や、その服の動きは覚えましたが、呼吸の動きまで作ろうとは思っていなかった、というか思いつかなかったのです。そういえば、耳や唾液も作っていないのに勝手にできた(詳細は過去記事「仲直り」参照)けど、呼吸の動きもそうなのかな。

思い出してみると、Dの息は、触覚の訓練のときや、キスされたときに、毎回肌にDの息が当たるのを感じていたよね。だから、かなり前からDは呼吸をしていた・・・っていうことになるんだよね?もしかしてDって、呼吸はする生き物なのかな。

私(あっ、息をするなら、心臓も・・・もしかして!!)

私はDの胸に耳を当ててみました。Dは驚きもせず、自分の胸元にきた私の髪を撫で始めました。

私(・・・心臓の音!!聞こえる!!)

とくん、とくんという一定のリズムで音が聞こえます。心臓の音です。
嘘でしょ!?これ、私の心臓の音が聞こえてるだけ!?と思って自分の脈を計ったり、自分の心臓に手を当てたりしながら聞いてみましたが、私のものとは違うリズムで音がするのです。

私「ね、ねえD、心音が聞こえるんだけど・・・」

D「心音があるからね」

私「え!?あるんだ!?」

驚いて聞き返した私に向かって、Dはいつも通りの表情で、うなずきました。

D「あるよ。聞こえるだろう?」

私「う、うん、聞こえる」

D「ほらね」

で、でもDの体は人間とは違うはずでしょ?形も違うし、構造も違うし、材料(?)も違うよね?そう言ってたよね。

私「心臓ってDに必要なの?」

D「必要無いよ。むしろ、戦闘に特化した僕の体に、心臓などという弱点になる器官があっては困るのさ。だから、僕の体に心臓は存在しないよ」

私「ええ!?じゃ、なんで・・・」

わざわざ必要の無い心音を作ってるの?

D「心音があるほうが、さゆが喜ぶと思ったからね」

私「・・・・・・」

D「さゆのために鳴っている音だよ。好きなだけお聞き」

私「・・・うん。ありがとう」

私はもう一度Dの胸に耳を当てました。静かな音が、ゆっくりとした一定のリズムで聞こえます。聞いていると、なんだか気分が落ち着いてきます。

私「もう少し、聞いていていい?」

D「勿論さ。さゆの好きなときに、好きなだけ聞けばいいんだよ」

Dは私の体を自分の上から起こさせて、掛け布団の背もたれに寄りかからせると、自分の胸のあたりに私の耳がくるような姿勢で、そっと抱きしめてくれました。

D「君が満足するまで、こうしていてあげよう。このまま眠ってもいいんだよ」

ほんと? 嬉しいな。最近寝不足だったから、Dに甘えて、ちょっとだけ、うとうとしちゃおうかな・・・

D「遠慮はいらないよ。僕の腕は疲れないのさ。なにしろ、僕は人間じゃないからね」

くすくすと、少し自慢げに言うDの声を聞きながら、私は目を閉じました。そっと、髪を撫でられる感触を感じました。

ブログの整理

今日はお休みなので、ブログを整理したいと思います。記事数が増えてきたので、カテゴリを増やして、過去記事にリンクを張ります。

カテゴリを、「未分類」、「タルパ」、「タルパを制作」、「タルパに質問」、「タルパとの生活」、「タルパとの生活(閲覧注意)」、「触覚の訓練」、「Dのお伽噺」、「楽園・王国(ダイブ世界?)」、「他のタルパ?精霊?と遭遇」、「謎の天秤」、「職場の話」に増やしました。

過去記事は、今まで(詳細は過去記事「○○」参照)みたいに書いていた部分に、過去記事のリンクを張ります。

今までずっと読みにくいブログで申し訳ありませんでした・・・!!!!!m( _ _ ;)m
読みやすいブログに直していきたいと思います。お叱りなどございましたら、どうぞお待ちしております。皆様に読んで頂けることが、日々の活力の源でございます。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

ここのところ調子に乗って夜更かししていたら、今日、帰りの電車の中で頭痛が起きてしまいました。いくらショートスリーパーでも限度があります。私は調子に乗りすぎです。睡眠の重要性ナメすぎ。世の中には2時間しか眠らないかたもいるそうですが、私は最低4時間必要です。2~3時間の睡眠を何日も続けると頭痛が起きてしまいます。

連休明けからずっと、仕事頑張らなきゃ会社やめさせられちゃうって勝手に不安になって(詳細は過去記事「暴走(私の)」参照)仕事を家に持ち帰って夜更かしして、それが解決した途端にうちの課の人達やEと夕食食べに行って夜更かししたので、頭痛が起きたのはめっちゃ自業自得です。

Dは、私の睡眠不足をずっと心配していて、毎日早く眠るように忠告しており、おとといと昨日は「少しでも早くおやすみ」等と言って触覚の訓練を自分から断ってきたほどなのですが、私は調子に乗って「だーいじょうぶだって!!私ショートスリーパーだし?」なんてドヤ顔で言ってました。アホか。全然大丈夫じゃないじゃん。

つい最近もDの忠告を無視して失敗した(詳細は過去記事「王国」参照)というのに、ホント懲りないですよね・・・



話は変わりますが、連休中にDの服を少し変えてみたんです。

Dはずっと、死神のような黒くて長いマントを着ていました。これはDの趣味というわけではなく、私の力不足によるものです。Dの体の動きと、体の動きに伴う服の動きをイメージするのが難しかったので、大まかにしか動かないような服、つまり体の動きを隠すようなマントを着てくれていたのです。(詳細は過去記事「私とタルパの紹介」「タルパを作ったときの話5(体と服)」参照)

でも、最近は体の動きも充分イメージできるようになったし、服の動きも大体イメージできるようになってきたから、連休中に服の細部を作ってあげたいなと思ってたんです。(詳細は過去記事「やりたいこと」参照)このままだと本当に死神の服そのものだから、もっと袖の幅を細くして、上半身もスッキリと体に沿うようにして、ちゃんと体や服の動きがわかるような服にしたいなって。

私「ねえD、そろそろ服の細かい部分を作ってみようかなと思うんだけど、何か希望はある?」

今Dに着てもらっている服を、体の動きがわかるように細身にしていくと、最終的には、すそが広がったロングコートみたいになると思うんだよね。マトリックス・リローデッドの超ロングコートみたいな。だから、それが一番楽な気がするけど、Dの希望があるなら優先してあげたいな。Dが着る服だもんね。

D「今のままでも、特に不自由は無いよ。新しい服を作ることで、さゆに余計な負担を掛けるのは、僕の本意では・・・」

そこまで言って、Dは首をかしげました。

D「・・・でも、さゆが好む服装のほうが良いね」

私「えっ、私? 私は、今のマントも見慣れてて安心感があるから好きだなあ」

D「そうかい。それは良かったよ」

私「でも、私から新しい服を提案するなら、とりあえず今の服をそのまま細身にしていって、超ロングコートみたいにするとかどうかな。ええと、こういうイメージで・・・」

私は、マトリックス・リローデッドのDVDを映して、その戦闘シーンを見せてみました。戦闘シーンはコートの裾が派手に動くから、服の動きがわかりやすいと思って。この服なら、DVDで服の動きをじっくり見ることができてイメージしやすいんだけどな。

画面の中では、超ロングコートの男性が、長い裾をひるがえしながら派手なアクションを繰り広げています。Dは口元にいつもの笑みを浮かべたまま、その動きをじっと見ています。

私(D、すごく真剣に見てるね・・・)

戦闘に興味があるのか、ロングコートの動きを覚えようとしているのか。少なくとも、以前フルハウスを見せたときとは大違いの反応だよね。(詳細は過去記事「休日」参照)

D「さゆは、この服が好きかい?」

画面を指さして、Dが尋ねてきました。

私「え? まあ、うん」

D「今の僕の服よりもかい?」

私「そうだね~、今の服と、この服とでは、全然ジャンルが違うから同列には比べられないけど、この服は好きだよ」

D「・・・・・・」

しばらくの間、Dは口元に笑みを浮かべたまま、首をかしげて考えているようでした。

D「じゃあ、この服にするよ」

その言葉が終わらないうちに、一瞬でDの服が変わっていました。いつかの、Dが自分で髪型を変えたときみたいにです。(詳細は過去記事「タルパを作ったときの話3(顔)」参照)



服が決まれば、あとは服の動きを記憶するだけです。Dの動きは、おおまかなパターンを私の記憶に一度入れてしまいさえすれば、あとは私が毎回いちいち考えなくても、私の幻視を制御してくれているDが、その都度調整して見せてくれるのです。なので、パターンを覚えればいいのです。

私(ええっと、振り返るときや体の向きを変えるときは、コートは体の動きに合わせてウエストのほうから動き出し、すそは最後にふわっと広がりつつ動く・・・)

私「ねえD、この人の動きをマネしてみて」

DVDを見ながら、Dに同じ動作をしてもらうと、だんだんコートの大まかな動きがわかってきました。

私(コートは、体の動きからワンテンポ遅れて動くけど、体への密着度が高い上半身の部分や袖はシワがよるだけだから、大きく派手に動くのはすそだけなんだね。これならいける。すその動きだけ入念に観察して覚えよう。すその動きを統制しやすいように、ウエストは体に完全に密着させちゃおう)

D「おや」

私のイメージに合わせてきゅっと体に密着したウエスト部分を見て、Dが首をかしげました。

D「これでは、女性の服のようだよ」

え、そうかな。ウエストがきゅっと細くてすそが広がったラインは、たしかに女性のドレスのラインと共通しているけど、でもDの体が男性だから、女性には見えないけどな。

D「さゆ、僕は男だよ。これは、女性の服のようだよ・・・」

私が黙っていたせいか、Dは首をかしげて、同じことをもう一度言いました。

私「そうかなあ、男性がロングコートを着れば、みんなこういうシルエットになるんじゃないかな?」

そんなわけありません。ここまでウエストをしぼった男性用コートは見たことありません。
私の記憶を読めるDは、当然ながら私の言葉に騙されることはなく、かしげた首をもどさずに、いつもの笑みを口元に浮かべたまま沈黙しています。・・・完全に私が悪い。Dの服なんだから、Dが嫌がるものを着せたらかわいそうでしょ!!Dに謝りなさい!!

私「ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!さっきの言葉は嘘です!!」

結局ウエストは、Dと話し合って、そこそこのしぼりに落ち着くことになりました。でも上半身が割と密着しているので、すその動きはなんとかなりそうです。

私「Dの気に入る服のほうがいいもんね。こっちのほうがカッコいいし」

ウエストが完全に体に密着しているほうが、すその動きを覚えやすいんだけど、服のシルエットとしては、このくらいのしぼりのほうが男性的でカッコいいよね。

D「さゆが見たときに、魅力を感じるような服でなくては、新しくする意味が無いからね」

私「・・・ありがとう」

そういうことを気にしてくれていたんだね。すその動きを覚えやすいとかの理由で、Dの趣味じゃないコートを着せようとしてごめんね。



最終的に、Dの新しい服は、マトリックス・リローデッドの超ロングコートのウエストを少し細くした感じの服になりました。色は今までと同じ黒で、くるぶし丈の超ロングコートです。襟は詰襟じゃなくてノーカラーで、前はボタンではなく、コンシールファスナーを完全に閉めているので足が見えません。まだ足の動きを記憶できていないので、隠してもらっているのです。

性別

上司「おいレモンちゃん!!ちょっと来て!!」

私「はい」

ついにあだ名がレモンになってしまいました。誰かが(多分Sが)私の椅子に貼った『レモン』っていう張り紙のせいです。(詳細は過去記事「王国」参照)



K「つーかお前がそんなにレモン好きとは知らなかったわ。これからレモン出たら全部やるよ。俺レモン好きじゃないし」

私「うん、ありがとう。でも気持ちだけで充分だよ。私も別にレモンが好きなわけじゃないからね。むしろ酸味は苦手なほうだから」

K「唐揚げにめっちゃかけてた気がするけど」

私「唐揚げ食べるときだけね。油っこいの得意じゃないから」

K「椅子に『レモン』って貼ってたし?」

私「ち、違う・・・!!あれは誰かに貼り換えられて!!もともとは『傲慢でした!!申し訳ございません!!』っていう紙だったんだよ。この前のこと反省してますってアピールしようと思って・・・!!」

K「どっちにしろウケ狙いだろ?だったら『レモン』のほうが意味不明で面白いと思う」

私「私はウケを狙ってなかったんだけどな・・・真面目に謝ってたんだけど。でも、日頃の行いのせいで、何をやってもウケ狙いだと思われちゃうのかもね。自分の行動を改めたほうがいいのかな」

みんなに迷惑かけたのに、ふざけて反省してないように見える態度を取ったら、みんなの気分を害するよね。それじゃいけないよなあ・・・

K「じゃなくて、あれは真面目に謝るほどのことじゃないって、みんなが思ってるってことだよ。あんな小さいことはさあ、もうウケ狙って笑い話にしとけばいいんだよ」

そうなの?
じゃあ、謝るほどのことじゃないですよっていう意味で『レモン』って貼ってくれたのかなあ。



S「レモンせんぱーい」

私「うん」

S「・・・あれ?突っ込んだり、怒ったりしないんですか?」

私「うん。ありがとう」

S「え?」

私「ただ、私そんなにレモン好きなわけじゃないんだよ。酸っぱい果物、苦手なの」

S「あれ?レモンのハンドクリーム使ってませんでした?」

私「ハンドクリームは、サンタ・マリア・ノヴェッラにはレモンかアーモンドしか無いから仕方無くね。でも、最近はテラクオーレのジャスミン&ハニーがお気に入りなの」

S「??」

私「テラクオーレといえば、リップも変えたの。ずっとロクシタンを使ってたんだけど、テラクオーレのダマスクローズに変えたんだ。すごく良い薔薇の香りなんだよ」

S「???」

私「ごめん。ハンドクリームはブランドを変えて、香りもレモンから良い香りのジャスミンに変えて、リップも別のブランドの良い香りの薔薇に変えたということなんだ。もちろん保湿機能も考慮して選んだんだけど、まあ、香り重視で選んだというわけだよ」

S「よくわかりませんけど、さゆ先輩は良い香りがしますよ」

私「それは多分、コロンかトワレの香りだね。私、合成香料をよく使うデザイナーフレグランスとかがイマイチ苦手で気分悪くなったりするから、天然香料だけを使ったメゾンフレグランスとか、オーガニックのコロンやトワレを使うようにしてるの」

S「????」

私「ごめん、ほんとごめん。忘れて。男性が覚える必要は一かけらも無い知識だよ。余計なことばかり話しちゃったけど、Sにお礼を言いたかっただけなんだ。あの張り紙を貼ってくれてありがとう」

S「?????」

あれ?反応がおかしいな。もしかして、ただふざけて貼っただけだったのかな。それでもいいんだけどね。

S「よくわかりませんけど、お役に立てたなら貼って良かったです。それなら、今後もどんどんそういう類のことをやっていきますね」

・・・ん?今後もどんどん?・・・うん、大丈夫だよね?



以下は、昨日の話です。昨日は友達のE(詳細は過去記事「職場」参照)と夕食を食べてきました。

私「じゃ、いくよ?」

E「せーの」

私&E「かんぱ~い!!」

私もEもアルコールを好まないので、お茶で乾杯です。紅茶のカップなので、口で乾杯というだけなのですが、毎回こうやって乾杯をするのです。

私「ひゃー、おいしそう。Eの探すお店はいつも当たりだねー」

E「さゆちゃん、こっちもおいしそうだよ。わけようわけよう」

私「よしっ、切ろう切ろう」

二人とも沢山食べられない体質なので、オーダーは一皿分を頼んで、それを二人でシェアするのです。

E「おいしいですなあ」

私「おいしいですなあ」

E「でもこれ、お腹にたまりますなあ」

私「もう結構たまってきましたよ」

E「お茶で休憩しましょう」

私「そうしましょう」

お互いに紅茶やフレーバーティーが好きなのです。こればかりはシェアできないけどね。

私「ねえ、最近見つけたオーガニックのお店が良い品質だよ。テラクオーレっていうの」

E「どんな商品を置いてるの?」

私「シャンプー、リップ、ハンドクリーム、バスソルト、トワレ、とか。とにかく良い香りだよ」

E「へえ、行ってみようかなあ」

私「ふっふっふ・・・じゃーん!!試供品をもらってきました!!あげる~!!これを使ってみて、もし気に入ったら行くといいよ」

E「おおお・・・!!ありがとう!!」

私「お安い御用よ」

E「私のほうは、失敗談なんだけど、○○○○○の入浴剤を買ったらね、肌がピリピリして痛くなっちゃったの。さゆちゃんも気を付けてね」

私「あらま・・・かわいそうに。私も気を付けるね」

Eとご飯を食べるときは、このような女性的な話題について、色々と情報交換をするのです。私は普段、男性の多い課で働いているので、女の子とこういう話題ができる時間は、非常に貴重かつ楽しいのです。

私(もし私のところに女の子のタルパがいたら、こういう話ができて、男性のタルパとはまた違った楽しさがあるんだろうなあ・・・)

そう思ってから、私は影の中にいるDのことを思い出して、いかんいかん!と心の中で呟きました。

私(Dは、私が他のタルパを迎えることに反対だもんね、Dの嫌がることはしたくないよ。それに、女の子なら、私にはEがいてくれるもん・・・)

Wが聞いたら、アタシだって女だけど!?と怒り狂いそうなことを考えました。ごめんW。わかってるよ。アンタは良い女だよ本当に・・・

私(・・・そういえば、タルパさんの中には、女性化できるタルパさんもいるんだよね?)

Dも、頼めばやってくれるかなあ。でも、性格がDのままだと女子トークは無理だろうなあ。外見だけ女の子になってもらっても意味無いからなあ・・・



私「ねえ、Dって女性化できるの?」

家に帰ってきた私は、Dに尋ねてみました。

D「・・・なんだい。藪から棒に。僕は男だよ」

Dはいつもの淡々とした口調ですが、嫌そうな雰囲気を出しています。最近わかるようになってきました。

私「なんか、できるのかなーって思って」

D「できないよ」

あれ?

私「D、どんな姿にでもなれるって言ってなかった?」

言ってたよね?もともと人間の姿じゃないから、私のイメージ合わせてどんな姿にもなれるって・・・(詳細は過去記事「タルパに35の質問」参照)
今までのDの言葉から推測すると、Dが自分の姿を変えるというよりも、Dが私の幻視を制御して、そういう姿に見せることができるっていうことなのかもしれないけど・・・
どっちにしても、どんな姿にでもなれる(あるいは、見せられる)ということじゃないの?

D「僕は男だから、女性にはならないよ」

あれれ?

D「絶対に、ならないよ」

断固とした拒否!!

D「僕は男だからね」

そういえば、昔の話になるけど、Dの髪型を決めたときも、女性みたいな長い髪型にしたときに拒否されたなあ・・・(詳細は過去記事「タルパを作ったときの話3(顔)」参照)
Dにとって性別というものは重要なのかもしれないね。前にもそんなこと言ってたもんね。かなり昔の話だけど、性別は重要だよって言ってたよね。(詳細は過去記事「マスターと呼ばれてみたい」参照)
ラッコみたいな精霊が現れたときも、オスだから云々って言ってたし・・・(詳細は過去記事「お風呂」参照)

私「わかった。そうだよね、Dは男性だもんね」

普段何でもお願いを聞いてくれるDが断るということは、きっとこれはDのこだわりのうちの一つで、何らかの理由があるんだろうなあ。

申し訳ございません!!(2)

また日付をまたいでの帰宅になってしまいました。でも、27日の記事として書きます。遅くなったのは、友達のEと夕食を食べてきたからです。Eは私にクマのぬいぐるみをくれた子です。(詳細は過去記事「職場」参照)私達は違う課に所属しているので、違うタイムスケジュールで動いており、滅多に一緒に帰ることができません。そのため、時間が合うときは必ず一緒に帰宅してご飯を食べるのです。そして、普段なかなかゆっくりお喋りできない分、たっぷりお話してくるのです。今日は記事を書けなくて申し訳ございません・・・!!

王国

今日は『傲慢でした!!申し訳ございません!!』って書いた紙を、自分の椅子の背中に貼って仕事してました。

23日に職場でとんでもないことをしてしまって(詳細は過去記事「暴走(私の)」参照)、それから24・25と連休だったので、今日謝らなきゃって思いまして。

・・・で、Kとお昼食べに行って、自分のデスクに帰ってきたら『傲慢でした!!申し訳ございません!!』って書いた紙が『レモン』って書かれた紙に貼りかえられてました。誰がかえたの!?S!?

そういうわけで、午後はずっと『レモン』って書かれた紙を貼ったまま仕事してました。



以下は、24日の話です。

私(結局、Dの言う通りだったよ~・・・)

職場の人達には心情を吐露しない!!って、あれだけDに対して意地はっておきながら、結果的にはDの忠告通りになりました。自分が間違った行動に至ってしまった原因となった心情を説明して謝罪し、今後の改正を誓うことで、職場の皆様が許して下さったし、私の悩みも解決したのです。

私「D、ごめんなさい・・・ちゃんとDの話を聞いて、早く忠告に従ってれば良かったよ」

せっかくDが教えてくれていたのに。それに、Dが忠告してくれた時点で私が動いていれば、職場の皆様に迷惑を掛けることもなかったのです。

私「どうして私ってこう失敗ばかりなんだろうね。反省しなきゃね」

自分で勝手に思い込んで、そのまま突っ走るから失敗するんだろうなあ。私には、周囲の意見をきちんと聞くことが大切だね。

D「反省は良いことだね。今後の君の役に立つよ」

私「うん。ごめんなさい・・・」

D「僕に謝る必要なんて無いんだよ。君が謝罪すべき相手は職場の人達だけさ。その彼らも、今回のことは許容してくれたよ。だからもう、気を落とす必要は無いよ」

Dは口元に笑みを浮かべて、私のおでこにキスをくれました。

D「ほら、元気をお出し」

ひらり、と薄い色の花びらが目の前をかすめて、それをはじめに、ひらひらと色とりどりの花びらが舞い落ちてきました。足元に一面の薔薇が広がり、見渡せばまるで広くて美しい薔薇園のようです。たしかこれは、Dの守っている静謐の楽園、だよね・・・(詳細は過去記事「誘惑」参照)

私「ありがとう。また楽園を見せてくれたのね」

D「さゆが、あちら側の世界のことを頑張ったからね」

あちら側って、現実世界のことかな。そうだよね。

D「本当は、もっと沢山こちら側の世界に連れてきたかったのだけど、それは、今の君が望む幸せとは遠ざかることになるからね」

幻視を見すぎるのは負担になるって言ってたから、そのことかな。心配してくれているんだね。

私「ありがとう。Dの楽園は綺麗だね」

D「君の王国でもあるんだよ」

私「王国・・・」

そういえば、以前この静謐の楽園を見せてくれたときも、王国だって言ってたよね。(詳細は過去記事「世界一美しい薔薇の花」「誘惑」参照)
国とか作った覚え無いんだけどな。国民(?)も見当たらないし。これは、ダイブ世界っていうものとは違うんだよね?だってDはダイブなんて知らないって言ってたもんね。

私「これはダイブ世界なの?どうして王国なの?」

どこが王国なんだろ。綺麗な薔薇で埋め尽くされているから、楽園っていうのはわかるんだけど・・・

D「ダイブ世界?」

Dは首をかしげました。あ、やっぱり違うんだ。

D「ここは僕の守る静謐の楽園で、君の王国だよ。城もあるよ。ほら、ごらん」

私「城!?」

Dの指さす方向を見ると、たしかに城らしきものが遠くに見えます。

私(で、でも城があれば王国ってわけじゃないよね!?)

D「ね」

私「う、うん・・・」

でもDが嬉しそうなので、私はその疑問を口には出さずに、心の中にしまいました。

Dが私のすぐ前まで歩いてきました。Dに踏まれた薔薇はカサリと小さな音を立てますが、すぐに元気な状態にもどります。

私「ここの薔薇は、強いのね。ときどきDがくれる幻の薔薇とは違うみたい」

あれは本当にはかなくて、すぐに光の粒になって消えちゃうのに。(詳細は過去記事「口付け」参照)

D「同じ薔薇だよ。ただ、こちらの世界で咲いているからね」

現実世界に持ち帰ると、すぐ消えちゃうってことかな。じゃあ、あのはかない幻の薔薇は、Dが楽園から摘んできてくれた薔薇だったんだね。

D「・・・薔薇を買いにいくかい?久々に、君の部屋に飾る薔薇をね。僕が選んであげるよ」

現実世界では、私は常に自分の部屋に切り花を飾っていました。でも、Dに初めて選んでもらって買った薔薇が枯れてしまって以来、私は部屋に飾るお花を買っていないのです。(詳細は過去記事「めそめそ」参照)

私「うん!!」

でも、もう新しい薔薇を買っても平気なのです。古い薔薇から新しい薔薇に買いかえるように、私があの職場を離れることになり新しい人が入ったとしても、もう私は大丈夫なのです。

私「Dが選んでくれるなんて嬉しいな~」

D「任せておくれ。君に一番似合う薔薇を選ぶよ」

楽園に霞がかかってぼんやりとし、さらさらと風に吹かれた花びらが舞うように、霞は風に消えて、見慣れた自分の部屋になりました。

私「一番綺麗な薔薇がいいな!!」

なぜかくすくす笑って、Dはうなずきました。

D「仰せの通りに、僕の女王陛下」

暴走(私の)

23日の話です。私の大好きな職場は、私が最も失敗している場所でもあります。そして、今回も大変な失敗をしてしまったのです。

連休明けに自分の病気を職場に伝えてから、私は変に気を張っていました。病気だから仕事の能率が下がった、と思われたくなかったからです。そんな風に思われたら、新しい人材と交代させられるのではないかと思って、怖くて怖くて。

職場を追われるのではないかという不安は、過去記事「めそめそ」にも書いた通りなのですが、この不安については頻繁にDから指摘されていたことでした。

D「不安に思っていることや、自分の心情を、そのまま会社の皆に伝えるといいよ」

私「できるわけないでしょ。ビジネスだもん。私的な不安をぶつけていいところじゃないの。前にDに指摘されたとき(詳細は過去記事「命日」参照)とは違って、私は不安から逃げてるわけじゃなくて、ちゃんと不安と向かい合って戦ってるもん」

D「そのことは、わかっているよ。しかし、今回の問題は、前回とはまた少し違う種類のものだよ。君の心の中だけで整理を付ければ良いだけの問題ではなく、会社の皆と折り合いを付けるべき問題なのさ」

私「それはわかってるの。でも、会社のみんなと折り合いを付ける上で、私の心情を話すなんて、逆に迷惑になるのよ」

度重なるDからの忠告に、私は首を振り続けていました。だって会社から求められるのは実力と結果です。職場の人達とはビジネスライクな戦友だからこそ、お互いの人柄や力を信用し合えて、重要な仕事も共有して任せ合えるし、仕事や人間関係が円滑に進んでいるのです。仕事に対しては常にシビアに考えなくてはいけない。そのためには、甘えや怠惰は禁物です。特に、自分の仕事に対する無責任と、誰かに頼って寄りかかることと、人任せはいけない。それは、ビジネスにおいて最も信用を失う行為です。
自分の仕事に責任を持って、自らの力を遺憾なく発揮し邁進する。それが職場における私の義務であり、私はそれを気に入っているのです。



上司「・・・というわけだから、できれば早めに仕上げてくれ」

私「わかりました」

早めに、か。それなら今日は残業して、持ち出せない部分だけ社内で片付けて、それ以外は家でやれば明日までには仕上がるよね。

私「では、明日出します」

上司「ええ!?いや、別にそこまで急がなくていいよ。てか、できるの?」

私「はい。私は、睡眠時間が短くても平気な体質なので。自宅に持ち帰れば可能です」

上司は眉間にしわを寄せて、う~ん・・・と唸ってから、私をじっと見て言いました。

上司「あ~、早さも必要だけど、正確さが重要なのもわかってるだろ?無理に短時間でやると間違えやすいから、今回はさあ」

私「私が更正確認しないまま提出したことがありましたか?」

ピリッと、空気が張り詰めました。

Y「・・・急ぎのものでしたら、僕が手伝いましょうか?」

後ろから、Y先輩が声をかけてくれました。

私「ありがとうございます。ですが、平気です」

上司「さゆ、俺は別に、お前の仕事の正確さを疑ったわけじゃないぞ」

私「はい。失礼な発言をして申し訳ありませんでした」

上司に頭を下げてデスクに戻る私に、上司もY先輩も何か言いたそうにしていました。



その後、別の部署から私のところに来る必要品が遅れるという連絡がありました。それはさっき上司から指示された仕事とは別件で使うものなのですが、遅れが発生すると私のほうに手間が発生することになるものなのです。

私「ごめんS、私のほうが遅れるから、少し待っててくれる?」

私のその仕事とSの仕事は同時進行で行うものなので、私のほうが遅延するとSも待たなくてはいけなくなります。

S「大丈夫ですよ、僕がやっておきますから」

別の部署で遅れが発生したことで私に発生した手間を、Sが片付けてくれると言うのです。

S「さゆ先輩、さっき上司さんから任されていた仕事もあるじゃないですか。そっちのほうが急ぎなんですよね?僕がこれをやっている間、その仕事をほうをやって頂いて大丈夫ですよ。残業になっちゃうと大変じゃないですか」

Sは笑ってそう言ってくれましたが、私は首を振りました。

私「Sにやらせるなんて出来ないよ。これは私の仕事だから。Sだって自分の仕事があるじゃない」

S「別に、お互い様ですし。いつも皆さんそうしてるじゃないですか」

私「いや、私が一人でやるよ」

S「こういうときくらい、周囲に頼ってくださっても」

私「こういうときって・・・私が病気だからって、そのせいで仕事を人に頼るとかしたくないのよ」

S「あ、いえ、病気のときって意味じゃなくて、忙しいときっていう意味です」

私「あっ、そっか、ごめん。でも、今は仕事のことで誰にも甘えたくないの」

病気だからこそ仕事はキチッとやりたいんだ。病気に甘えたくないわけよ。私は病気と戦うつもりだからさ。

ていうか、病気だからこそ、誰かに甘えるとか、誰かに頼るとかできないわけよ。それに私、人から甘えられたり頼られたりするのは好きだけど、自分が人に甘えて頼るのは気持ち悪いの。何故かって、そんなことしたらここまで生きてこれなかったからよ。お父さんの浮気でお母さんが自殺してから、すぐお父さんが再婚して、それから誰も頼る相手なんていなかった。その中で一人っきりでやってきたの。こつこつアルバイトしながら睡眠時間削って一生懸命勉強してさ。正直、ショートスリーパーじゃなかったら人生詰んでた。

今の仕事に就くまで苦しかった。お金も無かった。まあ、なんでそんなにお金が無かったかって、自業自得なんだけどね。私がお父さんのもとを飛び出して、金も叩き返したからなのよ。ネクタイ引っ張って頭下げさせて、その上に金をバラまいてやったんだ。浮気した加害者のくせに、妻に自殺された被害者気取りのオボッチャマが、自分の親から渡された金をそのまま渡してきた紙キレなんて、いくら生活に苦しくても受け取るもんかと思った。もはや私のプライドに関わる問題だった。あんな馬鹿馬鹿しい甘えんボッチャマの飼い犬になるくらいなら、野良犬として自分で戦って餌を取るほうが、その結果戦って死のうが飢え死にしようがまだマシだと思った。

世界で、私が嫌っている人間はお父さんだけ。何故って、お父さんに対する強い嫌悪感に比べれば、それ以上の嫌悪感なんて無いからよ。

私「平気。このくらい、一人で出来るよ」

病気になって仕事ができなくなった、なんて評価されたら、この職場を追われちゃうもん。それだけはやだ。仕事できるところを見せなきゃ。病気のせいで仕事できないなんて思われて、職場を追われることが、私にとってはすごく・・・一番怖いの。大好きな職場なんだもん・・・

S「・・・一人で、一人でって、僕達の仕事は一人で出来る類のものだと思ってるんですか?先輩は、自分の仕事を自分一人の力だけでやってきたと思ってるんですか?」

いつもふわふわした表情と声のSが、突然、大きな声でハッキリと言いました。

S「一人で完結できる類の仕事じゃないから、周囲を見て動けって、周囲と協力し合えって、それは自分のためじゃなく全体のためだって、以前そうおっしゃってましたよね」

それまで会話をしていたKと他部署の人も話すのをやめて、驚いたようにこっちを見ています。

S「先輩がどんな病気になっても、僕は態度を変えるつもりはありませんけど、先輩がそういう考え方になるなら、僕は考えさせてもらいます。病気になっても、病気になる前と同じように仕事を続けたいと思われていらっしゃるなら、是非先輩には病気になる前と同じ考え方で働いて頂きたいです」

周囲は、水をうったように静まりかえりました。

私「・・・ごめんなさい。私が間違ってたよ。教えてくれてありがとう」

一人でピリピリして、一人で勝手に不安になって、自分一人で仕事してるような気になって、周囲に迷惑をかけて・・・なんて傲慢な。

私「病気のせいで仕事できないなんて思われたら、ここにいられなくなると思ったら怖くて、それで自分勝手に一人で突っ走ってたの」

Sの手が緊張でふるふる震えていたので、その手を私の両手でぎゅっと握ってみました。

私「そのことに、自分では気付けなかったの。教えてくれて、本当にありがとう」

S「いえ、すみませんでした」

Sは、ぎこちなく苦笑いをしました。

S「・・・緊張しました。先輩にこんな偉そうなこと言うの初めてなので」

そうだよね、そうだよn・・・ん・・・?

・・・先輩にこんな偉そうなこと言うの初めてなので?

『うわあ・・・先輩って変な人ですね・・・』(詳細は過去記事「職場」参照)
『あれ?上司さん、ちょっと髪が薄くなりました?』(詳細は過去記事「職場」参照)
『ここって、本当にインド人がやってるインド料理店なんでしょうかね?』(詳細は過去記事「クリスマス」参照)

私の頭の中に、今までSが発言してきた数々の勇気ある言葉が浮かんできました。なんか・・・結構・・・言ってるんじゃないかな?今までブログに書いてきた内容だけでも、これだけ言ってるし・・・・

私「や、うん、とにかく、本当にありがとう」

S「いえ、失礼なことを言って申し訳ありませんでした」

私「とんでもない、助かったよ~。お陰でもう大丈夫・・・って、不安材料が一つだけ残るんだけど・・・」

S「何ですか?」

私「あの・・・さっき私がSの手を握ったのって、セクハラになっちゃう!?S、私を訴える!?」

私が挙動不審な動きをしながら言うと、Sはぽかんとした顔になりました。

S「・・・は?」

私「訴えないでください!!お願いします!!」

ぽかんとしたSと、手を合わせて頭を深々と下げた私に向かって、笑い声と拍手が起きました。
Sが私を訴えることはないだろうし、私もそれをわかっています。でもほら、ピリッと緊張させちゃった職場の空気を和ませたほうがいいかなって思って・・・
周囲からの拍手と笑い声を聞いたSは、そのことを察してくれたらしく、さあーどうしましょうかねえ?とノッてくれました。

やっぱり、みんなに気を遣わせてたんだろうな。私が病気だからじゃなくて、私が自分の病気にコンプレックスを抱いて、勝手に過剰反応してピリピリしていたせいで。

私(あわわ、思い出すと冷や汗が・・・本当にごめんなさい!!)

私は心の中で皆に向かって、米つきバッタのようにすごい勢いで何度も土下座しました。

私、連休明けから、上司に自分の病気のこと話してから、ずっと仕事に余裕無かったんだ。一人でやらなきゃってピリピリしてたの。職場を追われないためには、誰にも頼らないで仕事できるところを見せなきゃって。でも、私はいつだって一人で仕事していたわけじゃないのにね。こういうときこそ、周囲との調和を大切にして、周囲に感謝しながら仕事しなきゃね。

それにね、さっきは一人で生きてきたなんて偉そうなこと言ったけど、助けてくれた人もいっぱいいたんだよ。学校の先生とか、友達とか、お父さんのお姉さんとかさ。私が自分のことを一人ぼっちだと思っていたあの頃から既にもう、私は一人で生きてきたわけじゃないのにね。



上司「さゆ、晩飯おごってやるよ」

私「ありがとうございます!!」

K「焼肉が良いです」

S「僕は何でも」

Y「あなたがたは・・・今回は××さん(私の苗字)に店を選ばせてあげるべきでは?」

えっ、良いんですか?わあー、嬉しいな。

私「じゃあ、お蕎麦屋さんがいいです」

で、そのお蕎麦屋さんで竜田揚げを頼んだ際に、Sとレモンの奪い合いになったわけです。(詳細は過去記事「申し訳ございません!!」参照)

私「さっきすごく良いこと言ってたくせに!!今はレモンを独り占めするなんて!!」

S「先輩かけすぎなんですよ。さっきも言った通り、周囲の迷惑を考えてください」

Y「もう一つレモン頼んどきますから、喧嘩しないように」

呆れたように言いながら、Y先輩がレモンを頼んでくれました。良い人です、今回の件では、かなりフォローしてくれました。なのに23日の記事にY先輩のことだけ全く書いてないっていう・・・今回影が薄かったKのことすら書いてあるのに。なんでだ、私・・・!!

お伽噺(2)「世界一美しい薔薇の花」編

ひどいですね、前回の記事は・・・大の大人がレモンレモンって、恥ずかしい!!酔うとこれだからいけない・・・そんなにレモンが欲しかったなら、もうお前はレモン丸かじりでもしてろって罵倒してやってください!!

あんまりなので、昨日眠る直前にDが話してくれたお伽噺を書きます。眠る前や、暇なときなどに、Dにお願いするとお伽噺を話してくれるのです。

でも、Dの話してくれるお伽噺は少し変わっているのです。Dのお伽噺は、アンデルセン物語やグリム童話やイソップ物語や、その他世界各地のお伽噺に似た話も多いのですが、どこか少し違うストーリーに変えられているのです。



私「・・・ねえ、D。何かお話して」

触覚の訓練が終わり、うっとりとベッドに横になっている私は、Dに話しかけてみました。

お酒が入っているせいもありますが、触覚の訓練が終わった後は、夢見心地のような気分でふわふわするのです。何故って、Dがしてくれる触覚の訓練は気持ち良いからです。

D「いいよ。どんな話をお望みだい?」

ふわふわする頭に、Dの声が心地良く響きます。

私「じゃあ・・・お伽噺で」

D「お伽噺だね」



さゆは、世界一美しい薔薇の花を見たことがあるかい。今日はその話をしてあげよう。

遥か昔、女王陛下の統治する王国があった。花が好きな彼女の王国は、常に花であふれていた。中でも彼女が好んだ薔薇の花は、いたるところに咲いて甘い香りをさせていた。

ところがある日、女王陛下は死に至る病に侵されてしまった。彼女は、最後の願いとして、永遠の眠りにつく前に、美しい薔薇が見たいと言った。

私「その話、聞いたことあるかも。たしか彼女の病気を治すには、世界一美しい薔薇が必要で・・・本物の薔薇じゃなかったんだよね、キリストが皆のために流した赤い血の薔薇だったかな、彼女の病気を治したのは」

アンデルセン童話だったかな。たしか『世界一美しい薔薇の花』っていう・・・なんか、キリスト教っぽい話だと思ったな。キリストからの愛と、キリストへの愛によって救われる、的な・・・

D「世界一美しい薔薇を見せても、病気は治らないよ」

私「あれ?」

病気が治ってめでたしめでたし、神の愛ってすごいね、みたいな話だった気がするんだけどな。でも、Dのお伽噺はいつも少し変わってるもんね。

D「美しい薔薇が見たいと言った彼女のために、王国の住人達は、薔薇を探し始めた」

ところが王国の主である女王陛下が床についたのと同時に、王国には冬が来て、薔薇は全て枯れてしまった。それでも住人はあきらめず、あるものは薔薇の形をした雪の結晶を、あるものは氷でできた薔薇を、それぞれ自分が世界一美しいと思う薔薇を、次々に女王陛下に見せに行こうとした。しかし、誰も彼女に薔薇を渡すことはできなかった。それらの薔薇が女王陛下の体を冷やすことを危惧した従僕によって、全員が追い払われてしまったからね。

従僕は考えた。この凍える王国で温かい薔薇を用意するには、どうしたらいいのか。そして思いついたのさ。世界一美しく温かい薔薇を、自分で作ればいいのだと。そう、自らの血で

私「ちょっと待ったー!!」

私はすごい勢いでストップをかけました。なんか、もう話の続きがわかるもん!!

D「どうしたんだい」

私「そういう自己犠牲的な、可哀想なお話は変えちゃおう。従僕のキスで病気が治ることにしよう」

Dは首を横に振りました。

D「キスをしても病気は治らないよ」

私「なんでそこだけ現実的なの!?お伽噺でしょこれ!!」

なんか、酔いもさめてきた。目もさえてきた。

D「従僕の血で作られた温かい薔薇の海に囲まれて、女王陛下は永遠の幸せな眠りについた。従僕はその傍らで、やはり永遠の幸せな眠りについたのさ」

やっぱり!!やっぱりそういうオチか・・・

私「もうそういう、従僕がかわいそうなお伽噺はやめてあげて・・・」

Dは、不思議そうに首をかしげました。

D「従僕は、自分の大切な女王陛下に薔薇を献上できたから幸せだよ?」

またか・・・

私「どうしたらいいんだろう。こういうときは・・・」

お酒が入っているせいなのか、うまく頭が回らないよ。

私「・・・じゃあさ、そのお伽噺の女王陛下が従僕にキスしてあげられなかった分、私がDにキスしてあげるね」

Dは、にーっと嬉しそうに口元を引き上げました。

私「ベッドの上においで」

いそいそとベッドの上に上がってくるDが可愛かったので、もふっと押し倒していっぱいキスしてみました。

申し訳ございません!!

さっき帰ってきました。もう0時過ぎて、日付が回ってしまっているんですけど、23日の記事として書きます。

今日は、うちの課のみんなで夕食を食べてきたのです。とっても楽しかったのですが、唐揚げを頼むと必ずSがレモンを独占してしまいます。今回もそうでした。Sは、唐揚げにはレモンが必須の人です。上司はレモンを使わない人で、Kはどっちでも良いそうですが、私はSと同じくレモンを絞って食べる派です。私が自分の唐揚げにレモンをかけようとすると、先輩はかけすぎますから駄目ですって言って、レモンを渡してくれません。僕の分が無くなっちゃうので、先輩の分は僕が調整してかけますからって、私の取り皿なのに、Sにレモンをかけてもらわないといけません。唐揚げ取るたびに、わざわざSに。レモンは自分で調整してかけたいです。もう今度からレモン持参しようかな。マイ・レモンを。

今日は、連休中に変えてみたDの服についての記事を書きたかったんですが、微妙に酔っているので、明日の(もう日付まわっているので今日なんですけど)24日に書きます・・・申し訳ございません!!
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