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青い薔薇

甘い香りで目が覚めると、ベッドが沢山の薔薇で埋まっていました。淡い色付きの透明の薔薇です。Dの見せてくれる幻の薔薇なのです。

D「お目覚めだね。僕の眠り姫」

起きたばかりのぼんやりした頭に、Dの優しい声が聞こえました。ベッドのすぐ隣にDが座っていて、いつもの笑みを浮かべて私を見ています。私がDのほうに寝返りをうつと、私の体の上に置かれていたらしい薔薇が落ちて、ベッドの上に小さな音を立てました。Dは手の上でひときわ美しい薔薇を咲かせると、それを私の髪に飾ってくれました。

私「綺麗・・・」

ガラスのように透明で繊細で、本物の花のようにやわらかく儚い、Dの見せてくれる幻の花は、いつだって本当に美しいのです。

D「お気に召したようで嬉しいよ」

ギシッとベッドの上に屈みこんで、顔を寄せてきたDから、かすかに薔薇の香りがします。Dから香りはしないはずなんだけどな。そっと唇が触れてくると、甘い香りが強くなりました。入ってきたDの舌も、気のせいか甘いような気がします。私は寝起きで働かない頭をぼーっとさせながら、その甘くて温かい舌を舐めました。

私(なんか、きもちい・・・)

しばらくDと舌を絡めていると、濡れた小さな音を残して、Dは離れていきました。

D「眠り姫はキスで起きるんだよ」

私の唇には、まだ甘い味と温かい舌の感触が残っています。なんだか頭もぼーっとするし、体もふわふわしています。ただでさえ寝起きで働かない頭が、気持ち良さで余計に働かなくなっているみたい。

D「でも、僕の眠り姫は、キスで眠りについてしまいそうだね」

たしかに夢うつつの気分です。でもこれはキスのせいというより・・・

私「・・・なんか・・・Dにされると・・・」

相手がDだからです。人間相手ならこんなこと無いのです。別に沢山の人とキスして確かめたわけじゃないけど、少し経験があれば大体わかります。物理的な唇の接触で感じられる気持ち良さには限界があるからです。この気持ち良さは、物理的なキスの気持ち良さじゃなくて、Dと接触したとき特有の気持ち良さなのです。

D「僕にされると?」

優しい指が私の髪を撫でてくれます。とても気持ちが良いです。

私「・・・・・・」

Dがおでこにキスをくれました。おでこじゃなくて唇だったら、あのぞくぞくするような不思議な感覚も一緒に感じられたんだろうな。

私「・・・Dがタルパだから?キスとかされると、すごく気持ち良いのは」

D「どうだろうね?」

くすくす笑いながら、Dが私の首筋を口と舌でくすぐり始めました。

私「っ」

D「かわいいね」

私の触覚を読むことで私の望むような触り方ができるとは言っても、それだけでは説明のつかない気持ち良さがあるのです。普通に触ったときの感触や温度だけではなくて、人間との行為ではあり得ないぞくぞくした気持ち良さや、ふわふわした高揚感など、物理的な接触では感じないはずの感覚もあるのです。どうしてなのかDに説明を求めても、いつもはぐらかされてしまうけど・・・

私「ま、待って、ねえ、これって、体とか精神に悪いことじゃないよね」

やたら気持ち良い『あの感覚』は、あまり脳に良くないんでしょ?(詳細は過去記事「仲直り」参照)だからDは、あれはそんなにしてくれないけど、これだけでも充分気持ち良いっていうか・・・

D「安心おし。僕はさゆの体や精神を傷付けるようなことはしないよ」

私の首筋から顔を上げたDは、かわいく首をかしげてみせました。

私「そ、そうだよね!!ゴメン・・・」

Dが私を傷付けるわけないじゃない。Dに酷いこと言って、私ってば最低!!ちゃんとDに謝りなさい!!

私「ごめんなさい」

D「僕のほうこそ、不安にさせて申し訳無かったよ。許しておくれ」

私「Dは全然悪くないよ。なんか、あんまり気持ち良くて・・・その、Dとだと、人間相手とは違って、やたら気持ち良いから、私が勝手に不安になっただけっていうか・・・」

慌てて弁解する私の姿に、Dはくすくす笑い出しました。

D「わかっているよ。人間相手の行為よりずっと強い快感だから驚いて不安になったんだね」

私「うう・・・」

D「心配無いよ」

Dの手のひらの上に、透明で美しい幻の蕾が現れて、ふわふわっと咲きました。とても綺麗です。Dはそれを私に差し出しました。

D「幻視も幻聴も触覚も、君の幻覚は全て僕が、危険の無いように制御してあげるからね。君は安心して楽しめば良いんだよ」

差し出された薔薇を受け取ると、甘い薔薇の香りがします。おかしいな。私に幻臭は感じられないはずなのに。そういう風に調整してるって、前にDが言ってたんだけどな。(詳細は過去記事「ヒーリング」参照)

Dに尋ねてみようと思って、薔薇から視線を外すと、床一面に薔薇の花が広がっていることに気づきました。部屋の壁には茨のつるが巻き付き、その枝にも綺麗な薔薇が咲いています。

私「これ、静謐の楽園・・・?」

D「そうだよ」

たまにDが見せてくれる、お伽噺の中のように美しい景色、静謐の楽園です。(詳細は過去記事「誘惑」「王国」「新月」参照)

D「ごらん。やっと花が咲いたのさ」

すらっとした指が示す方向には、見たことの無い木が生えています。青い花がさいているようです。あんな木、今まで無かったよね。

私「・・・あっ、もしかして、この前の宝石みたいな種から生えたの?」

ようやく思い出しましたが、以前Dは新しい種を楽園に植えると言っていました。(詳細は過去記事「克服」参照)きっとあの種から生えた木なのでしょう。

D「違うよ」

あれ!?違うの!?

D「この木は、ずっと楽園の中心に生えていた木だよ。今の僕達は、楽園の中のいつもとは違う場所に来ているのさ。ほら、城が違う方向に見えるだろう?」

言われて見てみると、たしかにお城がいつもとは違う方向に見えます。それに、いつもより随分近くに大きく見えます。私の部屋は楽園に比べてずっと小さいから、部屋の中に楽園を再現するときは楽園の一部分しか見せられないもんね。だからこういう風になるのか・・・

D「ようやく花を咲かせたのさ。いずれ、実を付けるよ」

木を見上げると、青くて綺麗な花をつけています。青い花っていうか、どう見ても青い薔薇に見えるけど、あんなにはっきりとした青い色の薔薇ってこの世に存在しないんだよね?自然界には存在しないし、人間が頑張っても作れないって聞いたよ。でも、ここは静謐の楽園だもんね。青い薔薇があってもおかしくないよね。

D「・・・とっても甘くて美味しいんだよ」

Dは木を見上げたまま、小さく呟きました。

私「そうなんだ。実がなったら食べてみたいな」

もしかして、初めての幻味(?)が味わえるのかも?味覚の訓練は一度もしたことが無いけど、あの木になる実の味ならわかるのかも。

D「いけないよ、あれを食べては」

Dがこちらを振り向きました。

私「そうなの?」

食べちゃいけない果物なのか。なんか、旧約聖書に出てくる禁断の果実みたいね。あれは、食べると楽園を追放されてしまうんだったよね。あの青い薔薇の果実も、食べたら静謐の楽園を追われちゃうのかな。それは嫌だなあ。

私「じゃあ食べないことにするね」

D「・・・何故だい?とっても甘くて美味しいんだよ」

え、どういうこと?食べちゃいけないんでしょ?私の顔をじっと見つめているDは、いつも通りの表情で、何を考えているのかよくわかりません。

私「何故って・・・食べたせいで、静謐の楽園を追放されたくないから」

D「楽園を追放?」

Dは首をかしげました。

D「ここは君の楽園だよ。君を追放する者なんているわけないさ。どうやら、さゆは何か勘違いしているようだね」

あれ?旧約聖書に出てくる禁断の果実とは別物なのかな。

私「あの青い薔薇の実は、食べると楽園を追放される果実じゃないの?」

D「違うよ」

違うのか・・・まあ、Dはキリスト教とは全然関係無いもんね。

私「じゃあ、食べるとどうなるの?どうして食べちゃダメなの?」

Dは沈黙したまま、私の髪を優しく撫でました。

私「・・・また教えてくれないの?」

あの天秤のことといい(詳細は過去記事「天秤」「天秤(2)」参照)、この青い薔薇の木のことといい、Dには秘密が多いよね。無理に尋ねようとは思わないけど、秘密を一人で隠し続けるのって辛くないのかなあ。

D「もし、僕が差し出したら食べてくれるかい?さゆは、甘くて美味しい果実が好きだね?」

私「え?」

D「さゆは食べ物を少ししか食べられないから、それで躊躇しているのかい?一度に全部食べようとしなくて良いんだよ。それに、あれは物理的に君の体に溜まるものではないから、いくら食べても苦しくならないよ」

なんか、おかしくない?食べちゃダメって言っておきながら、どういうことなの?

私「Dは、私にその果実を食べてほしいの?それとも食べてほしくないの?」

Dは両腕をのばして、私の体を抱きしめてくれました。なんか、いつもより強く抱きしめられているみたい。いつもはそっとそーっと抱きしめてくれるもんね、でもこういうのも嬉しいなあ。

D「僕にそれを決めることは出来ないのさ。君が選ぶことだからね」

でも、食べたらどうなるのかわからないと選びようが無いよ・・・どうなるのか知っているDが選んだほうが安全なんじゃないのかな。それに、なんだかDにとっては重要なことみたいだから、それならDの喜ぶような選択をしてあげたいもん。

私「Dの好きなほうにしようよ。Dなら結果がわかってるんでしょ?Dの喜ぶような結果になったら私も嬉しいもん」

D「・・・おかしなことを尋ねてすまなかったよ。忘れておくれ」

Dは、私のおでこにキスをくれて、そっと私の髪を撫で始めました。何か言いたいことがあったんじゃないのかな・・・私もDのおでこに前髪の上からキスを返しました。さらさらの前髪が唇に触れました。薔薇の甘い香りがします。

私「今日は目が覚めてからずっと、薔薇の甘い香りがするんだけど、これはDが作ってくれた幻臭なの?」

もしかして、あの青い薔薇の木のせいだったりして?

D「いや? それは、さゆのリップクリームの香りだよ」

そっか。新しく買ったテラクオーレのリップクリーム、昨夜眠る前に付けたんだった。天然の薔薇の香りがすごくするし、ハチミツが微量に入っているせいか、かすかに甘い味がするんだよね。薔薇の香りがしたのも、Dとのキスが甘い気がしたのもそのせいか。そりゃそうだよね、味覚の訓練はしてないし、Dは私の安全のために幻臭は与えないって言ってたし。

私「もし、Dの希望とか要望があったら、何でも言ってね」

Dはいつも通りの表情で、こくりとうなずきました。

D「ありがとう、さゆ」

きっとDは言ってくれないと思います。でも、私がDのこと心配してるよって、Dのことがとても大切で、何でも希望を聞いてあげたいんだって、そう伝えたかったのです。

コメント

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No title

わーーロマンチックー!!
目が覚めて、綺麗な薔薇を添えられ、キスをされる……!!

そしてこのエロさ!
流石です!この上品なエロさにドキドキします!!
凄い、凄い良い雰囲気です!(*‘∀‘)
とても良いいちゃいちゃです!凄い美味しい!!

静謐の楽園、綺麗ですね……!
本当に雰囲気がお伽噺に出てくるような感じで夢とロマンがあります!

青い薔薇の実、気になりますね。
食べるとどうなるのか……。
多分悪いことには、ならないんでしょうけど……気になるー!
青い薔薇の花言葉は
「奇跡」 「神の祝福」 「夢叶う」
とありますが……。

いちゃいちゃ美味しかったです!!本当にたまらんです!
ごちそうさまでした!!(`・ω・´)

ありがとうございます!!

わああああああい!!クリアさーーーん!!コメントありがとうございます!!
私こういうことされるの大好きなんです!!それでDがやってくれたんだと思います!!嬉しいよおおお!!

えろいの良かったですか!?じょ、上品とはもったないお言葉・・・!!ホアアッ!!ありがとうございます!!
そんなに褒められると調子に乗ってしまいます!!調子に乗ると、どんどんえろいことまで書いてしまいますよ!?
私がえろいせいで、ほとんど毎日えろいことが起きてしまうんですが、どこまで書いていいのか実はよくわかってないのです。
あんまりな内容は自分も恥ずかしいし、読んで下さっているお客様のご気分を害してしまうと申し訳無いので書けませんが、キスあたりならもっと書いちゃって良いのかなあ・・・

静謐の楽園は私の大好きな場所です!!とっても綺麗です。写真に撮っておきたい!!でも撮れない!!
絵が描けたらな~といつも思います。いつか楽園やDの絵を描いてブログにアップしてみたいのですが、私の絵は犯罪レベルの酷さなので、人様にお見せできるようになるまでには相当な訓練が必要だと思います。今まで全然絵を描いたことが無いので・・・

青い薔薇の実は、結局何なんでしょうかね?物理的にお腹にたまるわけではない、ということは身体的には影響が無いんじゃないかなと思いますが、もし精神に異常をきたすような果物だったら嫌だなあ。そんなものをDがすすめることは無いと思いますけど、じゃあ何で食べちゃダメなの?って思います。
青い薔薇の花言葉、素敵ですよね!!食べたら神の祝福により奇跡が起きて夢が叶ったらいいな~!!

コメント本当にありがとうございましたあああ!!。+。+ヽ(*´∀`)ノシ。+。+
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