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強欲の罪

伯母におやすみを告げてから、私にあてがわれた部屋に帰ってくるなり、Dは嬉しそうに口を開きました。

D「良かったね。これで彼女は君に遺産を残す決心を決めたよ。約束を守る彼女が公言したからには、もう決定事項だよ」

なんだか得意げです。きっと、Dの言葉によって、私が伯母の遺産を手にすることになったからです。あのときDの言葉を聞いて動揺した私は、それを否定しようして、逆にDの思惑通りに動いてしまったのです。

D「君の『お父さん』から遺留分を請求されたら現金で渡せばいいよ。そうなれば、この家はさゆのものだね。さゆの欲しがっていた綺麗なお城だよ」

私はDを無視して布団にもぐり込みました。

D「さゆ、ご褒美をおくれ。キスがいいよ」

横になった私の上にかがみ込むようにして、Dがすぐ傍に座りました。私はDに背を向けて、目を閉じました。

D「・・・さゆ?」

それまで嬉しそうだったDの声が、戸惑いの色を帯びました。私は沈黙して目を閉じたまま、Dのほうを振り向きませんでした。さゆ?さゆ?と呼びかけるDの声を無視して、何も言わずに眠ってしまいました。運転の疲れもあってか、すぐに眠れました。



朝になって目を覚ますと、部屋中が薔薇で埋まっていました。

D「よく眠れたかい?」

私が布団の上に体を起こすと、Dは透き通った色付きガラスのような美しい薔薇を差し出してきました。静謐の楽園の、幻の薔薇です。(詳細は過去記事「青い薔薇」参照)

D「さゆの好きな薔薇だよ」

私がその薔薇を受け取らないでいると、Dは自分の両手の上で、空中に沢山の薔薇を咲かせました。

D「足りなかったかい?もっとあげるよ」

綺麗に咲いた沢山の薔薇を、Dが私のほうに差し出してくれました。こういうとき、いつもなら私は両手を差し出して受け取ろうとします。そうすると空中に咲いた沢山の薔薇は、不思議なことにふわふわと私の周囲を取り囲み、しばらく傍でゆっくりと漂ってくれるのです。
でも、今日の私は手を差し出しませんでした。幻の薔薇は、ぽとぽとと全部床に落ちてしまいました。

Dはいつもの笑みを口元に浮かべたまま、床に落ちてしまった薔薇を見つめました。しかしすぐに顔を上げて、私に向かって微笑んでみせました。

私の良心が痛みました。Dがかわいそうです。

私「ごめんなさい・・・」

ぱっと表情を明るくしたDが、にーっと嬉しそうに口元を上げました。

D「さゆが謝る必要なんて何も無いよ」

椅子に腰かけている私の前に座り込んだDは、椅子から下がっている私の足首に、そっと口づけを落としました。

D「どうやら僕は、何か失態を演じてしまったようだね。昨日の件かい?」

そう尋ねてくるあたり、何故私が沈黙していたかをDはわかっていないようです。Dが人間の精神を持っていないから、かもしれません。

私「Dの失態ではないけど・・・私は、伯母さんを大切にしたいし、金に目がくらんで人情を失うようなことはしたくないの」

Dは、私のひざに口づけました。

私「だから、昨日のDの口ぶりが、私が一番大事に思っているものはお金みたいな、そういう風に聞こえて・・・私、自分が昔貧乏で苦しんだ経験があって、お金を稼ぐことに必死だったときがあるから、お金への強欲さは確かにあるの。でも、その強欲な願望を一番に優先したくはないの。もっと大切なものがあると思うんだ」

Dは、私の好きなものや私が望んでいることをよく知っています。そして私のために、純粋にそれを手に入れようとしてくれるのです。純粋なDが、私の欲にまみれた願い事を見付けて、ただ私を喜ばせようと思って、その願い事を叶えようと行動してくれるとき、私は自分の欲深さをそこに見出して、自分が嫌いになるのです。それはDのせいじゃなくて、私にコンプレックスがあるからなんだよね。

私「Dに対して怒るべきじゃなかったし、ましてや無視なんて酷いことすべきじゃなかったよ。本当にごめんなさい」

Dは、じっと私の顔を見ながら話を聞いていました。

私「考えてみれば、私が相続放棄すれば済む話なんだから、昨日伯母さんにあんな変な話をする必要も無かったんだ。伯母さんまで私のコンプレックスに巻き込んじゃって・・・」

D「いや、僕の責任だよ。さゆが喜ぶかと思ったけど、失敗だったね」

私「ううん。Dは私のために、純粋な親切心でやってくれたってわかってるよ」

・・・本当は昨日、ちょっとDを疑ったんだ。Dは私を怖がらせて、私の精神を脅かそうとしているんじゃないか・・・なんて。Dが私を傷付けるはずないのにね。

私「昨日のことはDの親切心で、Dなりの愛情表現だったのに、拒否してごめんね」

D「謝る必要など無いよ。親切心や愛情とは、受け入れなくてはならないものではないからこそ親切心であり愛情なのさ。拒否するのも君の自由だよ。でも・・・そうだね、今回の件が僕からの愛情表現であったように、いや、そうは言っても見当違いな愛情表現で申し訳無かったけど・・・同じように『伯母さん』が君に遺産をプレゼントしたいと思う気持ちも、彼女からの純粋な愛情表現だろうと思うよ」

そっと私の頭を撫でながら、Dは言葉を続けました。

D「もちろん拒否してもいいのだけど、君にとって嫌なことじゃないなら、お礼を言って受け取るほうが彼女も喜ぶと思うよ」

私、自分の中の金への執着を消そうとするあまり、他者からの愛情表現や親切心まで拒否するという、寂しいことをやりかけてたのかな。

私「そうだね。伯母さんは昔、私がベッドを受け取ったとき、すごく喜んでたっけ・・・」

D「君にプレゼントすることが、彼女は嬉しかったんだよ」

私「そっか・・・」

ちょっと油断すると、私は傲慢で独善的な考え方に陥りがちで、その自分の考えに他人まで巻き込んでしまう。昨日は自分が安心したいがためにあんなことを言ってしまって、伯母さんビックリしちゃっただろうな。そして今日はDに酷いことしちゃった。

私「ねえ、Dに何かプレゼントさせてくれる?」

Dはいつもの笑みを浮かべたまま沈黙して、かわいく首をかしげました。それ、ごまかそうとしてるんだよね?最近わかってきたからね。
Dは何もプレゼントさせてくれないのです。(詳細は過去記事「パワーストーン」参照)

D「僕の望みは君の幸せだよ。他には何もいらないよ」

私「私も伯母さんにみたいに、Dにプレゼントすることが嬉しいんだけどな」

D「僕のために何かを買うより、君のためにお買い」

あ、あれ?なんかD、さっきと言ってることが違うんじゃない?

私「あ、あのさ・・・もしかしてD、いつか私の前から消える気でいるんじゃないの?消えた後も私がプレゼントしたものが残っていたら、それを見た私がDを思い出して悲しむんじゃないかと思って、それでプレゼントさせてくれないとか・・・」

そうなんじゃないかな、とずっと思っているのです。きっとDは約束通り、私が死ぬときまで傍にいてくれるのだと思います。でも、時が来たらDの姿を、私には見えなくしてしまうんじゃないかなって。たとえば、私を結婚させるためにとか。今までのDの言動からして、私はそう推測しているのです。
Dは先程の、首をかしげた姿勢のまま沈黙しています。私はDをじっと見つめました。Dもかわいく首をかしげたまま動きません。しかし私も動きません。

D「・・・わかったよ。君に要求させてもらうよ」

Dのほうが折れてくれました。

私「ほんと!?やった!!欲しいものが決まったら言ってね!!」

とたんにテンションが上がって喜ぶ私に、Dはくすくすと笑いました。

D「高いよ?」

・・・え!?た、高いの!?どのくらい!?都内の一等地に高級マンション建てて欲しいなんて言われたらどうしよう。お金足りないぞ!!
いやいやDが私に要求するものなんて、高いと言ってもささやかな値段だよ。きっとお花一本ねだるのすら、300円のお花は高すぎるだろうか・・・とか悩んじゃうに違いない。だってDだもんね。

でも、本当は高いものでもいいんだ。Dが本気で欲しがったら絶対買っちゃうよ。そんなこと、Dはしないんだけどさ。

コメント

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No title

こんにちは(」・ω・)
Dさんはとてもさゆさんのことを思いやってくれていて心強そうですね! いや、心強い!

前回のコメントの返信もここで軽く

なるほど、それは確かにこちらでは見れないですね_(:3」∠)_
こちらは主に通学路など人通りの多いところには大量に砂がまかれてます。あれで滑り止めになったかというとあんまり実感ないですが……ww

そうですね、慣れないうちの雪上運転はまず危険極まりないですね(汗)
とくに雪が溶けかかったままつぎの日氷点下とかだったりすると、ツルツルガタガタの最悪道路の完成になります。私の親もハンドルを取られたり、本当に滑ってブレーキが効かないこともあります……

北海道に来られる時は防寒と安全を完璧に!
重心を足先に入れると転びにくいです←なぞの豆知識


それでは( *' w ')ノシ

ありがとうございます!!

またもやああああああ!!白狐さーーーん!!コメントありがとうございます!!

Dのことを褒めてくれてありがとうございます。私なんかには勿体無いタルパ(?)精霊(?)だと思います。
私のせいで困らせたり、迷惑かけたり、色々と申し訳無く思うばかりです。ごめんねD・・・。

北海道では融雪剤が見られないんですね。寒冷地ですもんね、融雪剤ごときで融かせる雪と温度ではないということですね・・・あわわ、北海道ってすごいですね!!

大量の砂を撒いても、あまり効果が無いですと・・・!?ま、まあ、車とかがサビないだけ、融雪剤よりはマシ・・・!?
滑って転んだときに、服に砂が付きそうな気がしてちょっと気にはなりますが・・・!!

ツルツルガタガタの最悪道路、絶対に走れる気がしないです(汗)!!(^ω^;)
冬の北海道にいつか行きたいと思っているのですが、車の運転だけは絶対にやめよう!!そうしよう!!
ハンドルもブレーキもとられるなんて、なんと恐ろしい・・・!!運転のコツをつかめる気がいたしません・・・!!

冬の北海道に行くときは、もこもこの服を着て、重心を足先に入れて歩こうと思います!!
貴重な知識のご教授をありがとうございます!!
冬の北海道に行けたらブログに詳細をアップします。何回転んだかの回数も!!骨折だけはしないようにせねば。

コメントありがとうございましたあああ!!ヾ(*´▽`*)ノシ♪♪
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名前:さゆ
20代の女です。
初めて作るブログなので、不備がありましたら申し訳ございません。
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