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源さん

私「車内の温度はどうですか?」

舗装されていないぼこぼこ道を、のんびり愛車で走っているのです。一目ぼれしてしまいちょっと無理して買った車です。走行性能からして私にはもったいないスペックの車で、オニキスのように静かに光を反射する、ラグジュアリーな外見を持ちつつも強大なパワーを持つ、重厚で物々しい巨大なオフロード車です。ええ、惚れ込んでいるのでベタ褒めです!!

源「ん」

私(ん、ってどういう意味だろ?悪くないって意味かな?)

その助手席に座っているのは、御年62歳になられるご近所の職人さん、通称、源(げん)さんです。伯母さんのお友達なのです。

私「暑かったり寒かったりしたら言ってくださいね」

今、私は源さんを乗せて車屋さんに向かっているのです。修理に出されているという源さんの軽トラを取りに行くためです。その車屋さんへの道のりを、助手席に座った源さんに教えてもらいながら走っているのです。

それにしても、結構走ったというのに景色が変わった気がしません。林に囲まれたワインディングの山道だし、同じような木ばかり生えているからです。ここは地元の人が使う近道なのです。大通りに出るより少しだけ短い距離で到着できるそうです。私は詳しく知らない道だけど、きっと源さんにとっては、よく知っている慣れた道なのでしょう。

源「だあっ!?」

突然源さんが叫びました。

私「どうしました?」

源「来すぎた」

ポツリと源さんが呟きました。

源「そこにでけぇ石が見えるだろ?あれが見えると来すぎだんで。わりいがUターンしてくれや」

巨大な私の愛車は、足場に気を付けながらそろそろとバックし、長い足を伸ばして方向転換したのでした。

そのまま、しばらく源さんのナビゲーションに従って走ると、やがて家が沢山見えてきました。これで景色が変わりばえしたね。

源「ん!?」

私「どうしました?」

また道を行き過ぎちゃったのかな。私は速度を落として、路肩に車を止めました。対向車がいなくなったらUターンしよう。

源「犬がいる」

言われて見ると、たしかに犬がいます。民家の庭につながれています。賢そうな犬です。

私「かわいいですね。日本犬でしょうか。・・・道は、合ってますか?」

源「ん」



私(Uターンした分の時間が掛かったから、普通に一般道を来ても同じくらいの到着時間になったんじゃないかなあ・・・)

近道した意味があったのかな。でも、無事に車屋さんに到着することができました。安心して車を止めると、源さんは助手席から飛び降りて地面に着地しました。普通はレバーに捕まりながらソロソロとおりるのですが、源さん健脚ですね!!

私も車から降りて、源さんに続いて建物の中に入りました。どうやら、建物は車屋さんの事務所のようです。中で書類を整理していたらしい男性が、こちらを見て立ち上がりました。

車屋さん「源さん、待ってたよ。随分かわいい子と来たじゃない」

源「ん」

私「いやんもう、かわいいだなんて、お上手な」

リップサービスありがとうございまーーーす!!お世辞でも嬉しいの!!だって今日はいつもよりお洒落してるからね!!

そうなんです。自分の愛車を運転するときには、服から髪まできちんとお洒落をしてメイクもして乗ることにしているのです。愛車を運転するときは、愛車とデートしているつもりだからです。

車屋さん「こっちに止めてあるから。ついでにオイル交換しておいたよ」

源「おう。いくらだ」

車屋さん「タダさあ、いつも御贔屓にしてくれるから」

源「わりいな」

二人についていくと、数台の車が止められている中に、軽トラが一台ありました。あれが源さんの車だね。その白い軽トラは、車屋さんが洗車してくれたのか、やけにピカピカ綺麗に見えます。源さんはぽんぽんと軽トラの顔を撫でました。

私「良かったですね。では、私はここで失礼致します」

車屋さん「気を付けてね。源さん、お孫さんが帰るって」

おっと、孫じゃないんですよ。運転席でエンジンを回していた源さんは、窓を開けて私のほうに向けて手を上げました。

源「ん!!」



伯母さんの家に向かう車内で、私はDに話しかけました。

私「源さんって、面白い人だね」

ん、が口癖なんだろうなあ。一日に何度言うんだろう。

私「伯母さんと源さんって、どういう話するんだろ・・・」

ほわんとした伯母さんと、『ん』でほとんどの会話を済ませようとする源さんが、普通に会話をしている場面が想像できないなあ。ちゃんと会話が成立するんだろうか。



カラスがカアカアと鳴きながら山のほうに飛んでいく夕方、伯母さんの家のインターフォンを誰かが押しました。

伯母さん「はぁい」

源「今日は乗せてもらって悪かったんて、ちいっとばかしだが貰ってくれや」

聞き覚えのある声が聞こえてきます。源さんの声です。

伯母さん「すみません、ありがとうございます」

源「いやあ、ほんのちいっとだんで」

伯母さん「とんでもないです、開けて良いですか?まあ、かわいい!!」

会話がきちんと成立しています。私が相手だと『ん』がほとんどなのに、伯母さんが相手だと饒舌です。きっと親しい人にはこういう感じなんだね。私は玄関に向かいました。

伯母さん「さゆちゃん、源さんがケーキくれたわよ」

箱を上からのぞくと、かわいいショートケーキが二つ入っています。

私「ありがとうございます!!」

源「ん」



私「伯母さんから聞いたんだけどね、あのケーキ屋さん、街のほうにあるんだって。わざわざ買いに行ってくれたんだねえ」

直った軽トラで買いに行ってくれたのかな。ケーキを冷蔵庫にしまった私は、Dに話しかけてみました。

D「そうだね」

すらっとした指先が、私の唇に触ってきました。ゆっくりと唇を撫でています。

私「あの・・・D、そういうことされると私、やらしくなっちゃうから・・・」

D「いいよ」

私の唇の上下の隙間に、指を割り込ませようとしているようです。どうやらDは、私の口を開けさせたいようです。多分、舌を絡ませるキスをするつもりなのです。伯母さんの家でやらしいことなんて恥ずかしくて出来ないのに、Dに触られると気持ち良さで口を開けてしまいそうです。

D「我慢はおよし。抵抗せずに、僕に任せるといいよ」

もう我慢できなくなってきたよー・・・!!うう・・・!!

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