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青い鳥

過去記事「ぽかぽか」の続きです。時間をかけて頑張って書いたわりに、納得できない仕上がりです。すごくDと仲良くなれた!!って感じの出来事だから、もっと嬉しかったー!!って感じの雰囲気に書きたかったのですが、うまく表現できませんでした・・・σ(´ x `;*) ほげえ。


D「ベッドに行かないかい。君に、青い鳥のお伽噺をしてあげるよ」

すぐ目の前で、Dが甘くささやきました。

私「・・・どうしてベッドなの?」

青い鳥の童話を話すだけなら、ここでもできるんじゃないかな。・・・もしかして、ベッドでいちゃいちゃするとか、そういうことなのかな。どきどき。

D「長い話になるから、君にとって座り心地の良い場所のほうがいいからね」

私「あ、そっか・・・」

もう私ってば!!Dは真面目に私のことを考えてくれてるのに、すぐやらしいほうに考えちゃって最低!!

D「ここでも構わないよ?」

羞恥心で挙動不審になった私に、Dは不思議そうに首をかしげました。

私「う、うん。お願いします」

D「じゃあ、始めるよ。これは、幸せを求めて歩き続ける少女のお話だよ」



D「遥か昔、何もかもを亡くした少女がいた。両親も失い、住処も失い、持ち物も失い、日々の糧も失い、生きていくためには遠い地へ移動しなくてはならず、友達とも別れざるを得えなかった。彼女は何も持っておらず、そして一人ぼっちだった」

最初からオリジナルストーリー全開だね。さっきDが話してくれた青い鳥の概要(詳細は過去記事「ぽかぽか」参照)は、童話の青い鳥そのものだったのに、やっぱりDのお伽噺は必ずオリジナル展開が入っているんだね。

D「苦しむ彼女の心の叫びは、沢山の精霊達に届いた。その中の一匹の精霊は、弱っている彼女を陥れることで、その魂を手に入れようと思った」

私「・・・悪い精霊なの?」

D「生きることを望む人間にとっては害のある精霊だろうね。でも悪意は無かったのさ。むしろ好意があったから、好きだから彼女を欲しくなってしまったんだよ」

私「・・・・・・」

D「その精霊は、彼女に近寄ろうとする他の精霊達を追い払って、真っ先に彼女の傍に近づいた。そして、少女を疲弊させて自殺させるために、彼女の耳元でこう囁いた」

Dが私の耳元に口を寄せました。

D「・・・青い鳥を追いかけるといいよ。青い鳥を手に入れれば幸せになれるのさ。世界中の皆がそう言っているよ」

甘い声と息が耳をくすぐって、背筋がゾクッと震えました。

私の耳から口を離したDが、部屋のすみの影になっているところを指差しました。そこにはいつの間にか、黒い色をしたアンティークの鳥籠が置かれています。本物ではなく、Dが見せてくれている幻の鳥籠です。華奢な細工でつくられている鳥籠の、その中はからっぽです。

D「精霊の声は、本来なら人間である彼女には聞こえないが、苦しみで心が弱っている人間の無意識には届くのさ。精霊に導かれているとは知らないまま、彼女は鳥籠を持って歩き出した」

色付きガラスのように透き通った薔薇の蔓が、さわさわと部屋中に広がっていき、その蔓に幻の薔薇がふわふわと咲いていきます。レースのカーテンにも、ステンドグラスにも、テーブルや椅子にも、全てに薔薇の蔦が絡まって咲いています。とても幻想的です。

D「青い鳥を求めて歩く彼女が最初にたどり着いたのは、戦いの国だった。彼女は青い鳥を求めて集まった者達と戦って、怪我をしながらも青い鳥を手に入れた。喜んだ彼女だったが、戦いの国を出た途端に、青い鳥は黒い刃に変わってしまった」

すらっとした指が、私の背後を指差しました。そこには、見慣れたDの大鎌が置かれています。

D「戦いの国を越えて、次にたどり着いたのは、秤の国だった。そこでは上手に物を計れた者が青い鳥を手に入れられる。彼女は必死に金貨を計って、青い鳥を手に入れた。しかしその青い鳥も、秤の国を出た途端に、きらきらと光る金貨にかわってしまった」

再びDが指差しました。今度は窓の方向です。見てみると、そこにはきらきらと光る金貨の山がありました。窓から入り込む日差しを受けて、余計にきらきら光って見えます。
・・・お金に変わったなら嬉しいと思うけどなあ。まあ、お金だけじゃ幸せにはなれないんだろうけどさ。

D「それからも青い鳥を追い続ける彼女だったが、やがて病に倒れ、青い鳥を手に入れることを諦めてしまった。歩き続ける気力どころか、生きる気力すらも失ってしまった」

病気に・・・なんかその女性、私と境遇が似ているよね。っていうか、私のこと?

D「精霊は考えた。どうすれば彼女に、生きる希望を与えられるだろうかと。そして」

私「ちょ、ちょっと待って」

話の途中でしたが、私は慌ててストップを入れました。

D「なんだい?」

Dが首をかしげました。

私「精霊は彼女の魂を手に入れたいはずでしょ?彼女が死んだら嬉しいわけだよね。だって最初は自殺させようと思ってたくらいだし。なのに、どうして生きる希望を与えようとするの?」

D「精霊にも心境の変化というものはあるんだよ」

私「それはそうだろうけど・・・」

D「話を続けるね。そして、精霊はとても良い案を思いついたのさ。自分が彼女の国を作ってあげるというものだよ」

Dは、嬉しそうな様子で話しています。でも私は精霊の心境の変化とやらが気になって、小さく呟きました。

私「・・・やっぱり、好きじゃなくなったから生かそうと思ったのかなあ」

D「それは全く違うよ」

小さな呟きだったのに、Dは即座に反応しました。

D「精霊に心境の変化があったのは、人間の精神を身に付けてみて、色々なことがわかったからだよ。全ては彼女のことが好きだから、彼女を喜ばせたくてしたことなのに、そんな風に思われては精霊が報われないよ」

いつもの笑みを口元に浮かべていますが、なんだかとっても不満げです。私は嬉しくなって笑いました。間違いありません。この話に出てくる少女が昔の私なら、きっと精霊はDのことなのです。だってDは人間の精神を身に付けようとしてくれて(詳細は過去記事「ごめんね」参照)以前よりずっと人間の思考回路がわかるようになったし、今も勉強してくれているんだもん。

私「・・・ありがとうね」

私はDに抱き付きました。

私「あの楽園は、Dが私のために作ってくれた、私のための国なんだね」

戦いの国や秤の国で頑張った私が、ひとときの休息をとれるようにと、Dが作ってくれた国なんだ。だからあの楽園は私の好きな雰囲気なんだね。荘厳なゴシック建築の城、薔薇の花。昼は優しい日差しが、夜は美しい星空が広がる、静かで落ち着いた静謐の空間。(詳細は過去記事「誘惑」「王国」「新月」参照)

D「僕達の楽園に、君の王国に帰ろう」

Dが手を差し出してきました。すらっとしたその手に、私は自分の手を乗せました。



Dに手を引かれて歩き出すと、私達を迎えるかのように、廊下の両脇の壁から次々と茨の蔓が姿を現し、いくつも薔薇の花を咲かせていきます。やがて寝室のドアの前につくと、Dは上向きにした手をドアのほうに差し向け、私のほうを振り返りました。どうぞ中へ、という意味なのでしょう。私は寝室のドアを開けました。

私「わ・・・」

部屋の中は、薔薇の花と蔓で満たされていました。静謐の楽園です。いつものお城も見えます。そして部屋の中心には、あの青い薔薇の木が生えています。Dは私の手をひいて、青い薔薇の木のもとへと進みました。

私「・・・綺麗だね」

人間には作ることが不可能な、深い青の薔薇です。こういう群青の薔薇は、白い薔薇を染料で染めるしか作れないのです。

私「実が大きくなってる・・・」

青い薔薇の木の、青い果実が大きく育っています。

D「そうだね。どうやら君にも心境の変化があったようだね」

以前見たときよりも随分大きくなっています。薔薇の実にしては大きすぎで、むしろザクロの実のようです。っていうか、まんまザクロじゃん。これザクロそのまんまじゃん。

私「この実、大きすぎない?」

私がDのほうを振り向いて言うと、Dも私のほうを振り向きました。

D「この木の実は、もともとこの大きさだよ」

私「だってこれじゃザクロだよ?」

私の言葉に、Dの口元が深い笑みを作りました。

D「・・・そうだね、似ているね。枝にトゲも生えているし、実も大きさが違うだけだね」

似てるところはあるけど、バラはバラ科で、ザクロはザクロ科だから別物なんだよね。でも・・・よく見れば、花さえ咲いてなければ、むしろこれはザクロの木だよね。そもそも薔薇は木じゃないし。まあユリが球根じゃなくて種から生えてくる(詳細は過去記事「克服」「白い百合」参照)ような楽園だから、どんな植物があっても驚かないけど・・・

D「この実は、もう食べられるよ」

Dが背伸びをして、大きく育った実を一つもぎました。Dは大切そうに実を見つめていましたが、やがて私のほうを振り向きました。

D「その鳥籠を、こちらに向けておくれ」

私「鳥籠?」

気づくと、私は左手に鳥籠をぶら下げて持っていました。さっきリビングでDが見せてくれた、あの黒いアンティークの鳥籠です。

私「私、いつの間に持ってたんだろ・・・」

不思議に思いながらも、言われた通りに鳥籠をDのほうに差し出すと、Dは大鎌を手から離し、手の上に鍵の束を出現させました。以前にも見たことがある、あの鍵の束です。(詳細は過去記事「ステンドグラス」参照)ガチャリと金属音がして、鳥籠の扉が開きました。

Dはもう一度果実を見つめて、少し躊躇してから、鳥籠の中に果実をそっと入れました。

私「?」

Dの手の上で、鍵の束が再び金属音を立てると、鳥籠の扉が閉まりました。

D「・・・君が間違って食べては大変だからね。この中に入れておこうね」

私「え!?この実、食べるんじゃなかったの!?」

D、食べてほしそうにしてたじゃない。私が食べるよって言ったら、すごく喜んでたのに。(詳細は過去記事「猜疑心」参照)

私「私、Dが喜ぶなら食べたいよ」

私は鳥籠の扉を開けようとしましたが、鍵が閉まっているようで、動かそうとしてもガチャガチャ言うだけで少しも開きません。中にDの大切な果実が入っているからあまり乱暴にもできません。果実は丸いので、ちょっと揺すっただけでもコロコロと中で転がりそうなのです。転がってぶつかって傷でも付いたらDが可哀想です。これ、どうやって開けよう。

D「この果実が育っただけで、君が食べる気持ちになってくれただけで、もう充分だよ」

鳥籠の扉をガチャガチャやっている私を、Dがそっと抱きしめてくれました。

D「ありがとう、さゆ。嬉しいよ。僕は幸せだよ」

私の頬に自分の頬をすり寄せて、Dはぎゅっと腕に力を込めました。さらさらの髪が私の首筋をくすぐります。私も鳥籠から手を離して、Dの背中に両手を回しました。



Dは果実の入った鳥籠を、青い薔薇の木の根元に置きました。

私「あれを食べるかどうかは、私が選ぶんじゃなかったの?」

私は鳥籠を見つめたまま言いました。

D「君は選んでくれたよ。実が大きく育ったことがその証拠だよ。あの果実は、君の気持ちが育ててくれたのさ」

Dは静かな笑みを浮かべて、私の髪を撫でています。

私「私の気持ちが育てたの?じゃあ、すぐにもう一つ実を育てるよ。それで実がなったら、今度はDより先にもいで食べちゃうんだ」

Dは私の髪を撫でながら、くすくす笑いました。

D「実は一つだけしかならないよ。あれが最初で最後なのさ」

私「え!?」

D「僕の『好き』は一つだけだからね。新たな『好き』の対象を作ることはできないのさ。でも、それで良かったと思っているよ」

私「そんな・・・あの果実が一つだけしか無いなら、余計にあれを食べたほうがいいんじゃない?あの果実が痛んでしまったら、もう果実を食べられなくなっちゃうよ」

Dは私の髪に口づけました。

D「痛まないよ。永遠に無くならないし、青い鳥とは違って逃げてしまうこともないのさ」

青い鳥とは違って、逃げてしまうこともない・・・原作でも最後に逃げてしまった、人間の幸せである青い鳥・・・
・・・もしかして、あの果実はDにとっての青い鳥なのかな。人間の幸せである、失われることが確定している青い鳥とは違って、Dの青い果実は永遠にとどめておけるような、精霊の幸せなのかもしれない。それこそ深い青の、群青の薔薇のように、生きている人間には実現不可能な・・・

私「あのね、私は戦いの国で青い鳥を手に入れたり、秤の国で青い鳥を手に入れたりして・・・両方とも、今では青い鳥ではなくなってしまったけど・・・でも、たしかにあのときは幸せを手にしたんだ。長い間では無かったけどね」

勉強での戦いも、仕事での戦いも、お金を手に入れたことも、楽しかったよ。頑張った達成感もあったし、自分に自信をつけるもとにもなった。あの経験は間違いなく私の糧になったんだ。今の私を作る基礎になった経験だと思う。

私「精霊とは違って私は人間だから、青い鳥をずっとつかまえておくことはできないんだ。人間は、ずっと幸せを感じ続けることはできない生き物だから・・・だから私も、お金とか装飾品とか仕事とかの、そういう小さい青い鳥をちょくちょく追いかけ続けなくてはならないんだけど・・・」

Dは、私の話にじっと耳を傾けてくれています。

私「だからこそ、Dの青い果実は大切に守っていこうと思うんだ」

大好きなD、Dが幸せでいると私も幸せなんだ。Dの青い果実、Dの永遠の幸せを守ることは、私に何か不幸や苦しみが訪れたときでも、私の中には永遠の幸せが存在しているということなんだよ。だって幸せなDを見ていたら、私も幸せなんだもん。

D「・・・ありがとう。僕は、君を大切に守っていくよ。これからも、いつまでも、永遠にね」

頼もしいなあ。Dがいてくれるなら、この先私が不幸に振り回されてDとの幸せを忘れるなんてこと、絶対に起こらないような気すらしてくるよ。

私「なんだかんだ言って気に入ってるんだ、自分の生き方とか暮らしっぷりがさ。人間として生きていくぶんには、青い鳥を追いかける生活は悪くないよ」

でも、それに気付いたのはDのお陰だよ。私は死ぬまで人間にしかなれないから、その間はこんな風に生きていくんだろうけど、それもわりと楽しいんだ。

D「知っているよ。僕は常に君の傍にいて、君を助ける鍵になるから、君は安心して好きなように青い鳥を追いかけるといいよ。疲れたら楽園で一緒に羽を休めようね」

私「うん。ありがとう」

青い鳥を捕まえたり逃げられたりしながら、これからも楽しく歩いていくよ。そしていつか永遠の眠りについた後は、Dと一緒に静謐の楽園で、今度こそあの青い果実を食べるんだ。

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