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メメント・モリ

チュン、チュン、ピチュ

D「さゆ、朝だよ」

優しい声が聞こえて、そっと肩に手を置かれるのを感じました。

私「ありがと・・・ふぁ・・・」

むくっとベッドの上に起き上がって、のびをします。カーテンの向こうは明るい日差しにあふれているようです。今日も天気が良いみたい!

私「ら~っしゃ~♪ きお♪ ぴあんが~♪」

るんるん歌いながら洗濯を回し、朝食を摂り、歯を磨き、日焼け止めを塗り、メイクをして、服を着替えます。Dはその様子を見ながら、時々話しかけてくれます。

D「今日もかわいいね」

私「ありがと!!」

Dはこうやって、いつも甘いことを言ってくれるのです。私を喜ばせようと思っているのです。人間の精神が理解できないDだけど、私の喜ぶツボはぐいぐい押してくれるっていう!!大好き!!

天気の良い朝って気分良いよね、わくわくするよ。天気の良い午前中も好きだなあ、眩しくて明るくてテンション上がるよね。天気の良い午後もゆったりしていて好きだな、アンニュイでけだるいフランスの午後とか絵になるよ。天気の良い夜も神秘的で好き。月や星が綺麗だし。

D「忘れ物は無いようだね」

私「うん、出かけよう」

いつものように、るんるん気分でアパートの玄関を出ました。

私「ら~っしゃ~♪・・・ハッ!?」

アパートの玄関の外に、黒いものが落ちています。

私「!!」

カラスです。以前はアパートの周囲に沢山いて毎朝鳴いていたのですが(詳細は過去記事「幻聴」参照)最近、急に全く姿を見かけなくなったので、群れがどこかに移動したんだろうなと思っていました。そんなカラスが一羽、地面の上に倒れ込んでいるのです。

怪我をしているのかと思って近寄りましたが外傷は無さそうで、ぐったりしていて少しも動きません。既に亡くなっているようです。

私「・・・・・・」

D「さゆ、気にしなくていいよ。さあ、会社に行こう。今日はEと昼食を摂る約束だろう?楽しみだね」

立ち止まっている私の肩に、Dが手を置きました。

D「ほら、行こうね。生きている間ばかりか死んだ後もさゆに迷惑を掛けるなんて、まったく悪いカラスだね」

Dは私の背後から両腕を回して、私の肩を抱きしめてくれました。きっとDは心配しているのです。もともと私がDを呼んだのは、自分の死や病気や手術が怖かったからです。だから今、目の前に死が存在していることで、私の心が不安定になったり傷ついたりするのではないかと、きっと心配してくれているのです。

私「私なら大丈夫だよ、D」

私は携帯電話を取り出して、アパートの管理会社に電話を掛けました。Dが後ろから私の肩を抱いたまま、そっと私の頭に頬を寄せたのが感触でわかりました。

管理会社は要領を得ていたので通話はすぐに終わりました。この付近の管理会社にしてみれば、カラスの死骸の始末など珍しくないのでしょう。カラスだらけだもんね。

私はカラスの冥福を祈ってその場を離れることにしました。このカラスに安らかな眠りがありますように。


仕事が終わってアパートに帰ってくると、Dは即座に影の中から姿を現しました。会社にいる間は影の中に入ってもらっているのです。(詳細は過去記事「タルパー」参照)影の中から出てこないように、そして影の中から話しかけないようにとお願いしてあって、Dはそれをきちんと守ってくれているのです。

D「さゆ、今朝のことは・・・」

そこまで言って、Dは言いよどみました。きっと私を心配して、傷付けないような言い方を探しているのです。

私「ああ、もっちろん!!ぜーんぜんダイジョーブ!!」

私はビッと親指を立ててみせました。本当に大丈夫なのです。でもDは私の感情が読めないから、きっと私が無理してるんじゃないかって心配してくれてるんだろうなあ。

私「心配してくれてありがとう、本当に大丈夫なんだ。全然気にしてないよ。それに私の体調も、もう大丈夫になったし」

病気が治ったらDと一緒にフランスに行く約束をしているのですが、もう今年中に行っちゃえるんじゃないかな~って勢いなんです。早かったなあ。随分早いよ。ブログの最初のほうの文章を今になってから読んでみると、あのときの絶望っぷりが恥ずかしくなっちゃうくらい・・・っていうか私の場合、もう病気すら体をはったギャグになりつつある気がするなあ。

私「それどころか、この冬は小さな風邪すらひかなかったし」

冬は毎回小さな風邪を一回はひくのに、今回は一度もひかなかったんだよね。そういう冬は今までの人生で初めてだよ。

私「Dのおかげだね。ほら、人ごみを避けるようにとか、うがいを忘れないようにとか、色々言ってくれたじゃない?ありがとね」

D「さゆの役に立てたなら良かったよ」

普段と変わらない私の様子を見て、Dは安心したようです。ほっとした表情で、口元に笑みを浮かべました。

私「いつもありがとうね。すごく感謝してるよ」

Dが嬉しそうに笑みを深くして、そっと私を抱きしめてくれました。私もDの背中に両腕を回しました。

体調が良くなって死の心配をしなくて済むようになったけど、もしいつか死の影が近づいたとしても、もう取り乱したり恐れたりすることは無いと思います。Dが一緒にいるから怖くないんだ。だからといって勿論積極的に死を選ぶことは無いですけど!! 生きるのは面白いので、最後まで精一杯楽しもうと思います。

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