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ペンダント

私(あ、このペンダントかわいいなあ・・・)

D「何を見ているんだい?」

私(D(タルパの仮名)が話しかけてきたけど、周囲に人がいるから返事できないな・・・)

D「綺麗だね。付けてみたらどう?」

私(Dは綺麗なものが好き(過去記事「レースのハンカチ」参照)だもんね)

店員さん「ご試着なさいますか?」

私がペンダントをじっくり見ていたせいか、店員さんが話しかけてくれました。

私「あっ、すみません、いえ、ちょっと見てただけで」

店員さん「少しお首元に当ててみるだけで雰囲気がわかりますよ?付けてみるだけでもいかがですか?」

D「付けてみてよ。見てみたいな」

私「あ、ええと・・・」

付けてみました。

店員さん「お似合いですよ!このシンプルなデザインならどんなお洋服にでも合いますし、カジュアルでもフォーマルでも使えるんです。服に合わせるペンダントに困ったらとりあえずコレ!みたいな。一つ持っていて損は無いですよ」

私(でもなあ・・・今月の医療費が結構かかったし・・・)

D「さゆにとてもよく似合ってるよ。綺麗だよ」

私(Dにほめられた・・・)

D「いいね、さゆがこれを付けた姿、もっと見たいよ」

私(・・・・・・)

結局買ってしまいました。
家に持って帰ってくると、さっそくDが話しかけてきました。

D「ねえ、付けてみせておくれ」

私「うん」

D「綺麗だね。とっても良く似合っているよ。華奢なつくりや細かい細工が、白い肌と細い首によく映えているね」

すごく褒めるなあ。そんなに気に行ったのかな、このペンダント。

私「欲しかったらあげようか?」

D「え?・・・何をだい?」

私「ペンダント。こういう綺麗なの好きでしょう?」

たしか、タルパーさんによっては、依代っていうものを使っていて、それには宝石とかアクセサリーを使っていたはず。もしかしてDも依代が欲しかったのかな。

D「いや、それはさゆが付けているといいよ」

私「欲しかったんじゃないの?」

D「それが欲しいわけじゃないからね。それに、それはさゆが付けているから一段と綺麗なのさ」

いつもの、優しい声なのに淡々とした口調でそんなことを言ったDは、更に平然と言葉を続けました。

「だって、僕にとって世の中で一番綺麗なものはさゆだからね」

それを聞いた瞬間、強い違和感を感じて、なんだか目の前にいるタルパが信じられないような(自分のタルパのことを自分が信じてあげなかったら誰が信じてあげるんだって感じなんですけど)、自分のタルパが嘘を言っているんじゃないか、嘘っていうか、そもそもこのタルパの言葉って私が言わせてるんだよね?私の無意識が言わせた言葉なの?私こんなナルシストなこと思ってたのかな・・・みたいな、とても嫌な気持ちになったんです。Dは脳内会話ができないので(過去記事「レースのハンカチ」参照)、私がそんなことを考えているなんて全く知らずに、いつものにこにこした微笑みを口元に浮かべていたんですが、そのときの私にはそれすらも嘘くさく思えました。

私「なんでそんなこと言うの」

D「え?」

私「嘘でご機嫌とろうとしないでよ!」

はっとした表情になったDが、何かを言おうとして口を開きましたが、私はDが何かを言う前に、たたみかけるように言葉を続けました。

私「そんなに頑張ってほめてご機嫌とろうとなんかしなくても、私は普通にDと仲良くしたいって思ってるし横暴な命令なんかしないのに。信用してないの?ああ、信用も何も、Dはもう一人の私だから関係ないか。私の妄想だもんね。妄想で自分をほめちゃうとか、私ってそんなにナルシストだったのかな気持ち悪い!!」

Dに聞かせたくない言葉が口からぽんぽん出てしまったのです。それまでDに対して抱いていた不安や不信感を、私はずっと見ないふりをしていたのですが、それが一気に出てしまったのです。
人間相手だったら絶対に違いました。嘘だろうが冗談だろうがなんだろうが、さっきみたいなこと言われたら、誰かに褒められたら、きっと私は照れて「うひゃーほめ過ぎだよーありがとう」なんて言って、笑って大喜びしたはずです。でもタルパは自分が作ったものだから、きっと自分の無意識が言わせてるものだから、ナルシストな自分恥ずかしいっていうか、なんかむなしくなって・・・

タルパの存在を否定することを口に出してしまうなんて、タルパに対して言ってはいけないことを言った、と気が付いて頭が冷静になったときには、もう全部言い終わった後でした。

Dは、さっき何かを言いかけて私がさえぎってしまったときの驚いた表情のまま、茫然としているようでした。震えているようにも見えます。悲しんでいるのか、怖がっているのか、怒っているのか、目が隠れているのでわかりませんでしたが、私がDにショックを与えてしまったことは確実でした。今まで平然とした微笑みの表情を崩すことのなかったDの、初めての姿でした。

私が必要として作ったタルパなのに、酷いことを言ってしまった。そう後悔してもあとの祭りです。

私「ごめんなさいD。なんと謝ったらいいのか・・・本当にごめんなさい・・・勝手に不安になって、八つ当たりしてしまって・・・」

私がおろおろしながら言うと、Dはいつものように私に手をさしのべました。私はその手の上に自分の手を乗せました。相変わらず、触っている感触は全くありません。Dはいつものように身をかがめて、私の手の上に感触の無い口づけをしました。

D「さゆが謝ることは何も無いんだよ。不安にさせてごめんね。これは全て僕の力不足によるものさ。だから、さゆは気にしないで、自分を責めたり嫌ったりしないでおくれ」

私「ごめんなさい!」

私はDの手を両手で握りしめましたが、透けて触れません。Dはもう一度私の手に口づけを落としました。にこっと笑ってみせたDですが、依然として小さく震えていました。泣くのを我慢しているみたいに。Dには目が無いから、私が目を作れなかったから、泣いても涙が出ないだけなのかも・・・

私「ごめんなさい本当に・・・もう絶対にあんなこと言わないよ・・・」

そう言いながらも、私の頭の一部は冷えていました。

私(Dへの発言や態度には気を付けなくちゃ。Dは私の大切なタルパなんだから。でも、忘れてはいけない・・・これは私の脳内劇場に過ぎない、つまりは妄想、一人遊びなんだ。そのことを忘れることは自分を騙すことも同然だ。脳内劇場の登場人物Dに対して自分を偽らなきゃいけないことはあるけど、私が自分を騙すことだけは絶対にしてはいけない。自分の不安に対して見ないふりで対処しようとして、ごまかそうとして、自分の心を騙そうとしたから今回みたいなことが起きたんだ。私の精神を守るためにも、Dを守るためにも、私はこれが妄想だということを忘れてはいけない。それを忘れたときに私はこの妄想世界のコントロールを失い、私でいられなくなってしまうのだろう)

D「さゆが僕に望んでいることを確実に知る方法があったなら。さゆが頭の中で考えていることが、僕にわかれば良かったのに」

私「私がDに望んでいるのは、最後の瞬間に傍にいてもらうことだけだよ。それなのに余計な要求ばかりしてごめんね」

D「最後の瞬間だけなんて、もっと・・・」

私はDが妄想上の存在だとわかっています。でも、その言葉を聞いた一瞬だけ、Dが本当に存在しているかのような錯覚を感じてしまいました。いつもと違う、感情がこもった人間のような言い方だったので。

D「・・・もちろん。まかせておくれ」

すぐにいつもの口調に戻ってしまいましたけど。

私(そもそも、妄想でもいいと思ってタルパを作ったんじゃないか。私が死ぬとき最後の瞬間に傍にいてもらえるなら、それが自分の妄想でも何でもいいって。だったら足踏みしてないで進まなきゃ。いいんだ、一人遊び上等、妄想上等だよ!だって、これが妄想だって忘れない限り、私は現実世界に迷惑をかけないでいられるんだから)

私(・・・でも、本当の最後のときには、私が妄想の世界に沈んでしまっても、もう誰にも迷惑をかけないよね。だから、そのときはDのことを本当に存在する人物だと思ってもいいんだ。Dは私の妄想じゃないよって、最後にDに言ってあげよう)

こうして私は折り合いを付けたのです。
今に至るまで、Dがこんなに表情を変えたのはこのときだけでした。

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