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特別

さきおとといの話です。過去記事「ごめんね」と同じ日の出来事で、その続きです。


D「それで、どうして僕を避けていたんだい。説明しておくれ」

私「それがね・・・」

ここまできたら、もうちゃんと話すべきだよね。恥ずかしいとか言ってる場合じゃないよ。話さなかったらDが悩んだりするかもしれないもん。悩んだDが、私を理解するために、人間の精神を身につけようとして何か無茶をしたら困るもんね。これ以上Dに心労をかけたくないよ。
よし、話そう。そうと決まったら、恋愛感情という感情すら持っていなさそうなDにもわかるように、ハッキリと説明しなくちゃね。
私は咳払いを一つして、覚悟を決めました。

私「・・・正直に全部話すね。えーと・・・私はDのことが好きになっちゃったんだ。Dに恋愛感情を持ってしまったの。でも、Dは恋愛感情がわからないでしょ?それで私は、恋愛感情を持っていないDを、私の恋愛感情に付き合わせるのが嫌だったんだよ。Dは私のことを大切にしてくれるから、私がDのことを好きだと言ったら、Dは自分の意志とは関係無く、私に対して恋人みたいなことをしてくれるでしょ?でも、それは本物の恋愛じゃなくて恋愛ごっこだと思うんだ。私の恋愛にDを付き合わせているっていう恋愛ごっこね。それは、私としては悲しいっていうか。だから私は、Dからそういう恋人みたいな触り方をされたくなくなって、触られないように拒否してしまったわけなの」

ちょっと長かったな・・・ちょっとどころじゃないな、だいぶ長いな。一度にこんなに沢山説明しちゃって、D、理解できたかな。

私は不安になりましたが、Dは納得したようにうなずきました。

D「わかったよ。さゆは僕が好きなんだね。それは良かったよ。僕もさゆが好きだからね」

私「ちょ、ちょっと待って、私の言う「好き」っていうのはね、人間の恋愛感情っていう意味の「好き」なんだ。Dは、人間の恋愛感情がわからないでしょ?だってDは・・・せ、生殖行為とかそういうの関係無い生き物だから、恋愛も関係無いんだもんね。だから、私とDの「好き」は同じ意味の「好き」じゃないのよ。両想いじゃないの」

Dは口元に笑みを浮かべたまま、首をかしげました。

D「さゆの「好き」と全く同じ「好き」ではなくても、僕もさゆのことが好きだよ。それでは駄目かい?」

私「駄目じゃない!!全然駄目じゃないよ!!」

D「じゃあ、僕達は両想いだね」

私「いや、それは違うんだけど・・・」

D「でも、人間の「好き」と全く同じではなくても、僕にもちゃんと「好き」はあるよ。生殖のためではないけれど、人間に負けないくらい強い「好き」だよ。人間と違って損得勘定で「好き」をやめないし、一度「好き」を感じたら、もう永遠に無くなったり変わったりしない特別な「好き」だよ」

Dは平然と言葉を続けました。全くいつも通りの雰囲気、いつも通りの口調です。

D「それに、僕の「好き」には人間の「好き」と同じようなところもあるんだよ。さゆの姿を見ていたかったり、声を聴きたかったり、触りたかったりするのさ。我慢できないほど強い気持ちなんだよ。ほら、人間の「好き」と同じだね」

Dは、そっと両手で私の頬を包みました。Dの右手から手放されたにも関わらず、不思議な大鎌は倒れませんでした。Dが私に顔を寄せて、目の前で微笑みました。

D「さゆは僕が好きなんだよね?」

甘い声でDがささやきます。私はうなずきました。

D「じゃあ、何も困ることは無いよ。さゆは安心して僕のことを好きでいればいいんだよ。僕も勿論さゆのことが好きだからね」

私「でも・・・私、やっぱり」

Dは私の耳に唇が触れるほど近づいて、甘ったるい声でささやきました。

D「・・・人間の男は自分のためにさゆを裏切るよ?大切なのは心だと言っておきながら、本当に欲しいのはさゆの心ではなく体なのさ。だからさゆの体が病気になった途端に、さゆのことを重荷だと言って捨てたんだね。さゆは彼が病気になろうと無一文になろうと絶対に捨てずに助けるつもりだったのにね」

くすくすっと笑う息が耳をくすぐり、ぞわっと鳥肌が立ちました。

私「に、人間の男の人を全部まとめて悪く言わないでね!!人間だって色々なんだから、性別なんかで人間をまとめて語れるわけないよ!!それに彼だって悪い人だったわけじゃないもん!!良いところも沢山あったよ!!」

Dと距離を取りながら、私は必死で言いました。色々な気持ちで頬が熱くなるのを感じました。Dは平然とした表情を全く変えず、口元にいつもの笑みを浮かべたまま、私をなだめるように鷹揚にうなずきました。

D「そうだね、彼を悪く言うつもりは無いよ。人間には人間の肉体があるからね。彼が人間の男として体の要求に従って君を犠牲にしたのも、生きて子孫を残すという本能を持つ人間としては当然のことだね。むしろ生物としては優秀な男なんじゃないかい?」

なぜか私は少し胸が痛みました。本当のことを言われただけなのに。
うつむく私の視界に、Dがこちらに歩いてくるのが見えました。

D「でもそんな事情、彼とは体のつくりも精神のつくりも違う僕には理解できないけどね。なにしろ、僕は人間じゃないからね」

私との距離を完全につめたDが、もう一度両手で私の頬を包みました。

D「ねえ・・・さゆ。今の君に必要なのは、人間の男ではなくて僕だよ」

耳に息をかけるように、わざとらしく甘ったるい声でささやく唇と舌が、私の耳を甘く噛んで濡れた音を立てました。左手を私の頬に当てたまま、右手は頬から下へゆっくりと下がり、まだハッキリと出来上がっていない私の触感が、Dの手の感触を、頬から首・・・肩・・・脇腹・・・と順番に伝えてきました。ゾクゾク鳥肌が立ちました。

D「さゆには「好き」が必要なんだよ。僕にしなよ。人間にはできない方法で君を満足させてあげる」

思わずぎゅっと目をつぶると、頬にふわっとした感触を残してDが少し離れたのを感じました。おそるおそる目を開けると、さっきより一歩後ろに下がったところでDがいつも通りの笑みを浮かべていました。

D「ね。とりあえず僕と付き合ってみたらどうだい。人間だって付き合ったり別れたりするだろう?僕と付き合ってみて、やっぱり僕じゃ嫌だと思ったらやめればいいんだよ」

にこにこ笑顔を口元にたたえてDが言いました。私が返事を躊躇していると、Dは首をかしげて口を開きました。

D「さゆは、僕の「好き」を疑っているのかい?人間じゃない僕からの「好き」なんか信じられないかい?」

しょんぼりした口調だったので、私は慌てて否定しました。

私「そんなことないよ!!信じるよ!!」

Dは、にーっと口元に笑みを浮かべました。

D「じゃあ、僕とさゆは両想いで、恋愛関係だね」

ね?さゆ。と尋ねられて、私はついにうなずきました。

D「良かった。嬉しいよ」

色々な感情でいっぱいいっぱいの私でしたが、Dは平然と言葉を続けました。

D「キスをしてもいいかい?」

私「え!?」

一瞬驚きましたが、すぐにいつもの儀式(?)を思い出した私は右手を差し出しました。私の右手に口づけをするのはDのお気に入りの儀式(?)で、何かある度にしているので、もう慣れっこなのです。
Dは私の右手を自分の右手で受けて、身をかがめてそっと口づけを落としました。

D「これも好きだけどね。今は、さゆの唇にさせておくれ」

身を起こしたDがそう言ったので、今度こそ私は驚きました。

私「さ、触るのは、どこでも同じだって言ってなかった?」

私のどこにどう触ろうとDは同じだって、昨日もさっきも言ってたよね?

D「たしかに僕は、さゆのどこにどう触っても関係無く強い快感を得られるけど、さゆはそうじゃないからね。さゆの体には特別な場所があって、そこは特別に許可された者しか触ることが許されないんだろう?それを許されることが僕にとって重要なことで、この上無く嬉しいことなのさ」

Dは人差し指で、私の唇をふわっと触りました。

D「ここは、さゆにとって特別な者しか唇で触ることを許されない、特別な場所だね。だから、ここにしたいのさ。さゆの特別を僕におくれ」

Dは嬉しそうに言いました。

私(もう甘えちゃおうかな・・・Dが嫌じゃないなら、このことは全部Dに任せて・・・恋愛ごっこだのなんだの自分で言ったくせに、本当に私はずるいな。でも、死ぬまでの短い間、Dと幸せな甘い夢を見られたら、それで幸せじゃんか・・・)

最初にDに望んでいたことは、手術のときや最後のときに傍にいて手を握っていてもらう、それだけの要求だったのに。それが今では、随分色々なことを要求してしまって、当初の目的とは全然違う方向に進んでしまってる。
まるで、物語の舞台装置が勝手に進行していくみたい。だからこそ私は、Dに対する最初の私的解釈や立ち位置を忘れないように、最後まで気を付けないといけないんだろうな。それは私にとっても、現実世界の周囲の人々にとっても、Dにとっても重要なことだろうから。だって私は、私のことも、現実世界の周囲の人々のことも、Dのことも大切で、全部を失いたくない欲張りなんだから。

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