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撫でたい

ベッドに座っている私のすぐ隣、同じくベッドの上に座っているDは、私のほうに体を寄せて、私の首筋を唇でくすぐっています。

私「っ、D、ねえ」

くすくすという息だけの笑い声が耳元で聞こえ、くすぐったくて、ぞくっと軽く鳥肌が立ちました。

私「Dってば、くすぐったいよ」

どうやらDは、じゃれついて遊びたいようです。私をくすぐって笑わせたいようです。

D「さゆ」

耳たぶを甘噛みされて、耳の中に舌が入ってきました。

私「ひゃっ、あはは、もう、そんなことすると、こうだよ。えいっ」

目の前にあるDの肩を軽く押してみると、Dは少しも抵抗せずに、どさっとベッドの上に背中から倒れました。

私「今度は私がくすぐっちゃうんだからね」

私がそう言っても、Dは口元の笑みを濃くするだけで、無防備に横たわったままです。
よーし、絶対くすぐって笑わせちゃうんだからね!

とりあえず、お腹をくすぐってみることにしました。こちょこちょこちょ。

私(あ、あれ・・・?)

Dは平然としています。口元は微笑んでいますが、それはいつもです。

私(じゃ、じゃあ首筋だよ)

いつもDにされているみたいに、首筋を指でそーっと撫でてみました。Dはくすっと笑いました。

私(ん?効いてる?)

Dも首筋は弱いのかな。よーし、そうとわかったら重点的に攻めよっと。

私(・・・あれ?)

しかし、それ以上いくら首筋をくすぐっても、Dは何の反応も見せません。

私(違ったのかなあ・・・)

私は首を傾げてDを見下ろしました。そういえば、Dがくすぐったがる様子とか見せたことないな。まさか、くすぐったいという感覚が無いとか?あり得る!だってDは人間じゃないし、人間とは違う触覚の感じ方をしてるって言ってたもんね。(詳細は過去記事「五感」参照)

私(じゃあ、Dとのくすぐりっこは、私がやられる一方ってこと?)

ええー・・・なんかDにも反応させてみたいなあ・・・

私(そういえば、前に触ったとき、Dが気持ちよさそうな様子を見せたことはあったよね)

頭を撫で続けていたら、とろんとした気持ちよさそうな態度になったんだ。(詳細は過去記事「こだわり」参照)そういう、気持ち良いっていう感覚はあるんだね。どんな種類の気持ち良さなのかはわからないけど、あんなにうっとりしちゃうってことは、Dの『好き』を刺激するような気持ち良さなのかな。

・・・今も、頭を撫で続けたらあのときみたいになるのかな?

私はごくりと息をのんで、Dの頭に手を伸ばしてみました。そっと撫でると、さらさらの髪の毛が私の指を歓迎してくれました。

私(どのくらい撫でたら、あのときみたいになるんだろ・・・)

あのときは無意識に撫でてたから、覚えてないけど、5分くらいだったかな。

私(・・・かわいいなあ)

そう思いながらサラサラの髪に指を通したとき、Dが気持ちよさそうに溜息をつきました。

私(え、もう!?)

Dは仰向けにしていた頭を左に向けて、私の右手にすり寄せました。嬉しそうです。

私(か、かわいい・・・!!)

胸がきゅうっと締め付けられた私は、Dを沢山撫でることにしました。


しばらく撫でているうちに、Dの様子が変わってきました。

私「D、気持ちいい?」

D「・・・・・・」

私「D?」

D「・・・良いよ・・・」

いつもならあり得ないほど遅い反応速度で、Dは返事をしました。Dの様子をうかがうと、うっとりしているようです。明らかに気持ちよさそうです。

私(なんか、かわいいな。これ、喜んでるんだよね?よーし、もっと撫でてみよう)

前はこの時点で終わっちゃったからなあ。今日はもっと撫でよう。

・・・ん?ちょっと待てよ。
・・・・・・これって、添い寝のチャンスじゃない?
このままDを撫でつつ、そーっと隣に横になれば添い寝になるんじゃない?

いやいや、前回はそれで失敗したんだ。添い寝っていうキーワードを口にしちゃって、それでDが冷静になって、いつも通りに戻っちゃったんだ。だから余計なことはしないほうがいいよね。

D「さゆ、もっと・・・」

Dの髪に触れていた私の手を、そっとDが触ってきました。考え事をしている間に、撫でる手が止まっていたようです。

私「あ、ごめんね」

・・・もっと、って・・・かわいい・・・!!

私「お詫びに、もっと気持ちよくしてあげるね」

とにかく、いっぱい触ればいいんだよね。人間とは違って、Dはどこをどう触られても、私に触れているなら同じ強い快感なんだって言ってたもんね。ということは、Dを喜ばせるには、とにかく沢山触れば良いってことだよね。

私「たくさん触るから、気持ちよくなってね」

両手でDの頬を包んでみると、Dは熱い溜息をこぼしました。あれ?なんか、えろい感じになってる・・・?
でも、そう見えるだけだよね。だって、Dの感じる快感は人間のものとは全然違うって言ってたもん。

でも私は、両手でDの頬を包んだまま、そっと唇を合わせてみました。いつもDがしてくれているようにです。

あまり長くしているのも恥ずかしいので、すぐに口を離しました。

D「あ・・・」

名残惜しそうな声が聞こえたので、見下ろしてみると、Dはとろんとした表情で、うっすらと頬が染まっているように見えます。いつもの口元の微笑みも消えて、薄く口を開けて息をしているようです。

D「・・・・・・」

Dは薄く開いた口をもう少し開けて、舌を出しました。何となく言いたいことはわかります。でも、Dの望んでいるだろうことをしてあげるのは、恥ずかしいので勇気がいります。私が何もせずに見ていたら、Dは私に向けて舌で小さく舐めるしぐさをしてみせました。

ど、どうしよう・・・

まだ私が動かないでいると、Dは舌をしまって私のほうをじっと見つめました。ちょっと寂しそうです。とっても名残惜しそうです。

ご、ごめんねD!!

私は再びDの頭を撫で始めました。


私(も、もういいかな・・・もう一度キスしようかな・・・)

そう思って顔を寄せようとしたとき、くったりとベッドに身を預けていたDが、突然起き上がりました。同時に、床に置いていた大鎌が浮き上がり、Dの右手に収まりました。

私「え?どうしたの?」

Dは周囲を見回して、しばらく警戒しているようでした。やがて、いつもの表情に戻って振り向きました。

D「何でもないよ」

そう言って微笑んでみせるDは、すっかりいつも通りのDなのでした。

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