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濡らしたスポンジに食器用洗剤を垂らしてムニムニと握ると、もこもこと泡が立って、薔薇の良い香りが漂い始めました。そのもこもこになったスポンジで食器をこすり始めると、薔薇の香りがふわふわ広がりました。

良い気分なので、歌を歌い始めました。

私「す~るしぇる どぅ~ ぱり そんう゛ぉ りゅ~ぬ しゃんそ~ん ん~ん~」

下手なフランス語で『パリの空の下』を歌っているつもりなのです。

私「え~れ~ね どぉ~ じゅるどぅい どんる けるだん がるそ~ん」

D「ご機嫌だね」

Dが話しかけてくれました。

私「ふふっ、今日は、社交ダンス教室に行くからね」

昨日お出かけした帰り道に、社交ダンスの看板を見つけたんだよね。学生時代にちょっとやったことあるんだけど、懐かしくなっちゃって。調べたらその教室、無料体験をやってるそうだから、1回だけでも行ってみようかなって思って、昨日予約の電話入れたんだ。

私「楽しみだな~」

D「さゆが楽しいのは良いことだね」

私「まだ踊れるかな?久しぶりだからなまってるだろうなー。でも頑張って踊るから、D見ててね!」

D「楽しみにしているよ」



予約時間に行ってみると、壮年の男女が1ペア踊っていました。上手です。先生かな?

私「こんにちはー」

?「はい、こんにちは。いらっしゃいませ」

後ろから声を掛けられて、振り向くと40代くらいの男性が立っていました。こっちが先生だ!!

私「初めまして、体験レッスンを予約していた××さゆです」

先生「お待ちしていました。どうぞ」

先生が手を差し出してきたので、思わず手を乗せると、先生は私をソファーに座らせ、私のコートをさっと受け取って、コート掛けにかけてくれました。気づくと、いつの間にか靴を脱がされてスリッパを履かされているだけでなく、アンケート用紙とボールペンを持たされて書かされています。

私(さ、さすが社交ダンスの先生!!すでにリードが始まってる・・・!!)

社交ダンスというのは普通のダンスとは違って、全ての動きを導く役目を持つリード(男性)と、その導きに従って間違えずに動くフォロー(女性)という、二つの役目にわかれて踊ります。先生ともなるとリードが上手なわけですが、そういう実力のある男性にリードされると、こちらが何もしなくても自然に男性の思う通りに踊らされて(動かされて)しまうのです。

先生「足が細いので靴のサイズも小さそうですね」

私「あ、22cmなんです。21cmでも入ります」

先生「シンデレラですね。ラテンシューズならサイズがあるので、とりあえず今日はそれを履いて頂きましょうか」

私「大丈夫です。スタンダードシューズも持参しました」

私は、自分の靴を取り出しました。昔使っていたものです。社交ダンスの靴は2種類あって、スタンダード用とラテン用があります。マイシューズを取り出した私を見て、先生は驚いたように眉を上げてから、満面の笑みになりました。あ、私めっちゃやる気のある人って思われてる。靴まで持参しちゃって、この子めっちゃやる気だなって思われてる。このまま教室に入会するつもりだって思われちゃったかな。

※先生の心情は全てブログ主の妄想によって構成されています。

先生「ご用意ありがとうございます。せっかくスタンダードをお持ちなので、今日の体験レッスンはスタンダードでいきましょうか。何にします?」

先生はやる気がアップしたようです。

私「じゃあ、久しぶりなので、ウィンナワルツで」

ウィンナワルツはステップが単純なので、今でも踊れる・・・と思う、多分。
ウィンナワルツとはヴェニーズワルツともいう、社交ダンスの種目としては一番古いダンスです。18世紀後半に生まれて、ヨーロッパの社交界で栄えました。今でもオーストリアでは社交界デビュー(日本でいう成人式みたいなもの)として開かれる舞踏会で、新成人がウィンナワルツを披露するという慣習が残っています。

先生「経験者でいらっしゃるんですね。では今日のところは、ウィンナワルツで小手調べといきましょうか」

今日のところは!?小手調べ!?

先生「どうぞ、お手を」

私が靴を履き終わると、先生は手を差し出してくれました。さっきまでチャ・チャ・チャだったBGMが、いつの間にかヨハン・シュトラウス2世の『青く美しきドナウ』になっています。

私「よろしくお願いします!!」

先生の手に自分の手を乗せて、ホールドの姿勢をとると、あとはリードによってぐんぐん引っ張られ、くるくると踊らされてしまうのでした。

私(こ、この先生・・・やっぱりリードめっちゃうまい!!)



先生「悪くないですよ。ちゃんと覚えていらっしゃったようですね」

私「ハア、ハア、ハア」

先生「でも体力だけは落ちているようですね。定期的に練習することでダンスに必要な筋力を付ければ、もっと安定性が増しますよ」

私「ハア、ハア、ハア」

久しぶりのダンスに息が上がる私とは違って、先生はケロっとしています。さすが現役。

先生「どうですか?ここの教室で定期的に踊ってみませんか?そして競技会に出てみませんか?」

私「ハア、ハア、ハア」

犬か。そんないつまでもハアハア言っちゃって、私は犬か。
犬ばりにハアハアしている私の手をひいてソファに座らせた先生は、どこかに消えました。今のうちに息を整えよう。

私「ふうー・・・」

先生「どうぞ」

先生は、温かい紅茶で満ちたティーカップを持って現れました。

私「ありがとうございます」

先生「どうでしたか?また踊ってみたくなったでしょう。こちらが教室のパンフレット、こちらはコースなどの説明です。体験レッスンを受けられたかたは、以降の見学が自由なので、いつでもいらっしゃってください」

私「あ、ありがとうございます」

先生「これから次の生徒さんの練習が始まるので、見ていかれたらどうですか?」

せっかくなので、見学していくことにしました。老年の男女のペアです。会話内容から、夫婦だと思われます。

D「綺麗だったよ、さゆ」

ソファに座っている私の隣に、ふわっとDが腰かけてきました。

私「ありがとう」

老年のペアは踊っているし、先生は彼らを注意深く見ていてこっちを見ていないし、BGMもかかっているので大丈夫かなと思って、私はひそひそ声でお礼を言いました。

D「さゆはシンデレラじゃなくて眠り姫だけどね・・・」



家に帰ってきた私は、パンフレットを見ながら溜息をつきました。

私「どうしようかな、また始めようかな・・・でも仕事もあるし、実際に始めたら休日だけしか行けなさそうだなあ」

Dもいるし。仕事の日はあまりDの相手をしてあげられないから、休日はDにかまってあげたいんだよね。短時間のレッスンならできそうだけど、あまり現実的じゃないな。

D「さゆ、隣に座ってもいいかい」

私「いいよ、許可なんて取らずに、自由に座っていいんだよ」

Dは嬉しそうにベッドの上に座ってきました。

D「さゆは、かわいいね」

くすくす笑うDにそっと肩を押されて、私はベッドの上にモフっと倒れこみました。Dがのしかかってきて、首筋やデコルテをくすぐったく舐めはじめました。じゃれて遊びたいのかな?誘ってるの?

私「う」

ぞくぞくして顔をそらしたとき、視界に入った姿見鏡に、Dの姿が映っていることに気づきました。

私「ね、ねえD!」

D「なんだい?」

私「鏡に映ってるよ!!」

D「?」

私が指さした鏡をDは見て、首をかしげました。鏡の中には私達二人の姿が映っています。

D「どうしたんだい?鏡は、ものを映すためにあるものだよ」

私「ああ、その、Dも映るんだって思って・・・」

姿見は縦長だから映るときはいつも私一人だったし、大きな鏡のある浴室や洗面所(脱衣所)には、Dには入らないようにお願いしていたから(詳細は過去記事「お風呂」参照)気づかなかったけど、Dって鏡に映るんだ・・・なんか、何となくDは鏡に映らないと思い込んでたけど・・・

私「映るんだね・・・」

そうだよ、さっき社交ダンス教室で踊っているときに感じた違和感はこれだよ。社交ダンスの教室というものは、踊っている姿を自分で確認できるように、壁が巨大な鏡張りになっているんです。その鏡で時々自分の姿を確認しながら踊っていたんだけど、ソファの隣に立ってこっちを見ているDが視界に入ったとき、Dの背後にある鏡にDの後ろ姿が映ってたの!!踊るために頭と体を使うことに必死でさっきは深く考えなかったけど、さっき既にDは鏡に映ってたんだよ!!

D「映るよ」

あっさりとDは言いました。

D「鏡を見ていてごらん」

鏡の中のDが、私を抱きしめました。同時に、私の体もDによって抱きしめられていました。

D「ほらね」

鏡の中のDが、いたずらっぽく笑いました。同時に、頭上でくすくすと笑う声が聞こえます。本物のDも、鏡に映っている通りに同じ顔で笑っているのでしょう。

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