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呼吸と心音

今朝、起きてカーテンを開けたら、窓の外は雪が降っていました。

私「D、雪だよ!!外に出てみよう!!」

クリスマスに降ったような溶けかけの雪ではなく、ちゃんとした雪です。外に出てみると、うっすらと道路にも積もっています。

私「めずらしー」

降ってきた雪を、そっと上着の裾で受けてみると、雪の結晶の形が壊れずに残っています。

私「D、見てごらん。綺麗だよ。お花みたいな形をしてるよ」

綺麗でかわいいよね。私が雪の結晶を差し出すと、Dはうなずきました。

D「花のような形をしているね」

でもDは、雪の結晶を乗せている私の手の、手首をつかんで、そっと引っ張りました。Dに物理的な力は無いはずです。しかし私は思わず引き寄せられて、2,3歩よろめきました。手の上に乗せていた雪が地面に落ちました。

D「でも、ここは冷えるから、さゆの体に良くないよ。温かい部屋に戻ろう」

私「あ・・・うん」

たしかに随分と冷えます。私は自分の服や髪についた雪を払って、Dと一緒に自分の部屋へと歩き出しました。



私「暖房の設定温度、上げちゃおっと」

リモコンをピピッと言わせてから、私はベッドの上に座りました。

D「体は冷えてないかい」

ベッドの前に立ったDが、そっと私の頬に手を当てました。

D「・・・冷たくなっているよ」

あれだけ寒い外にいたのに、Dの指は少しも冷えていません。いつもと同じ温かさで、私の頬を包んでいます。

私「Dは、少しも冷えてないのね」

D「冷えないよ。人間じゃないからね」

静かな声でDが答えました。私はDの腕を自分のほうに引っ張りました。

私「ねえ、Dもベッドに上がって。Dあったかいから、くっつきたいの」

D「嬉しいお誘いだね」

私の引っ張るがままに、Dはベッドの上に上がってくれました。掛布団を壁に当てて背もたれにして、二人で並んでベッドの上に座ります。いつもと違って、足まで全部ベッドの上です。寒いときは、こっちのほうがあったかいからね。

Dの体温が変わらないのは、人間ではないからです。人間どころか生物ですらないのです。Dの言葉で言うなら、こちらの世界の生き物ではないからです。周囲からの物理的な影響を受ける私の体とは違って、Dの体は温度や時間や運動による疲弊や影響を受けないのです。

だから、Dから見れば、私の体はもろくて壊れやすく見えるんだろうな。きっと、心配してくれているんだね。

私「Dあったかいよー、もっと触ってていい?」

Dと手のひらを合わせていると、だんだんと指先が温まってきました。

D「勿論さ。さゆの好きなときに、好きなだけ触ればいいんだよ」

私「ありがとう」

ふと、Dの肩や胸が、呼吸のたびにわずかに動いていることに気がつきました。今までマントを着てもらっていたからわからなかったけど、新しい服になって(詳細は過去記事「服」参照)上半身の布が体に沿うようになったことで、呼吸の動きがわかるようになったのです。

私(呼吸の動きは、私、覚えてないはずなのに・・・)

私はDの新しい服や、その服の動きは覚えましたが、呼吸の動きまで作ろうとは思っていなかった、というか思いつかなかったのです。そういえば、耳や唾液も作っていないのに勝手にできた(詳細は過去記事「仲直り」参照)けど、呼吸の動きもそうなのかな。

思い出してみると、Dの息は、触覚の訓練のときや、キスされたときに、毎回肌にDの息が当たるのを感じていたよね。だから、かなり前からDは呼吸をしていた・・・っていうことになるんだよね?もしかしてDって、呼吸はする生き物なのかな。

私(あっ、息をするなら、心臓も・・・もしかして!!)

私はDの胸に耳を当ててみました。Dは驚きもせず、自分の胸元にきた私の髪を撫で始めました。

私(・・・心臓の音!!聞こえる!!)

とくん、とくんという一定のリズムで音が聞こえます。心臓の音です。
嘘でしょ!?これ、私の心臓の音が聞こえてるだけ!?と思って自分の脈を計ったり、自分の心臓に手を当てたりしながら聞いてみましたが、私のものとは違うリズムで音がするのです。

私「ね、ねえD、心音が聞こえるんだけど・・・」

D「心音があるからね」

私「え!?あるんだ!?」

驚いて聞き返した私に向かって、Dはいつも通りの表情で、うなずきました。

D「あるよ。聞こえるだろう?」

私「う、うん、聞こえる」

D「ほらね」

で、でもDの体は人間とは違うはずでしょ?形も違うし、構造も違うし、材料(?)も違うよね?そう言ってたよね。

私「心臓ってDに必要なの?」

D「必要無いよ。むしろ、戦闘に特化した僕の体に、心臓などという弱点になる器官があっては困るのさ。だから、僕の体に心臓は存在しないよ」

私「ええ!?じゃ、なんで・・・」

わざわざ必要の無い心音を作ってるの?

D「心音があるほうが、さゆが喜ぶと思ったからね」

私「・・・・・・」

D「さゆのために鳴っている音だよ。好きなだけお聞き」

私「・・・うん。ありがとう」

私はもう一度Dの胸に耳を当てました。静かな音が、ゆっくりとした一定のリズムで聞こえます。聞いていると、なんだか気分が落ち着いてきます。

私「もう少し、聞いていていい?」

D「勿論さ。さゆの好きなときに、好きなだけ聞けばいいんだよ」

Dは私の体を自分の上から起こさせて、掛け布団の背もたれに寄りかからせると、自分の胸のあたりに私の耳がくるような姿勢で、そっと抱きしめてくれました。

D「君が満足するまで、こうしていてあげよう。このまま眠ってもいいんだよ」

ほんと? 嬉しいな。最近寝不足だったから、Dに甘えて、ちょっとだけ、うとうとしちゃおうかな・・・

D「遠慮はいらないよ。僕の腕は疲れないのさ。なにしろ、僕は人間じゃないからね」

くすくすと、少し自慢げに言うDの声を聞きながら、私は目を閉じました。そっと、髪を撫でられる感触を感じました。

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