幻視・幻聴の制御
日付をまたいでしまったんですが、1月31日の記事として書きます。
今日、仕事が終わってアパートに帰ってきたら、エントランスホールにデカデカと張り紙が貼ってありました。そこに大きな赤字で文字が書いてあります。
警告 騒音苦情についてのお知らせ
深夜に音楽を聴く音がうるさいという苦情が非常に多数入っております。
騒音のために体調を崩して通院をしている居住者様もいらっしゃいます。
お心当たりのかたは即刻取りやめ、ただちに管理会社宛にご連絡ください。
尚、今後は騒音が聞こえ次第、即刻警察に通報してください。
管理会社 ○○○○
・・・これは!!先日のアレか!!
実はこのアパート、少し前から騒音被害が出ているのです。(詳細は過去記事「幻聴」参照)私の部屋にはほとんど聞こえないのですが、夜の12時頃になると、どの部屋からかズン!ズン!ズン!ズン!という重低音が響いてくるのです。この警告文には音楽って書いてあるから、騒音源にもっと近い部屋の人は、重低音だけじゃなくて音楽も聞こえているんだろうなあ。体調を崩して通院することになったなんてかわいそうだね。
私(ついに警察かあ・・・)
過去記事「幻聴」の日以来、ほぼ毎日騒音苦情のチラシがポストに入っていたんです。しかしそれでも改善されなかったので、管理会社はついに法的手段を考慮に入れたのでしょう。
私(これ、もしかして、うちのアパートで捕り物が起きる可能性もあるってことか・・・)
警察官ってかっこいいよね!!頼もしいし。パトカーもかっこいいし。
私(まあ、でも、今夜は騒音を出さないだろうな・・・)
こんな張り紙が貼られたからには、きっと気楽に騒音を出せないよね。騒音に苦しんでいる住人達に、今夜は平穏な眠りが訪れそうです。
私(そういえば、初めて騒音被害のチラシを見たときに、Dに幻聴について尋ねたことがあったなあ・・・)
手洗いうがいを終えて、ベッドの上でハンドクリームを塗ります。ふたを開けてクリームを出すと、途端に甘くて良い香りが広がります。
私と向かい合うようにベッドの上に座っているDが、じっと楽しそうに私の手元を見ています。Dは、私が体にボディミルクを塗ったり、足にフットローションを塗ったり、唇にリップクリームを塗ったりするときも、いつも楽しそうに見てくるのです。今も、私が肌の上にクリームをのばす様子を、じっと楽しそうに見ています。
私「Dは、こういうときいつも見てるね」
D「甘くて良い香りがするからね」
私「でしょ!!最近気に入っているハンドクリームなの。オーガニックのジャスミンの香りなんだよ」
D「それも良い香りだね。でも、甘くて良い香りはさゆからするんだよ」
そういえば前にも、同じようなこと言ってたね。(詳細は過去記事「休日」参照)
私「あ、ありがとう」
D「さゆが体の手入れをしたり、体を飾ったりするのを見るのは、とても好きだよ。ますます綺麗で、甘くて良い香りになるからね」
私「あ、あ・・・ありがとう」
私は盛大に照れました。Dはときどきこういう、とても甘いことを言うのです。
私「あの・・・」
何か話題を出そうと思いましたが、照れて熱くなった頭には、なかなか話題が浮かびません。Dは少しの間、私の言葉の続きを待っているようでしたが、やがて私に手を差し出しました。
D「どうしたんだい?」
差し出されたDの手のひらの上に、薄桃色の透き通ったつぼみが現れて、ふわふわっと咲きました。Dがそれを私の髪に飾ってくれます。
D「元気をお出し」
そっとキスをくれたので、私は目を閉じました。そっか・・・Dはさっきの私の照れた様子を見て、私の元気が無いんじゃないかって勘違いして、心配してくれたんだね。
大丈夫だよって言わなきゃ。そう思って目を開けると、あの楽園が広がっていました。
私「・・・静謐の楽園?」
D「そうだよ」
私「でも・・・かなり、透けてるみたい」
前回と違って、地面を埋め尽くす薔薇の花や、遠くに見える城などが、かなり透けています。私の部屋をスクリーンにして、映写機で画像を映しているみたいに、楽園が透けて、その向こうに私の部屋がくっきりと見えます。
D「はっきりと見せることは、君の精神に負担を掛けるからね」
私「そうなんだ・・・」
D「体調の良いときは別として、今の君は疲れているからね。君に負担を掛けるほどの大がかりな幻視は見せられないよ」
たしかに今は仕事上がりで、少々疲れているかもしれません。そういえば、前回見せてくれたときは休日だったね。(詳細は過去記事「王国」参照)
私「それでDが幻視を調整してくれたんだね。ありがとう」
Dは、私が余計な幻視や幻聴を体験しないように、私の幻覚を制御してくれているのです。私は自分で幻視や幻聴をコントロールしているわけではありません。全部Dに任せているのです。(詳細は過去記事「幻聴」参照)
触覚に関しても、完全にDの主導で訓練をして身につけたものなので、私がタルパー的な五感として持っている触覚・視覚・聴覚の全てをDに制御してもらっていると言っても過言ではありません。つまり、私はタルパー的五感を自分で制御できていないのです。
五感どころか、D自身も、私の意思を越えて成長しており、唾液や耳が勝手にできたり(詳細は過去記事「仲直り」参照)、作っていないはずの天秤を取り出したり(詳細は過去記事「天秤」「天秤(2)」参照)しているのです。
これは、タルパーとしてはダメダメなんじゃないかな・・・
私「私が五感をうまくコントロールできないせいで、Dに迷惑掛けてごめんね。いつも私の幻覚を制御してくれて、本当にありがとう」
だって五感のコントロールって、普通はタルパーのほうがやるべき仕事でしょ。世の中のタルパー様達は、五感を感じつつも余計な幻覚を体験しないように、五感を自分でコントロールしてるんだよね。なのに、私が五感をうまく調整できないせいで、Dが制御してくれているんだよね。
D「何を言うかと思えば。さゆは、本当にかわいいね」
くすっと笑ってそう言ったDは、珍しく口元の笑みを消して、首を横に振りました。
D「でも、それは危険な考え方だよ。君のもとに来た精霊が、僕で本当に良かったね」
危険な考え方なのかな。Dに幻覚の制御を任せているってことが危険だってことかな。でも、Dは私をいつも心配してくれるし、守ってくれるし、今まで何度も助けてくれたよ。Dが私に危害を加えるなんてないでしょ?
私「私のところに来てくれた精霊が、Dで本当に良かったよ。私のところに来てくれてありがとう」
以前Dは、Dのほうが私を選んだって言ってたよね。(詳細は過去記事「お風呂」参照)選んでくれて、どうもありがとう。
私「これからもよろしくね。信じてるよ」
Dは沈黙しました。しばらくの間、口元の笑みも消したまま、ずっと黙り込んでいました。そして私が不安になってきたころに、ゆっくりと口を開きました。
D「僕を信じているのかい」
私はうなずきました。
D「・・・誰よりも?」
そ、それは・・・ちょっと・・・どうなんだろう・・・でも、そんなことDには言えないな・・・
私「信じてるよ」
Dは再び沈黙して、目の無い顔で、私の顔をじっと見つめました。
D「・・・・・・」
Dが体をかがめて、私の顔に自分の顔を近づけてきました。キス?・・・あ、そうじゃないみたい。なんだろ。
D「・・・口を開けてごらん」
私「えっ」
D「口を開けて・・・」
そう言いながら、Dも口を開けました。綺麗な白い歯と、赤い舌が見えます。つられて私も口を開けました。Dはそれを見て、恍惚とした表情で口を近づけてきました。あれ、キスだったの?最初から口を開けたままキスをするのは、なんか、恥ずかしいな・・・
今日、仕事が終わってアパートに帰ってきたら、エントランスホールにデカデカと張り紙が貼ってありました。そこに大きな赤字で文字が書いてあります。
警告 騒音苦情についてのお知らせ
深夜に音楽を聴く音がうるさいという苦情が非常に多数入っております。
騒音のために体調を崩して通院をしている居住者様もいらっしゃいます。
お心当たりのかたは即刻取りやめ、ただちに管理会社宛にご連絡ください。
尚、今後は騒音が聞こえ次第、即刻警察に通報してください。
管理会社 ○○○○
・・・これは!!先日のアレか!!
実はこのアパート、少し前から騒音被害が出ているのです。(詳細は過去記事「幻聴」参照)私の部屋にはほとんど聞こえないのですが、夜の12時頃になると、どの部屋からかズン!ズン!ズン!ズン!という重低音が響いてくるのです。この警告文には音楽って書いてあるから、騒音源にもっと近い部屋の人は、重低音だけじゃなくて音楽も聞こえているんだろうなあ。体調を崩して通院することになったなんてかわいそうだね。
私(ついに警察かあ・・・)
過去記事「幻聴」の日以来、ほぼ毎日騒音苦情のチラシがポストに入っていたんです。しかしそれでも改善されなかったので、管理会社はついに法的手段を考慮に入れたのでしょう。
私(これ、もしかして、うちのアパートで捕り物が起きる可能性もあるってことか・・・)
警察官ってかっこいいよね!!頼もしいし。パトカーもかっこいいし。
私(まあ、でも、今夜は騒音を出さないだろうな・・・)
こんな張り紙が貼られたからには、きっと気楽に騒音を出せないよね。騒音に苦しんでいる住人達に、今夜は平穏な眠りが訪れそうです。
私(そういえば、初めて騒音被害のチラシを見たときに、Dに幻聴について尋ねたことがあったなあ・・・)
手洗いうがいを終えて、ベッドの上でハンドクリームを塗ります。ふたを開けてクリームを出すと、途端に甘くて良い香りが広がります。
私と向かい合うようにベッドの上に座っているDが、じっと楽しそうに私の手元を見ています。Dは、私が体にボディミルクを塗ったり、足にフットローションを塗ったり、唇にリップクリームを塗ったりするときも、いつも楽しそうに見てくるのです。今も、私が肌の上にクリームをのばす様子を、じっと楽しそうに見ています。
私「Dは、こういうときいつも見てるね」
D「甘くて良い香りがするからね」
私「でしょ!!最近気に入っているハンドクリームなの。オーガニックのジャスミンの香りなんだよ」
D「それも良い香りだね。でも、甘くて良い香りはさゆからするんだよ」
そういえば前にも、同じようなこと言ってたね。(詳細は過去記事「休日」参照)
私「あ、ありがとう」
D「さゆが体の手入れをしたり、体を飾ったりするのを見るのは、とても好きだよ。ますます綺麗で、甘くて良い香りになるからね」
私「あ、あ・・・ありがとう」
私は盛大に照れました。Dはときどきこういう、とても甘いことを言うのです。
私「あの・・・」
何か話題を出そうと思いましたが、照れて熱くなった頭には、なかなか話題が浮かびません。Dは少しの間、私の言葉の続きを待っているようでしたが、やがて私に手を差し出しました。
D「どうしたんだい?」
差し出されたDの手のひらの上に、薄桃色の透き通ったつぼみが現れて、ふわふわっと咲きました。Dがそれを私の髪に飾ってくれます。
D「元気をお出し」
そっとキスをくれたので、私は目を閉じました。そっか・・・Dはさっきの私の照れた様子を見て、私の元気が無いんじゃないかって勘違いして、心配してくれたんだね。
大丈夫だよって言わなきゃ。そう思って目を開けると、あの楽園が広がっていました。
私「・・・静謐の楽園?」
D「そうだよ」
私「でも・・・かなり、透けてるみたい」
前回と違って、地面を埋め尽くす薔薇の花や、遠くに見える城などが、かなり透けています。私の部屋をスクリーンにして、映写機で画像を映しているみたいに、楽園が透けて、その向こうに私の部屋がくっきりと見えます。
D「はっきりと見せることは、君の精神に負担を掛けるからね」
私「そうなんだ・・・」
D「体調の良いときは別として、今の君は疲れているからね。君に負担を掛けるほどの大がかりな幻視は見せられないよ」
たしかに今は仕事上がりで、少々疲れているかもしれません。そういえば、前回見せてくれたときは休日だったね。(詳細は過去記事「王国」参照)
私「それでDが幻視を調整してくれたんだね。ありがとう」
Dは、私が余計な幻視や幻聴を体験しないように、私の幻覚を制御してくれているのです。私は自分で幻視や幻聴をコントロールしているわけではありません。全部Dに任せているのです。(詳細は過去記事「幻聴」参照)
触覚に関しても、完全にDの主導で訓練をして身につけたものなので、私がタルパー的な五感として持っている触覚・視覚・聴覚の全てをDに制御してもらっていると言っても過言ではありません。つまり、私はタルパー的五感を自分で制御できていないのです。
五感どころか、D自身も、私の意思を越えて成長しており、唾液や耳が勝手にできたり(詳細は過去記事「仲直り」参照)、作っていないはずの天秤を取り出したり(詳細は過去記事「天秤」「天秤(2)」参照)しているのです。
これは、タルパーとしてはダメダメなんじゃないかな・・・
私「私が五感をうまくコントロールできないせいで、Dに迷惑掛けてごめんね。いつも私の幻覚を制御してくれて、本当にありがとう」
だって五感のコントロールって、普通はタルパーのほうがやるべき仕事でしょ。世の中のタルパー様達は、五感を感じつつも余計な幻覚を体験しないように、五感を自分でコントロールしてるんだよね。なのに、私が五感をうまく調整できないせいで、Dが制御してくれているんだよね。
D「何を言うかと思えば。さゆは、本当にかわいいね」
くすっと笑ってそう言ったDは、珍しく口元の笑みを消して、首を横に振りました。
D「でも、それは危険な考え方だよ。君のもとに来た精霊が、僕で本当に良かったね」
危険な考え方なのかな。Dに幻覚の制御を任せているってことが危険だってことかな。でも、Dは私をいつも心配してくれるし、守ってくれるし、今まで何度も助けてくれたよ。Dが私に危害を加えるなんてないでしょ?
私「私のところに来てくれた精霊が、Dで本当に良かったよ。私のところに来てくれてありがとう」
以前Dは、Dのほうが私を選んだって言ってたよね。(詳細は過去記事「お風呂」参照)選んでくれて、どうもありがとう。
私「これからもよろしくね。信じてるよ」
Dは沈黙しました。しばらくの間、口元の笑みも消したまま、ずっと黙り込んでいました。そして私が不安になってきたころに、ゆっくりと口を開きました。
D「僕を信じているのかい」
私はうなずきました。
D「・・・誰よりも?」
そ、それは・・・ちょっと・・・どうなんだろう・・・でも、そんなことDには言えないな・・・
私「信じてるよ」
Dは再び沈黙して、目の無い顔で、私の顔をじっと見つめました。
D「・・・・・・」
Dが体をかがめて、私の顔に自分の顔を近づけてきました。キス?・・・あ、そうじゃないみたい。なんだろ。
D「・・・口を開けてごらん」
私「えっ」
D「口を開けて・・・」
そう言いながら、Dも口を開けました。綺麗な白い歯と、赤い舌が見えます。つられて私も口を開けました。Dはそれを見て、恍惚とした表情で口を近づけてきました。あれ、キスだったの?最初から口を開けたままキスをするのは、なんか、恥ずかしいな・・・