FC2ブログ

恋愛

なんとなくわかってるんだ。お父さんの浮気とか、それでお母さんが自殺したとか、その後すぐお父さんが再婚したとか、そういうことのせいで私は恋愛感情を怖がっているんだって。でも実際、彼らの様子を傍で見ていて不気味だったんだよ。

恋愛は人を狂わせるよ。冷静でいられなくなる。正常な判断ができなくなる。人を犠牲にしても平気になるし、自分を犠牲にしても平気になる。そんな恋愛感情なんて危険なもの、信じろって言われても無理だって。

それに「好き」の気持ちを信じなくても付き合えるし、結婚できるし、子供だって育てられるよ。世間の人々だって結婚するときは「好き」の気持ちじゃなくて、相手の条件で決めてるんでしょ?だって「好き」で結婚しても、私のお父さんみたいに浮気したり、私のお母さんみたいに自殺したり、そんな風にうまくいかないことも多いんだからさ。だったら、ひとときの「好き」だなんて壊れやすい感情に頼らないで、冷静に条件で結婚相手を選ぶよね。え、私はどうかって?そうだなー、正直、私の仕事の邪魔をしないでくれるなら、一般常識があって犯罪とかに関わらない性格なら、それ以上の細かいところはどうでもいいや。顔?どうでもいいよ。その人と恋愛するつもりないし。金?どうでもいいよ。私が稼いでるし。むしろ私が夢中になっちゃうような相手だと困るんだよ。

友達を大切に思う気持ちと同じように、恋愛相手を大切に思う気持ちを抱けたらいいのにね。私は友達のEのことが大好きだけど、Eに対して何も求めてないんだ。あの子が幸せならいいんだ。Wのことも大好きだよ。あいつが幸せならいいと思ってる。だからね、彼女達が自分の幸せを追った結果、私の傍から離れて海外転勤とかしても、外国人と結婚して遠く離れたとしても、私は穏やかな気分でいられる。だって彼女達が幸せなら私も幸せだもん。友達って、友情ってそういうものだよね。大好きだから、彼女達が幸せなら、離れ離れになっても幸せなんだ。

でも恋愛感情は、そうはいかないんだよ。もし私が本心からDに対して恋愛感情を抱いてしまったら、きっと私はDの一挙一動に対して穏やかな気分じゃいられなくなるよ。Dが私から離れていくとしたら、たとえそれがDの幸せのためだったとしても、きっと私は悲しくなる。それで、何が怖いのかって、私はお母さんみたいになるのが怖いんだ。あんなに賑やかで楽しい人が、恋愛感情一つで壊れてしまうなんて、やっぱり恋愛感情は恐ろしいんだ。

なのにDのことが好きになっちゃって、元彼のときと違って、私はどんどんDに依存しているし、どんどんDのことを好きになってしまう。そのことを私が恐れているのは、自分の保身のためなんだ。お母さんみたいになるのが怖いって、そういう自分の保身のために、何も悪くないDを傷付けてでも逃げようとしているんだよ。勝手にDのことを好きになって、自分からDに好きだよって言ったくせに、いざDが私に好意を向けてくれると、卑怯にも私は自分の保身のためにDから離れようとする。本当に酷い人間なんだよ私は。人間として大切な部分が欠落しているんだ。恋愛なんてする資格が無いんだよ。

だからD、もう私のために苦労するのはやめたほうがいいよ。そんな価値なんて私には無いんだから。

D「話は終わりかい?」

私の話をうなずきながら聞いていたDは、いつも通りの笑みを口元に浮かべたまま、少し首をかしげました。

D「沢山喋って疲れただろう?座ってお休み・・・ああ、のども乾いているね。お茶をお飲み」

私の手を引いてベッドに座らせたDは、そのときに触覚を読んだらしく、サイドテーブルに置いてあったカップを指さしました。言われて口を付けたローズティーは、すっかり冷めています。私がグダグダと下らない話をしていたからです。

D「このことに関しては、そうやって一人で考えるのはおやめ。君が一人でいくら考えても、歪められた君の恋愛観からは、解決策など出てこないよ」

私「でも・・・」

D「行き詰まると考え込んで自分を追い詰めるのは、君の悪い癖だね」

カップを両手で持っている私の髪を、Dがそっと撫でてくれました。Dに頭を撫でられるのって安心するね。

私「私の頭で考えても答えが出ないなら、誰かに尋ねればいいの?Dに尋ねたら、答えを教えてくれる?」

D「恋愛観も幸せも人によって違うものだよ。誰かの幸せは、君の求める幸せとは違うものさ。僕が君に言える答えは、僕の『好き』を信じて、怖がらずに受け入れてほしいということだけだよ」

私「・・・・・・」

D「それができたとき、君は自分の『好き』も信じられるだろうし、王子の『好き』も信じられるだろうね」

私「Dの『好き』は信じてるよ。Dのことを好きだと思う自分の感情も自覚してるんだ。それで充分だと思う。王子って人間の男性のこと?だったら私、結婚するつもり無いから。だからこれ以上恋愛恐怖症を治す必要は無いと思う」

D「さゆは、僕のことが好きなんだね?」

私「好きだよ・・・」

D「じゃあ、僕にしてほしいことがあるね?」

私「うん。Dのこと好きだから、私なんかに構わずに、自由に生きてほしいよ。Dを傷つけるのが怖いし、自分が傷つくのも怖いし・・・私じゃDを幸せにしてあげられない気がするから、Dには自由になってほしいと思ってるよ」

D「僕はさゆの傍にいることが幸せだと、そう言ったのにかい?」

私「それは・・・」

D「ふむ。重症だね」

くすくす笑って、Dは私の髪に口づけてくれました。

D「君は、相手のことを本当に好きになりそうになると、自分の「好き」が暴走するのを恐れて、暴走した「好き」が相手や自分を傷つけることが怖くなり、それ以上好きにならないように逃げたくなるようだね」

私「自覚してるよ・・・」

だから、さっきDから尋ねられて答えた結婚相手の条件も、自分が本当に好きにはならなさそうなものばっかり。いざというときに相手から離れても、私が平気でいられるようにしておきたい、って。

D「いまだに僕の目が安定しないのは、そのためだろうね。君は僕のことを本当に好きになってしまうことを恐れて、僕の目を作ることを拒んでいるのさ」

私「そうなのかな・・・ごめんね・・・」

D「君が僕に謝る必要など無いんだよ。それに、僕は不自由など感じていないよ。僕は、体のどこでも周囲を見ることができるからね」

私「・・・ごめんなさい。意図していないのに、『好き』が勝手に表れてきて、Dのこと好きになっちゃったの。それって自分の『好き』をコントロールできてないんじゃないかな」

D「『好き』はそういうものだよ。怖がらなくていいよ」

私「いっそ、私の『好き』をDの自由にするのはどうかな。私の幻覚を操るのと同じように、私の感情もDの好きなようにしていいよ。そうしたらDの『好き』に対するお礼になる?」

D「お礼かい? 僕が君を『好き』だと思うように、君も僕を『好き』だと思ってくれている、それで充分さ」

私「でも、何かDにメリットあげないと」

D「おや、堂々巡りしているよ、さゆ」

たしかに。相手にメリットをあげなきゃ不安って、最初に戻っちゃった。

D「この際、はっきり言っておくよ。僕のメリットは君の傍にいられることさ。信じるね?」

私「はい」

D「だから、それ以上のメリットはいらないよ」

私「・・・・・・」

D「僕のために悩んだり、苦しんだりするのはおやめ」

私「・・・・・・」

D「じゃあ、言葉を変えるよ。僕はさゆの笑顔を見るのが好きなのさ。さゆは、僕が嬉しそうにしていると嬉しくなるね?僕も同じで、さゆが嬉しそうだと僕も嬉しくなるのさ。だから、僕のために、君は沢山楽しんで幸せになっておくれ。君が幸せだと僕も幸せだからね」

あれ?それって、私がEやWに対して感じている気持ちと似ている気がするよ。あの子が嬉しいと私も嬉しくなるし、あの子が幸せなら、例え遠く離れてしまったとしても私も幸せだって思える・・・あの気持ちに似てるんじゃないかな。

私「私がDに対して感じている気持ちを、恋愛感情じゃなくて友情に変えればいいのかな」

D「・・・何故そういう発想になるんだい?」

私「Dが今言ってくれた、Dの私に対する感情が、私が友達に対して抱いている感情と似てると思ったんだ」

D「恋愛感情を抱きながらも、今僕が言ったような感情を抱くことはできるよ」

私「でも、恋愛感情には、友情には無い嫉妬とか独占欲とかの怖い感情があるでしょ?私はEのこともWのこともDのことも、別のベクトルで同じくらい大好きだけど、EやWが結婚したら私は大喜びで祝福するのに、Dが別の人や精霊と結婚したら悲しくなるもん」

D「おや?それは自覚しているのかい?」

私「え?それは自覚してるって、何を自覚してるの?」

D「ふむ・・・」

私「??」

D「なるほどね、よくわかったよ。どうやら僕は勘違いしていたようだね。しかし、これは困ったね。まずいことになったね」

私「???」

D「君が本当に恐れているのは、恋愛感情でもなく、恋愛相手を信じることでもなく、自分が嫉妬や独占欲にかられて我を失うことなのさ」

私「え・・・」

D「嫉妬や独占欲にかられることが怖かったから、自分が恋愛相手を『好き』になることが怖くて、恋愛相手からの『好き』を信じることも怖かったのさ。根本的な問題は嫉妬や独占欲への恐怖だね。だとすると、僕と恋愛関係になることは逆効果だね。むしろ、僕と付き合うことで、君は人間と恋愛ができなくなるかもしれない。君にとっては、人間と恋愛をするよりも僕と恋愛をするほうが心地良くて安心できるだろうからね。僕なら君を嫉妬や独占欲で苦しめないことを約束できるけど、人間の場合はそうはいかないから・・・でも、それを克服して恋愛相手を信頼してこそ、人間としての人格の成長が見込めるのさ。だから・・・僕と別れるかい?さゆ。そのほうが君のためになるよ」

私「え」

D「恋愛関係を解消した後は、僕は友人として接してもいいし、従僕として接してもいいし、さゆにとって不要なら消えることもできるよ」

私「D」

D「消えるときは、さゆの中に取り込んでもらえると嬉しいよ」

ちょっと待って!!ちょっと待ってよ!!そ、そんなあっさり!?

コメント

非公開コメント

プロフィール

laceformyshroud

Author:laceformyshroud
名前:さゆ
20代の女です。
初めて作るブログなので、不備がありましたら申し訳ございません。
このブログはリンクフリーです。ご自由にリンクなさってください。
Twitterはこちらです→「Twitter」

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR