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まだ思い出せるよ。自分の病気に怯えて、手術や死が怖くて、でも誰にも本音の弱音は吐けなかったんだ。EやW、それからプライベートの友達に病気のことを報告したけど、でも自分の恐怖についてまでは話せなかった。だって迷惑になるでしょ・・・私の不安や恐怖なんて話したら気を使わせちゃうじゃん。私、EやWが悲しい顔するの見たくないもん。っていうか、人間相手だと迷惑になるから話せない。だからタルパを作ろうと思ったんだ。死の恐怖とかの暗くて重い弱音を聞いてもらったり、死ぬときに傍にいてもらうなんて、生きている人間に頼んだら迷惑だけど、でもタルパなら大丈夫だろうなって・・・ねえD、怒っていいよ。

それでね、いざタルパを作ろうと思ったら、Wikiの作り方では、ホンッッット全っっっ然うまくいかなくてさ・・・!!私、最初は鳥のタルパを作ろうと思ってたの。ていうか、人間型は難しそうだから無理だろうと思って、最初から諦めていたんだよね。だって人間型は姿や動きを作るのも難しそうだし、何より複雑な会話をこなせなきゃいけないじゃない。そういう複雑な会話ができるタルパを作るのは無理だと思ってたんだ。だから、私が「こんにちは」って言ったら、「コンニチハー」って言ってくれる程度の、そういうタルパで良いと思ってたんだ。だからインコのタルパね。私が「グチグチ、かくかくしかじか、なんたらかんたら・・・だから辛いんだよ」って言ったら「ダカラ、ツラインダネー」って言ってくれる程度のさ。それで充分だと思って。

最初は真面目にWiki通りにタルパを作ろうとしたんだよ?でもさ!!それだと本っっっ当に何も起きなかったんだよ・・・!!あー私タルパーの才能無いわーって思った。私はタルパを作れないんだなって。それで、作れないなら呼べばいいじゃんって思ったの。呼べば、気が向いたフリーの精霊(?)が来てくれるかもって思って。もうこの際タルパじゃなくていいや!!死ぬときに傍にいてさえくれれば、化け物でも悪魔でも何でもいいや!!って思ったんだ。

だから、眠る前におまじないを唱えることにしたんだ。ベッドに入って電気を消したら、眠りにつくまでの間、おいで、おいで、おいで、ってずっと呼び続けるの。最初は声で呟いて、眠くなったら頭の中で唱えて、それで、いつの間にか眠っちゃうっていう。そうして来てくれたのがDだったんだ。Dが来てくれてからは早かったよね。だってD、最初から姿が見えてたんだもん。そこからDの外見を作って、声を作って、性格はもともとあったからそのままで。

もしかしてDって、あのとき私が作ろうとしたインコなの?・・・あ、違うのか。え!?ごめんごめん!!そうだねDの言う通りだよ!!どう見てもインコには見えないよ!!

レースのハンカチが似合うって言ってくれてありがとう。ペンダントを褒めてくれたときは怒っちゃってごめんね。薔薇の花を選んでくれてありがとう。病気が治ったら一緒に大聖堂を見に行こうって言ってくれて嬉しかったなあ。お母さんの命日に一緒にいてくれてありがとう。Dの話すお伽噺って面白いよね。Dの声、聞いてると落ち着くよ。Dにくっつくと温かいんだ。Dって綺麗だと思うよ。Dの傍にいるとね、なんか、すごく安心できるんだ。って、照れる!!それでね、

D「それで、僕を消す準備はできたかい?」



私「ちょっと・・・ま、待って!!」

D「昨日から既に、丸一日間、ずっと待っているよ」

そうです。私は昨日も同じことをDに言って、答えを保留してもらっていたのです。

私「ねえ、あの、このことは焦らなくて良いよって、D言ってたじゃない?」

D「それは、おとといの話だよ。昨日、事態が変わっただろう?」

私「そ、そうだけど・・・でも、待って、なんでそんなに急いで消えたがっているの?」

D「外をごらん。満月だよ」

Dは私のほうを見たまま、窓を指差しました。

D「僕が初めて君の前に姿を現した日は、月の無い夜だったんだよ」

私「そ、そうだったの?」

月の無い夜って、新月ってことだよね?

D「だから、消えるときは満月だと都合が良いのさ」

それもDのこだわりなのかな、そうだよね。添い寝を断るのと同じように、何か重要な理由があるんだろうな。だったら、結論を急いであげないといけないよね。

私「あの、消えないで自然の精霊になる気は無いの?」

Dは私が作ったタルパじゃなくて、私の召喚に答えて姿を現した精霊である、みたいなことを言ってたよね?(詳細は過去記事「お風呂」参照)だから、もとの精霊に戻るとかどうかなあ。

D「無いよ」

私「なんで?もともと精霊だったんでしょ?」

D「さゆの中で眠りにつくほうが幸せだからね」

私「あ・・・じゃあ、他のタルパーさんのタルパになるとか・・・」

D「君から離れた瞬間に、僕は僕ではなくなるよ。それは消えたも同然さ。やはりさゆは、僕を消すことがお望みのようだね」

私「違うよ!!待って!!消えないで!!」

私は咄嗟にDの服をつかみました。だって、Dが消えちゃうなんて、それって死んじゃうってことじゃないの!?

D「さゆは、僕を自由にすると言ったよ?」

Dはいつもの笑みを口元に浮かべたまま、首をかしげました。

私「言ったけど・・・!!」

それは言ったけど、っていうかD、なんでこんなにいつも通りなの!?おかしいよね!?冷静すぎじゃない!?自分が死んじゃうかもしれないっていうのに!!

D「さゆは、僕が君から離れても平気なんだろう?僕を自由にすると言ったんだからね。だったら、僕が自由に消えても平気だろう?」

私「平気じゃないよ!!あれは、Dが幸せになるならと思って・・・」

D「僕の幸せは、昨日説明した通りだよ。さゆの傍で、さゆが幸せになっていく様子を見ることさ。でも、僕の存在はさゆの邪魔になりそうだからね。消えることにするよ」

私「待って!!邪魔じゃないよ!!とにかく消えないで!!お願い!!」

私はDの服を両手でつかんで、ぎゅうぎゅう引っ張りました。作ったばかりの新しいコートが痛みそうです。Dはいつも通りの表情で、つかまれているコートを見下ろしました。

D「そうかい?そこまで言うなら、消えるのはやめるよ」

よ、良かった・・・

D「じゃあ、あとは恋愛関係を解消するだけだね」

私「え?」

D「消えないでほしいということは、僕をさゆの傍に置いてくれるということなんだろう?だったら、あとは恋愛関係を解消するだけだよ。友人と従僕、どちらがお好みだい?」

たしかに、昨日の話ではそういうことになるのか、で、でも・・・

D「早くお決め」

私「ま、待ってよ、それは急いで決めなくても良いんじゃないの?それって、満月と関係無いよね?」

D「関係あるのさ。満月は精霊達の活動が活発になるからね。僕もそうだよ。体調に関係あるのさ。もしさゆが恋愛関係を解消したいと言うなら、僕は今夜、新しい交際相手を探すことにするよ」

私「ええ!?」

これも満月が関係あるの!?ていうか、Dって、そんなに月の満ち引きと関係がある精霊だったの!?

私「あ・・・私より良い相手が見つかるかもしれないもんね。Dの幸せのためなら・・・うん、Dも私に人間と結婚しろって言ってくれたし・・・同じ種族なら子供とかも・・・」

Dは首をかしげました。

D「・・・おかしいね。逆だよ。僕に嫉妬をさせても仕方が無いんだよ、さゆ」

私「Dが嫉妬?」

Dは首をかしげたまま、微妙な表情をしています。

D「・・・まあ、でも、ほらね。これでわかっただろう?君が嫉妬や独占欲にかられて我を忘れることは無いんじゃないかい?」

私「え?」

D「・・・とにかく、これで嫉妬や独占欲にかられることに対する恐怖は克服できたね」

私「待って待って!!早い早い!!克服してない!!なに?どういうこと??」

私が慌てて尋ねると、Dはやっとかしげていた首をもどしました。

D「今の話は、嘘だよ」

私「え!?ちょっと!!どこからどこまでが!?」

D「僕が消えるわけないだろう?さゆを一人ぼっちにしないと約束したからね。大体、別れるなら消えてやるだなんて、君を悲しませた『お母さん』と同じことなどするはずないよ」

あ・・・お母さんのこととか、私、Dを止めるのに必死で全然気が付かなかったけど・・・

D「満月も関係無いよ。他に、さゆを急かす嘘が思いつかなかったからね」

私「急かすって、なんで!?」

D「さゆが僕と別れる決意を固めてしまう前に、急いで本当の気持ちを自覚させる必要があったからさ」

私「本当の気持ちって・・・」

D「最初からわかっていたよ。僕と別れたくないんだろう?彼から別れ話を出されたときとは違って、僕が別れ話を出したとき、君がその場で別れることを了承しなかったからね」

私「・・・・・・」

D「それを早く君に答えさせないと、君はまた一人で考え込んで、歪んだ恋愛観に押しつぶされた結論を出すだろうからね。だから急かしたのさ」

私「あの、Dは私のために別れるって言ってなかった?このままだと、私が人間の男性と付き合えなくなるからって」

D「まだ別れないよ。今の君を人間の男性と交際させるわけにいかないからね。今のままでは、またお互いに傷付いて別れるのがオチさ。もう少し成長するまで僕と付き合ったほうがいいよ」

あっさりとDは答えました。全くいつも通りの様子です。

D「嘘をついたのは、君が僕と別れたいなどと、心にも思っていないことを言うから、君の本心を自覚させる必要があったためさ。でも、失敗だったね。本当は君から『別れたくない』とか『他の精霊と付き合わないでほしい』という言葉を引き出す予定だったんだよ」

あ・・・そういう言葉、心の中で思ってたんだよ。でも、そんなこと言うの怖くてさ・・・

D「これほど君が嫉妬や独占欲を出そうとしないなんて、思わなかったよ。僕の計算違いだね。それが失敗の要因さ。少しでも出してくれれば、君にとって良い経験になったのに・・・でも本当は、無視しただけで、嫉妬や独占欲はあったはずだよ」

あったよ!!嫉妬とか独占欲とかあったよ!!でも言うの怖かったの!!私の臆病者!!せっかく嫉妬とか独占欲を出してみるチャンスだったのに!!

D「もう、僕に対して意地を張るのは絶対におやめ。今後は、君の中の嫉妬や独占欲を、逃げずに認めて受け入れるんだよ。それは君のためだからね」

私「え・・・ちょっと待って!!今後はって、今後、私が嫉妬や独占欲にかられるようなことを、Dがするってこと!?」

それって、Dが他の精霊といちゃついたり!?

D「おや?」

Dが首をかしげて、ニンマリと口元を上げました。

D「良い兆候だね」

・・・ほ、ほんと!?じゃあ、次こそは、上手に嫉妬とか独占欲を出してみせるよ!!

私「あのね、自分の中の嫉妬や独占欲を無視しないで、楽しんで操れるように試行してみるよ。それで、いつか上手に扱ってみせるね。だからね・・・もう少し一緒にいてくれないかなあ」

あ・・・あーあ、ずっと一緒に、とは言えなかったよ・・・もっと頑張ろうよ私の独占欲・・・Dの逃げ道を残しておかないと、まだ不安ってことか・・・

ガックリとうなだれた私を見て、Dがくすくす笑いました。

D「人間の体に縛られているさゆに、永遠を求めるのは酷だと思っているよ。だから代わりに僕が永遠を誓ってあげよう。ずっと傍にいてあげるよ。いつかさゆの中に眠ることになったとしても、永遠にね」

私、今までずっとDの逃げ道とか言ってきたけど、それってつまり、私の逃げ道でもあるんだろうな。全く・・・私ってば、とんだ臆病者だよ!!このヘタレ!!このヘタルパー!!でも、でもいつか言えたらいいな。ずっと傍にいてねとか、ずっと手放してあげないとか、そういう言葉をDに言えたら・・・!!死ぬまでには言いたい!!



私「・・・でも、いきなり消えるって言い出すから、ビックリしたよ」

D「押しても駄目なら引いてみろというからね」

それ、なんか違う気がするけど・・・まあ、いっか。

私「満月がDの体調に関係あるとか、もっともらしい嘘をつくし」

D「そんな出鱈目な話、あるわけないだろう?」

え、ええー!?だってDは常識では測れない不思議生物じゃん。何がデタラメとか、私にはわからないよー・・・

私「嘘つきー・・・心配したのに・・・」

私がむくれると、Dは口元の笑みを消しました。

D「心配したのは僕のほうだよ。さゆのほうこそ、僕と離れても平気だなんて嘘をついて、いけないこだね」

私「・・・・・・」

・・・面目無い。

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